朝、始発に近い電車に乗って羽田空港へ。
結局荷造りは当日の朝に急いで拵えた。
パスポートとコンタクトと下痢止めさえあれば大丈夫だ。
ささっとチェックイン、荷物検査を済ませ、ゲートの前に着いて、出発までの時間を過ごす。
小腹が減り、自販機で売られていたおにぎりを買う。
しばらくネットに繋がらなくなるので、仕事の連絡をまとめてする。
空港のwifiを使って、フライト中に聴くためのアルバムをダウンロードする。
飛行機に乗り込み、ネットが繋がらなくなると、ようやく旅に出た気持ちになる。
機内では日本では未公開だったジャームッシュ監督の映画を見る。
3つのエピソードに分かれている小さな物語。
2つ目の女性しか出てこないエピソードが素晴らしかった。
画面は小さく音響もよくないのに、なぜフライト中に観る映画は没頭しやすいのだろう。
トランジットで香港に着く。
乗り継ぎに5時間があったので、空港の外に出ることも考えたが、トラブルがあってはと思い、結局空港の中にいることにした。
機内食では腹が満たされず、何か食べようと歩いていると、鴛鴦茶というコーヒーと紅茶を混ぜたドリンクが売っており、せっかくならと鴛鴦茶とどんぶりのセットを頼んだ。
鴛鴦茶は格別美味しいわけではなかったが、想像よりは美味しく、注文してよかった。
どんぶりは無機質な味だった。チャーシューがあまりに赤いのは何かの着色料だったのだろうか。
再び飛行機に乗り込み、カトマンズ行の道中でいくつか映画を見るが、香港行きで見たジャームッシュの映画ほどにのめり込める作品には出会えなかった。
カトマンズの空港に着くと、驚くほど簡素で、旅の気分が高まる。
数日前に調べて先に日本でビザ関係の書類を印刷して記入していたので、ビザの料金のみをカウンターで支払う。
空港の出口では多くの人たちが各々花束を持っていた。
誰かネパールの有名人が降りて来るのかと思い、花束を持っている男性に声を掛けると「妻が戻ってくるのを待っている」という答えが返ってきて、この方の奥さんが現地の女優さんなのかと思う。
別の男性に同じ質問をすると「娘が戻ってくるのを待っている」という回答が返ってきた。
どうやら、ネパールの人たちは海外から戻ってきた親族、恋人、友人を花束で出迎える風習があることを知った。
前日にBooking.comで予約した宿が送迎の車を出してくれるはずだったが、空港の外を一周したが、自分の名前を掲げている人は見つからなかった。
色々歩き回っていると、宿はどこか?と尋ねられ、予約している宿に電話してくれた。
強引な勧誘かと勘違いしたが、そうだここはネパールでとても親切な国だと、15年ぶりの訪問を改めて思い知る。
電話してくれたおかげでドライバーが到着し、宿まで30分のドライブ。
道中、「ネパールでは30代の元ラッパーの首相が誕生してから、土曜日だけじゃなく日曜日も休日となり、これまで週1回の休みが2回になり、国民はみな喜んでいる」という話を聞く。
夜23時頃、宿に着き、シャワーを浴びて寝ようと思ったが、寝られずに、カトマンズの繁華街を歩くことに。
疲れ切っていて、誰かとコミュニケーションを取る気力も無いと思い、一人で飲める空間を探していると、日本でも見ないくらいのサイズの大きなクラブがあった。
カトマンズまで来てクラブに行くのはどうかと思ったが、中がどんな感じか気になり、日本円で1,000円のチャージを払い、中に入り、ビールを飲む。
とても派手な空間で、日本にいるのと変わらない気分になったが、20分ほどかけてゆっくりビールを飲みゲストハウスに戻りすぐ寝た。
翌朝、せっかくなのでネパールのローカルな食堂でダルバートを食べようと思ったが、宿にモーニングが付いていたので、宿で食べる。特にネパール感のない欧米風の朝食だったが、まだまだ先は長いので焦らない。
ゲストハウスにはその日私しか泊まっていなかったようで、暇そうにしていたゲストハウスのアルバイトの若者が話しかけてくれて、朝食を取りながら話す。
カトマンズ出身だけど、都会はあんまり好きではないようで、1年のうち何回かは山にこもるという。自然あふれるネパールならではの過ごし方で羨ましい。
その後、カトマンズ中心部を歩く。
路地を歩いていると、今回の滞在中に一度は行こうと思っていた日系の喫茶店千草を発見した。
地図も見ずに、GoogleMapも開かずに偶然に見つかることが、嗅覚を少しずつ回復させていくような心持になる。
観光や文化の中心であるダルバール広場に移動し、塔に上り、カトマンズの街並みを見下ろす。
塔を出て歩いていると、建物の小さな入口に地元の人たちが集まっていた。
まるで祠のようなその場所では、おばあちゃんがチャイを作っていた。
美味しそうだったので、私も1杯頂く。
30円ほどのそのお茶は本当に美味しく、暑い中でやけどするほどの熱々のミルクティーを飲むのは今回の旅の目的の1つだったので、達成感を得る。
そして、1日の中でどこでどんなミルクティーを飲むかが、ネパール滞在中の日々の過ごし方の軸となっていった。
ミルクティーを飲んだ後に、腹がとても減っていることに気づき、近くにあったビリヤニ屋に入る。
そのビリヤニがすこぶる美味かった(そして最終日にまた行くことになる)。
街の中で1つでもお気に入りの店や場所を見つけると、その街に急激に愛着が沸く。
まだ翌日から行く街をまったく決めておらず、このまま数日カトマンズにいるか、遠く離れた街に行くか、色々選択肢があった。
その国の広さを感じられるため移動は原則バスと決めていたので、バスターミナルに行って、行先を見ながら決めることにした。
(そもそも鉄道は無いが)
数時間で行ける場所ではなく、どうせならどこか遠い場所に行きたいと、カトマンズから車で24時間ほどのイラムというお茶の街に行くことにした。

