当番ノート 第43期
2019年2月末より、ハンガリーの首都・ブダペストにあるエルテ大学*で、「日本の歌を歌うサークル」が始まった。ブダペストにはエルテ大学とカーロリ大学に日本学科があり、日本語を学ぶハンガリー人学生が少なくない*。ハンガリーで日本の歌を歌うきっかけを作ってくださったのは、カーロリ大学*の後藤先生であったが、今回はエルテ大学の日本学科に勤める内川先生から、このサークルの歌の指導の依頼を頂戴し、昨年から少…
当番ノート 第43期
13 グッドバイ 人々が芸術に取り組む時「芸術なんて無い」ということを誰もが一度は思う。しかし、そこで逆説を使い続けることだけが私たちに芸術を続けさせる。それは森羅万象から疎外され、神にも野獣にもなれなかった者たちの、仕方のない逆説である。この美学が近代によって達成された時、それは「別れ」として起こった。さようならだけが人生だとすれば、しかし人間が生まれるのは死ぬためでなく、始めるためであると返す…
当番ノート 第43期
上京して一軒目の家に住んでいたときのことである。ネットで流れてくる各大学のミス・ミスターコンテストの投稿を何となく見ていると、面白そうなミスター候補が目に留まった。その人のホームに飛んでみると、絵も描く人らしい。音楽も詳しいみたい。美術史専攻だし、面白そう。私は高校生のときは美学を専攻したいと思っていたので、そういう人たちには何となく憧れがある。 たまたま、彼の大学のキャンパスが当時…
当番ノート 第43期
こんにちは。そにっくなーす a.k.a.ひのはらみめいです。 今回は、わたしが生業として嗜んでいる詩の朗読をやる理由についてお話しようと思います。 実用的なこと、とまではいかなくてもちょっとした時に読んでへーってなってもらえる、そんな連載にしたいのですが堅い話ばかりでもあれなので、ここらでちょっとひとやすみといったところですね。 以前ポエトリースラムという大会の日本国内での予選に出た時に、ぼろくそ…
当番ノート 第43期
なぜ、ハンガリーへ留学してから6年目にして、ハンガリー語学学校へ通っているのか? 語学勉強を甘く見ていたのかもしれない。リスト音楽院に在籍していた4年間、何もしていなかったわけではない。リスト音楽院にはありがたいことに、日本人の先生が日本語でハンガリー語を教えてくれる90分のクラスが週に2回ある。私も用事が無い限り、その授業に積極的に参加した。とても分かりやすく、ハンガリー語の勉強の導入として最適…
当番ノート 第43期
10 愛、哄笑、落下傘 希望について語るとき、私たちは一つの宿命を受け入れる必要がある。ロマンと消費の相性の良さは私たちが人類であることに関係している。いまや、あらゆる運動は商品でしかなくなった。愛は消え失せ、広告だけが残った。20世紀が情報化と資本主義という革命によって無数の人々を生贄にしたことは既に述べたが、この話はもっと具体的に語られる必要がある。すなわち、この未曾有の革命の中で散った愛とは…
当番ノート 第43期
東大に入ってもう4年以上経つというのに、受験について回顧するのは気が引ける。気が引けるというかダサい。東大生が大学に入学して時間が経っているのに自分の受験期のことをツラツラ書くというのは、キャンパスで特段何も成し遂げられなかったがゆえに1月や2月の受験シーズンになると突然始める自分語り、というと言いすぎだろうか。でも今日はあえて受験のときのことについて書こうと思う。 いつだってそうな…
当番ノート 第43期
こんにちは。 そにっくなーす a.k.a.ひのはらみめいです。 前回の記事において、詩を書く時のことや中動態のことをお話できればいいなあと言っていましたが、 読書が追いついていません。笑。 國分功一郎「中動態の世界 意志と責任の考古学」は第16回小林秀雄賞を受賞した本でして、医学書院から「ケアをひらく」のシリーズの一つとして書籍で出ています。 隔月刊の雑誌「精神看護」の連載をもとに書籍化されたもの…
当番ノート 第43期
ハンガリーを代表する作曲家バルトーク。バルトークは1881年、旧ハンガリーのナジセントミクローシュで生まれた。彼は作曲家としてだけでなく、ピアニストとして、大学の教授として、そして民俗音楽家としても一流であった。そして日本では1886年、山田耕筰が東京に生を受けている。19世紀末、彼らは強いナショナリズムを背景に作曲家として育った。 バルトークはブダペスト王立音楽院(後のリスト音楽院)で西洋音…
当番ノート 第43期
7 芸術、あるいは無。批評、あるいは死。 革命が「やっぱり無理だ」という時、人は何によって諦めるのだろう。20世紀の間、諦めの態度は批評によって表明されてきた。であるが故に批評的であることが一つの芸術たりえた。前回の連載に対する友人からの指摘「アリストテレスいわく『社会をつくることができない者か、完全に自足しているので社会を必要としない者は、野獣か神であって、都市国家の一員にはならない』」は、無と…
当番ノート 第43期
関東のいくつかの町を転々とした後、小学校の高学年になって岡山県に引っ越した。 岡山には難波(なんば)という苗字が多い。関西弁ネイティブの私にとって「なんば」は「なんば・道頓堀・アメ村」のなんばであり、「サンバ」の発音なのだが、苗字の「なんば」はどうやら「さんま」と同じらしい。サンバじゃなくてさんま!と訂正され続け、正しい難波さんの発音を習得するのに二週間かかったが、逆に二週間すると流…
当番ノート 第43期
こんにちは。 そにっくなーす a.k.a. ひのはらみめいです。 精神科看護師を楽しんでいる自称文学少女です。 みなさんは 憧れている人っているでしょうか。 妬ましい人っているでしょうか。 アニメにもなった筒井康隆の人気小説『パプリカ』の中で、 主人公の美人サイコセラピスト・千葉敦子に対し、妄想に取りつかれた後輩セラピストの柿本信枝さんが 『美人だからって調子乗んな』(意訳) とぶん殴るシーンがあ…