身近な人と話していたら、外の世界に目が向かなくなるときが往々にしてある。
そんなときでも周りに目が向くのは、奇抜な服を身に纏っている人ではなく、面白いものを運んでる人に出くわしたときが多い。
それは多分、服装はその人の主張があるわけでわざわざ注目したくないときは無視できるが、持ち物についてはどういうシチュエーションでそんな物を持っているのか、そのストーリーが気になって想像力を掻き立てられて、ついつい注目してしてしまうからだろう。
数年前にカマシ・ワシントンの等身大パネルを電車で運んでいる女性がいた。遭遇したのはたしか銀座線に乗っていたときだと思うので、渋谷のタワーレコードから都心の取材場所に運んでいたんだろう。
パネル自体は軽そうではあったが、女性よりもカマシ・ワシントンの方が大きいので運ぶのはなかなか大変そうであった。
その数日後に音楽イベントに行った際に、会場内にあのパネルがあった。世界でも何個も存在している訳では無いから確実にあの女性が運んでいたパネルだろう。
最近も、つい数週間前、渋谷でとてつもなく長い物体を運んでる長髪の男性を交差点越しに見掛けた。
信号が赤だったので、その男性をというかあまりに目立ち過ぎる物体とそれを持つ男性を見ていると、その長髪の男性はタクシーを拾おうとしていてタクシーが無事捕まったものの、その物体を車内に入れようと繰り返し押し込んでいたがまったく入る気配がなく諦めていた。誰が見ても入るわけが無かった。
よほど急いでいたのか、そのままその大きな荷物を抱えて渋谷の道を猛ダッシュしていた。
遠くから見るとサーフボードのような形をしていたが、タクシー車内に取り入れようとする際に若干折り曲げていたように思えたから違うのだろう。
嘘ちゃうかと言われそうだが、その物体はタクシーの奥行よりも長かった。気がする。いや、本当に長かった。

いま住んでるアパートは川沿いにあり、草が刈られたときは開けているので、色んな人が佇んでいたり、休みの日にはバーベキューに興じたり、マクドナルドのハンバーガーを食べたり、スタバのコーヒーを飲んだりしている。
アパートから川沿いの様子が見えるため、たまに窓からボーっと覗いていると、お父さんが階段に腰掛けてスマホを見ながらハイボールのロング缶を飲み、その隣で退屈そうに子どもが草を毟ってる様子なんかが見える。
休みの日の昼間、家に食べる物が無かったので駅の立ち食い蕎麦屋に行こうと川沿いを歩いていると、クリーニング屋から回収したのであろう何組かのワイシャツを、ハンガーの丸みの帯びた部分に前腕を掛けて持ち上げながら、ストロングゼロのロング缶を飲みながら歩いてくるおじさんに遭遇した。
通り過ぎてから、そのおじさんの後ろ姿を見たらやじろべえのような恰好に見えた。もしロング缶を飲み終わった後に、千鳥足だったら本当にやじろべえに見えたかもしれない。
なんかその姿を見て元気が出た。