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2F/当番ノート

田の草。

当番ノート 第15期

7433-1200

六月の朝。 
田んぼで、蜻蛉が羽化する。

羽根に、朝露。

一秒一秒、スローモーションのように広がる、世にも美しい羽根。
細胞からしたたるような、まばゆい水滴が乾くまで、彼は飛び立たない。
稲の葉を宿り木に、ガラス細工みたいな羽根を広げ、数時間、待つ。

息を止めて そっと近づき、自然が生み出した ‘宝石’ のような生物に見惚れる。

雑草 7285
ちょうど、蜻蛉が生まれる頃、田に、草が生えてくる。

上の写真、手でつかんでいる植物が、雑草である稗(ヒエ)と、細いのは、赤玉。
それ以外は稲。

疑似疑態。
農家でさえ、見分けがつかないほど。
生きのびるため、植物が身につけた 知恵。

こうして、稲が吸うべき土の養分を奪いながら、雑草たちは賢く育つ。

雑草つかむ 7292
これが、雑草の根っこ。
たかだか一ヶ月で、この根張り。敵ながら、立派。
これぞ、生命力。

7513-1200 草とり宏
雑草の成長を、優しく見守るわけにはいかないので、草とりが始まる。
これは、田車(タグルマ)という、昔ながらの道具。

7514-1200 草とり機アップ
田車の歯の部分。
この鉄の歯で、草を、根っこから引きぬく。

そして、田の中に踏み込んで、緑肥(リョクヒ)にする。

4211 1200

こうして、ちょっと離れてみると、稲だけしか見えないけれど、
田のなかに足を踏み入れると、そこは多種多様な生物の世界。

わたしたちも、ただの生きもの。
なにかを食べないと、生きていけない。

酸素と、ミジンコと、水。
それだけの栄養で生きていけたら、きっと、この世界はもっと美しいままだろう。

けれど、そうではない。
この稲に実る米を、食べる。
今、すくすく育っている 野菜も魚も豚も、食べる。
電気を使う。トイレも使う。車にも乗る。洗濯もする。

無数の連鎖のおかげで、生きていられる。
私たちが、命をつなぐために、いただいている命に、感謝するばかり。

無農薬が、なんでも素晴らしいわけじゃない。
うちのお米が、日本一おいしいわけじゃない。

育て方は、わたしたちの自己満足。
ただ、それだけのこと。

あなたが たべるもので、あなたの細胞は 形成されていく。

だから、
あなたと、あなたの大切なひとがたべるものに、もっと意識を向けてほしい。

よく食べ、よく生きる。

それは、量ではなくて、質のはなし。

あなたの選択肢が、あなたの生きる世界を作るから。

お米農家 やまざき

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