家族と長い事過ごした尻尾がくるりと揺れる犬。
今でも茶色いかたまりを見ると、彼を思い出す。
日差しの中で丸まって眠る犬の毛の一本一本が明るい茶色。
なんて男前なんだと思っていた。
何処かの海で拾って来た流木の木目の色。
その上に乗せる色は何だろう。
そのままでも十分美しいのだけど、その木目の茶色い筋をたどる様に
絵の具を置く。
ラオスに行った人の話を聞いた。
ナイトマーケットで一心不乱に人形を作っては売るお婆さんがいたって話。
手を休めずに自分の周りに飛んでいるであろうピー(精霊)の姿を写し取る様に
迷いなく作られて行く人形。
そんな風に、この流木に迷いなく形をつくれたら、と思いつつ。
未熟者は目一杯悩むのです。
地面の色。
生命力の源の土の色。その中に種が埋まり緑がいずれ芽を出す茶色。
珈琲の色。
目の前のカップの中にある深い色。
スタンドの灯がカップの中に落ちて、一瞬月のようで、揺れて滲んで消えた。
チョコレートの色。
甘い力のある不思議な食べ物。手の熱で解けてとろんと手に流れ出す。
その艶のある溜まりを舐める。
目が覚めた。まだ頑張れる。
茶色って思うものには何とも魅惑的なものが多い様だ。