長期滞在者
マイクに向かって喋る横顔を見守る。 緊張で震えるような表情。 全力でやるんだという瞳。 ほっとして笑顔が弾ける。 ラジオレッスンの講師として指導をしている声優養成所の生徒達と、 日本工学院レコーディングクリエイター科ラジオミキサー専攻の生徒のみなさんとの合同番組制作の授業。 ここ数年、夏になる前の恒例の景色となっている。 「今日はうちの子達が、お世話になりました。」 番組制作が終わって、私はそんな…
長期滞在者
ふらりと立ち寄ったその辺の小さな食堂で、料理の味も良く、なおかつ気持ち良く食事ができたときは、今日一日がとても素晴らしかったように感じられます。そういう気分になるお店とは、たいてい店主の雰囲気がよろしい。他にも用務先で見かけたお肉屋さんのご主人の顔が、いかにも美味しいものを知っていそうだ、という顔をしていて、コロッケやメンチを買って帰ったり、日常生活の中で時折このような素敵な出会いがあります。 他…
長期滞在者
思い込みが強いタイプの人間は、少なからずいる。相手の言葉に耳を傾けることなく、自分が絶対的に正しい、と信じてやまないような人が。その様は、言い方によっては、ヒステリックとも形容できるのかもしれない。 ここでひとつ、河童の話をしてみたい。 日本の妖怪のビッグスリーといえば、鬼・天狗・河童あたりだろうか。そのため、それぞれ多様化しており、天狗であれば、「木葉天狗」「烏天狗」などのように種類も分かれ、そ…
長期滞在者
昨日6月25日に、テロ事件直後にはCNNにテロリストの巣窟とまで言われたブリュッセルのモーレンベーク地区にあるパークファームという公園で、とあるイベントがあった。パークファームはもともとその敷地で2年まえに行われた催し物のために作られ、その後取り壊される予定だったグラスハウスを再利用し、それを運営する形でその地域のコミュニティーのためのイベントの中心施設になりつつある。 このグラスハウスを守ったの…
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おかあさんは、ぎゅっと くまきちをだきしめました。すると、「くるしい!」「ばかあ!」「とんちき!」「わるものお!」というこえが きこえてきたので、おかあさんはびっくりしました。 (『ありこのおつかい』より) 今日の読書の授業は昔話の紹介だ。読み聞かせも終わり、各々読む本を選んでいる。K君が書架の間を歩きながら、「パンツパンツパンツ……」と連呼している。別に「パンツ」と言いたいなら言えばいいのだ。い…
長期滞在者
6月は見送ることの多い月だった。感情があっちにこっちに飛ばされて、流されて、正直すこし疲れ気味ではある。 長いこと闘病していた祖父が6月11日に亡くなった。アパートメントで連載している往復書簡に、祖父について書いた直後のことだ。実のところ、祖父が亡くなる数日前からちょくちょく両親と連絡をとってはいて、そろそろ本当に容態が良くないとは聞いていたし、心の準備はしておきなさいとは忠告されていた。覚悟は多…
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ヨルダンでは年に数回しか降らないという雨が降っていた。 私はその日、ペトラ遺跡に行く予定で。 「ペトラ遺跡で雨なんて珍しいことだよ!」と言われた。 そうか。明日にはこっちに来るからだろうか。 このまま土砂降りの雨になったら、ヨルダンでも伝説を作ってしまうのかもしれないと考えてしまった。 ペトラ遺跡からアンマンの市内に戻る車の中で、 雨に包まれたヨルダンの広大な大地を見ながら、「THE ONE -c…
長期滞在者
謎の人、だいなごん。 何が謎って、名前が謎(笑 ・・・・・・ ところで、先日開催いたしました九州震災支援アートバザール「アニマート」。 皆様のおかげをもちまして、なんと → click here (怪しいサイトに飛んだりはしません!)
長期滞在者
昨年に続いて六本木のフォトイベントにブースを出店して、主にここ1、2年のうちに紹介した作品をたくさん展示しています。 毎年楽しみにされている方もいるのでしょうか、昨年よりも好みの作品を物色する姿に熱っぽさを感じます。 毎回、この手のブース展示に参加するときには、努めて従来のギャラリーらしさを意識的に否定することを心がけています。 規模の大小を問わず、いくつかのアートフェアなどに出かけて思うのは、そ…
長期滞在者
「先を譲れるか」 電車に乗るときのことだ。朝、いや、朝でなく他の時間帯でも、渋谷、新宿、東京駅など、人が大きく交差する場所に行けば行くほどに、モヤっとする光景に出くわすことも多い。 プラットホーム、乗車を待ちかねて並ぶ人たちの中には、電車が来るやいなや、車内から出てくる人たちをお構いなしに、ターゲットの座席だけを目指して、なんとしてでも自分が座るべくお隣さんたちと小競り合いをはじめる。妙な心理戦が…
長期滞在者
ヨーロッパというか、西洋の主だった国ではそろそろ年度末である。 もちろんベルギーも例外ではない。 公の機関がほとんど機能しなくなる夏休みに向けて、あれこれ忙しい時期だ。 ぼくが通っている美術アカデミーもそういうモードになってきた。 大の苦手であるお片づけの指令がお上から出たので、渋々従ってみたり、 釉薬を決めかねて溜まっている素焼き状態の作品に慌ただしく施釉したり、 その隙間になんとかもうちょっと…
長期滞在者
きのうころしたいちまんびきのライオン いちまんびきのライオン いちまんびきのライオン きのうころしたいちまんびきのライオン きょうはなんびきころそうか (『子どもに聞かせる世界の民話』より 「ヤギとライオン」) 雨が降ると一般的には商売あがったりだが、学校の図書館は一転大賑わいとなる。授業の終わりのチャイムがなるやいなや、外で遊ぶことのできない子供らが、わんさわんさと押し寄せて、芋洗い状態になる。…