アパートメント兼ギャラリー。
青山通りを外国産の車で闊歩。
じぶんの店を構える。
この三つが二十歳になるまえに構想、否、妄想していたこと。
かおりさんとはるちゃんから入居のお誘いがある少し前に、ふと思い出したのである。
記憶の中から甦った貧乏学生時代の夢。
少年よ大志を抱け。
大志かどうかも定かではないけれど。
妄想でも空想でも絵空ごとでも、
思い描くことは真っこと大事なんだと、今さらながら。
安直、然も漠然としか想像できなかった若かりし自分なのですが、
振り返れば現実のものとしている。
店を構える。
高校卒業と同時に上京し、右も左もわからないまま、大都会に気圧され勝手に惑わされ、
紐の切れた風船のように漂うばかり。
何をしたいかなんてまったくわからない。
あまりに解らなすぎて、自分に嫌気がさし引きこもる。
ただ、料理をつくることは小さい頃からなんの苦でもなく愉しかった。
いまはこうして、いわきで夫とふたり料理屋を営んでいる。
外国産の車。
チープかつアバウトな思考だ。あの時は運転免許証すらもっていない。
おまけに車の種類さえわからないし、興味もなかったはずなのに。
数年前、碑文谷の友人宅へ向かう時だったか。
カーナビゲーションに導かれるままに走ったのは確か国道246号線。
赤い外国産の車を運転して。
「アパートメント」
あの頃はあまりにも有名なアパートがまだ建っていて、すぐに感化されるわたしは、建物を青山に持ちたいと。
親友ら三人で盛りに盛り上げた願望。
学校が代々木公園の近くだったこともあり、
若いのに渋谷はごちゃごちゃしているからと、若いくせに若者文化をまっこう否定。
棘なぞないのに格好つけて尖ったふりしてさ。
動く余力があるわけでなし、足が向かうは青山止まり。
お金もないのに、紀ノ国屋さんでスパイス山ほどかついで家路についたっけ。
今思えば、場所はどこでもいいのだ。
おもしろおかしなひとたちが住まい、そして集う場が欲しかったのだ。
それは、気がつけばここではないだろうか。
だから本当は手放しで、きゃっきゃきゃっきゃ、云いたい気分。
ご縁を嬉しく思います。
今日はお月様が綺麗だからとか、ぴっかぴかの食材ありますからとか、
お天気がいいとか、風が気持ちいいとか、
なんでもいいから理由をつけて屋上で飲みませんか。