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2F/当番ノート

うりゃりゃ 第二話

当番ノート 第4期

「で、ケニーさん。さっきから歯ごたえがコリッコリッとしてるんですけれども、
これってホントにベーコンオムレツバーガーなんですか?そもそもバーガー無いじゃないですか!」

「健次郎や。食べる時に目をつむって食べる習慣はほめたもんじゃああるが、目を
閉じておいでよ。さあおいでおいで。鬼さん、こちら。手の鳴る方へ!!」

私は(私とは健次郎のコトです)静かに目を開ける。
確かこの島には謎の甘納豆が発見されてからというものの、「おにゃが島」と呼ばれていると聞いた試しがない。

オウム貝がオウム返しをしながらも、エチオピアから飛来してきた三色のインコと
浜辺でじゃれあっている。お前サンバ毎日三食きちんとたべてるか?ってさえずりながらもほうばりながらも。

「鬼退治はしてきたんだニャン。」と、インコが憤る。
「外人退治っていやあ、イヌ、サル、キジだろう。インコがいたらキジはどうなるんだよ。」とは、オウム貝。
「キジは漁師さんの前で鳴いちゃったんだよ。あの時鳴かなければウトウトしなけりゃ撃たれなかったのにニャン。
キジの奴、撃たれて泣いちゃったんだけどね。でも漁師さんの愛情一杯のKISSに撃たれて眠っていったニャン。」

注)うりゃりゃの登場人物からこの時初めてキジが消える。もっとも鳥類なので人物では無いのであるが。

「地ダコ玉焼きじゃよ。うりゃりゃキッチンの自慢の隠れメニューじゃ。
まあ、隠れメニューなんで初めて作ってみたんじゃがのう。美味しいかい?」

「ケニーさん!初対面でこのようなコトを聞くのは失礼かもしれません。
しかし聞かないコトには、私はお家騒動にまで巻き込まれる展開にならないのです。」

「、、、。お前さん。お前というのは元来、尊敬の『御前』から派生しておるのじゃが、オンバのコトじゃな。」

「ケ、ケニーさん!なぜ私が尋ねる前からそのコトを!!ニョキッとして私がお尋ね者ってコトもまさか??」

「毎年必ずおるんじゃよ。まあ、9年に一人くらいかな。健次郎くらいの年頃でオンバを求めてこの島にやってくる若者は。」

ケニーはおもむろにテレビのスイッチをつける。台湾製のサムチャンのテレビだ。
今年は17年に一度開催のオジンピックの年。

ゴマ油で揚げた天婦羅の油たちを、選手が一生懸命取り除いている。
ヒンドゥーネシア代表の選手の一人が、ゴマ油とガマ油を取り違えたようだ。
誤審ではないかと居酒屋『ぶうちゃん』の監督が審判に詰め寄っている。現場は躁鬱だ。
仁義を通すために「爪をつめろ!」という話になったトコロで画面に速報のテロップが流れる。

〜採石場の後で、オンバが見つかったとCNN。只今、どの島かドッチラケ内閣が確認中〜

「若い若いと思っておったが、わしももう今年で20歳じゃなあ。」

「ええっ!ケニーさんまだ20歳?? 完全にそんな設定にストーリー上なってなかったじゃないですか!!」

「だって20歳だもん。さっきも自分で作った日焼けサロンでお肌をトンガリ色に焼いて、頭皮をヒシヒシ痛めちゃったよ。
今晩のメニュー、『頭皮炒め』にする?」

「『頭皮炒め』はサクセスストーリーです!私より16歳も下だったら会話になんの説得力もないじゃないですか!!
もういいですよ。今日から私がケニーの役を引き受けます。」

かくして私は、この島でケニーと名乗り暮らし始めるコトになる。
この時の私ことケニーは想像だにしていなかったのだ。

ケニーという名前に秘められたオンバとの隠されたコリッとした味付けに。

先ほどの審判は結局爪をつめる羽目になっていた。
私はその爪をじっと見つめる。

鷹のツメだ!!

そう。讃岐うどんを美味しく頂くためには欠かせないあの鷹のツメ。

(続く)

藤井 佳之

藤井 佳之

四国の高松という街で、完全予約制の古本屋を営んでいます。名前は、「なタ書」です。
「なんで予約制なんですか?」とよく聞かれます。「お客さんがあんまり来ない」からです。

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