きみが うえに なってる たまごは、 おさらのうえから、 へんなめで じっと にらんでるみたいだし、 きみが したになってるのは、 うつむいて じっと まってるみたいで、 いやなんだもん。(『ジャムつきパンとフランシス』より)
この世で一番好きな食べ物はと聞かれたら、私は迷うことなく「たまご」と答える。玉子料理ではなく、たまごである。たまごの存在が目に見え舌にはっきり感じられるもの―たまごかけご飯にゆでたまご、そして目玉焼き。この3つであれば毎日でも毎食でもいくつでも飽きることなく食べられる。
小さい頃の話。私の皿の目玉焼きは黄身が2つある。双子なのではなく、それは黄身嫌いの弟の皿からやってくる。きれいにくり抜かれた白身だけの目玉焼きは何かさびしそう。黄身があってこその目玉焼き!目がないのにそれを目玉焼きと呼んでいいのだろうか……。私は考えた末、穴に何か代わりのもの―例えば、それはハムだったり、サラダの胡瓜だったり―を折ったりちぎったりしたあげく、ぴったり詰めてやる。弟の目玉焼きに再び目玉がついたところで満足して、私はようやく自分の皿でこっちを見ている2つの目玉に取り掛かる。
今日の本の題名は『ジャムつきパンとフランシス』。ジャムつきパンだなんてたまごとはかけ離れた名前が入ってるじゃないかと思うかもしれませんが、ご心配には及びません。アナグマの女の子フランシスはたまごが大嫌い。唯一食べるのはジャムつきパン。だから、このページにもあのページにもたまごの悪口ばかり。ところが、読み進めていくほどにたまごを食べたくてたまらなくなるのだから不思議です。フランシスは歌います。
たまごは きらい だいきらい。
だって、さわると ブルンブルンするし、
なかが ヌルヌルしてるんだもん。
あたしは、たまごなんか たべなくたって、
ちっとも ちっとも かまわない。
私の世界一の好物である目玉焼きについても、へんな目がにらんでるから嫌、ターンオーバー(両面焼き)の目玉焼きもうつむいてじっとまってるから嫌、と口にしません。私は目玉焼きが好きだけど、黄身の部分についてはフランシスと似たような感覚だったなと、小さい頃のエピソードを思い出したのでした。この後、フランシスは、家族がおとしたまごのトーストを食べている時も、学校で友達がおかずたっぷりの弁当を食べている時も、大好きな!ジャムつきパンしか食べさせてもらいません。最後には「もうジャムつきパンはあきた。」とフランシスは宣言し、なんでも食べるようになります。嫌いな理由っていろいろあるけれど、好きな人が聞いたらそれこそおいしい理由なのに!と思った一冊でした。
一番最初のページでフランシス達が食べているのが(フランシスは食べませんでしたが)エッグスタンドに立っているとろとろのゆでたまごです。私が小さい頃、エッグスタンドに半熟のゆでたまごを立てて食べるのがなぜかはやった時期があり、その時のエッグスタンドを持っていたので、私もそれ以来ぶりにエッグスタンドを使ってみました。ジャムつきパンも添えました。フランシスも両方食べればよかったのにね、おいしかった!