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2F/当番ノート

父と無花果。

当番ノート 第5期

無花果(イチジク)。

私がこの果物を食べるようになったのは、大人になってから。
それもごく最近のことで、4人目を授かったこの夏のこと。

市内にある実家へはしょっちゅう足を運んでいる。
娘たちの習い事が実家の近くで行われるため、それを口実に。
週に一度は長女と次女をピアノの先生のお宅へ預け、
三女と私はそのまま実家へ向かい、一時間ほど過ごして帰ることもあれば、
ふたりを迎えに行き、再び戻り、夕飯をいただいていくこともしばしば。

8月中旬。
すでに妊娠はわかっており、私は実家へ行く度に
気持ちが悪い、を繰り返し言っていた。
その時に出されるのが、ほぼ果物で、このイチジクはその中のひとつ。

父が庭にあるイチジクの木から、食べごろのイチジクを採ってきてくれて、
毎回同じことを言い、手渡してくれる。
「イチジクは女の人にいいんだよ」と。

幼い時に一度食べて、苦手と感じ、それ以来食べずにきていたイチジク。
ところがこの夏、娘たちがとても喜んで食べている姿を見て。
そんなに美味しいものだろうか?と、こわごわ口にしてみた。

幼かった私は何がイヤだったのだろう。
ザラザラしたような食感なのか、少し青臭いところなのか。
気づくと私は、一気に3個も食べていた。

それからは実家へ行く度に、イチジクある?と聞いていた。

不思議だな。あんなに苦手だと思っていたものを、好んで食べるようになっている。
もしかしたらつわりのせいなのか?と、思わなくもない。
それとも、大人になったから?
では娘たちはどうだろう。三歳児までも美味しそうに食べている。
あのまま横浜で暮らしを続け、実家へこう何度も立ち寄ることがなかったら。
横浜のスーパーでイチジクが売られているのを見たとしたら、
私は手にしていただろうか。
実際、イチジクがスーパーで売られている、という事実を今まで知らずにいた。
今はアンテナが伸びてる時だから、入ってくるんだろうな。

父の庭にあるイチジクは、今後も実り続けるだろうか。
実るのなら、ずっと、実り続けて欲しいと願う。
孫にも、娘にも伝わったイチジクの味。

父の無花果。

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