無花果(イチジク)。
私がこの果物を食べるようになったのは、大人になってから。
それもごく最近のことで、4人目を授かったこの夏のこと。
市内にある実家へはしょっちゅう足を運んでいる。
娘たちの習い事が実家の近くで行われるため、それを口実に。
週に一度は長女と次女をピアノの先生のお宅へ預け、
三女と私はそのまま実家へ向かい、一時間ほど過ごして帰ることもあれば、
ふたりを迎えに行き、再び戻り、夕飯をいただいていくこともしばしば。
8月中旬。
すでに妊娠はわかっており、私は実家へ行く度に
気持ちが悪い、を繰り返し言っていた。
その時に出されるのが、ほぼ果物で、このイチジクはその中のひとつ。
父が庭にあるイチジクの木から、食べごろのイチジクを採ってきてくれて、
毎回同じことを言い、手渡してくれる。
「イチジクは女の人にいいんだよ」と。
幼い時に一度食べて、苦手と感じ、それ以来食べずにきていたイチジク。
ところがこの夏、娘たちがとても喜んで食べている姿を見て。
そんなに美味しいものだろうか?と、こわごわ口にしてみた。
幼かった私は何がイヤだったのだろう。
ザラザラしたような食感なのか、少し青臭いところなのか。
気づくと私は、一気に3個も食べていた。
それからは実家へ行く度に、イチジクある?と聞いていた。
不思議だな。あんなに苦手だと思っていたものを、好んで食べるようになっている。
もしかしたらつわりのせいなのか?と、思わなくもない。
それとも、大人になったから?
では娘たちはどうだろう。三歳児までも美味しそうに食べている。
あのまま横浜で暮らしを続け、実家へこう何度も立ち寄ることがなかったら。
横浜のスーパーでイチジクが売られているのを見たとしたら、
私は手にしていただろうか。
実際、イチジクがスーパーで売られている、という事実を今まで知らずにいた。
今はアンテナが伸びてる時だから、入ってくるんだろうな。
父の庭にあるイチジクは、今後も実り続けるだろうか。
実るのなら、ずっと、実り続けて欲しいと願う。
孫にも、娘にも伝わったイチジクの味。
父の無花果。