長期滞在者
ひとりでいる時間が増え、本を読んだり、スマホをみたりという時間が増えた。縫い物や編み物をしたり、お掃除を今までより丁寧にしたり、ひとりでいる時間を充実させようとしている。自由だなと思うこともあるから、実のところ、自分が予想していたよりは寂しくは感じていないけれど、なにかが自分の人生からすっぽり失われてしあった感覚があって、それにはまだ慣れない。 ひとりで生活するということは、自分で物事に責任を…
長期滞在者
自分がどこにいるのか、わからなくなる。夕方の体育館で目覚めたとき、異国の街で酩酊してタクシーに運ばれているとき、昼下がりに談笑した友人たちが部屋から去ったとき、目の前を飛びまわる虫を叩くでもなく眺めているとき。そんな感覚に襲われることがあります。 自分と外界を隔てる境界は曖昧として、色や音や風や、誰かの嫉妬や自負や不安が、皮膚のすみずみから神経系をつたって全身にじわじわ染みこんでいく。推定37兆2…
長期滞在者
「自分の」写真に使い始めたのは四年ほど前からだが、仕事(営業写真館のカメラマン)の写真ではもう十年以上デジタルカメラを使っている。最初はフィルム用カメラと違って繊細そうなカメラ(高価でもあった)を怖怖使っていたが、実際使ってみると案外頑丈だし、別に今までのカメラと同等の扱い(要するに手荒)をしても問題はないことがわかってきた。 僕が今仕事で使っているカメラは二台ともに十年選手である。最新のカメラに…
長期滞在者
仕事場の近くに住んでいる衣料品関係の仕事をされている社長さんが、友人から頂いたという古い書物の1頁を切り取ったものを持って寄ってくださいました。フランス語が読めないのでなにが記されているのか分からないのですが、その方の仕事観に響くことばが綴られている詩の一節なのだそうです。書物にしては、分厚い用紙に活版ですられた本文は、それだけでも重厚な表情があり、周囲が茶色く焼けているのも時間の経過が感じられて…
長期滞在者
「魔法使いは、おもしろはんぶんに、肥料の粉で、すばらしいケーキをつくりました。材料は、腐葉土と混合肥料、それに窒素がひとつまみでした。魔法使いはそのケーキに白い石灰の粉をまぶしました。」 『魔法使いのチョコレート・ケーキ』より 「何して遊ぶ?」「天気もいいし、おままごとしよう。」そう決まると、私達は家の裏にあるコンクリート塀をひらりと乗り越える。すとん、と着地すればそこは隣の家の畑で、隅には用水路…
長期滞在者
いきなり余談から。 今期はアニメもドラマも面白いものが揃っていて、チェックするのに時間配分が大変である。 前期が散々だったから、たまにはこういう時があってもいいのだが、いや、大変である。 物語シリーズの本領を久々に発揮してる感のある「終物語」、 それと同じく西尾維新原作で、こちらは実写ドラマ「掟上今日子の備忘録」(ガッキー最高!)、 前期から引き続き昭和テイスト満載の「うしおととら」、久々の当たり…
長期滞在者
日々の生活が変わりつつある。11月からは、今までとはまったく違う生活になる。ここ数年離れることなく一緒に過ごした、もっとも大事な人としばらく別々に生活することになる。一人暮らしというのはどういうものだったのか思い出そうとするけれど、思い出すのはふたりで過ごす日々の幸せな場面の数々。きっと寂しくなるとはわかっているのに、どこか自覚が持てないまま、旅立ちの日は近づいている。 今回、こういう道を選ん…
長期滞在者
時間というのは不思議なものだな、と最近あらためて感じています。いま現在、この文章を書いている瞬間はあっという間に過去になり、歳月がたてば思い出すこともさほど多くはないでしょう。そして私が、数分後、数時間後、数日後をともにする未来の「いつか」は、現在の私にはどこまでも曖昧な異物です。想像はできます。予想もできます。でも、絶対に同じものではない。現在の未来としての「いつか」と、未来の現在としての「いま…
長期滞在者
秋になったので、林檎ジャムを煮始めて、わたしには答えがない。 ひとの作品を見れば見るほど、何をやりたかったのか分からなくなり、本当の答えを探し出そうとする悪い罠にはまってしまう。楽しくないし、苦しいし、呪いのような気持ちが湧き上がる。ひとの回答をじぶんのもののように語るのでは、作る意味はないし、何やっているだろうというところをグルグル回る。早く答えが欲しい。すぐに答えが欲しい気持ちがやる気を削ぐ。…
長期滞在者
職場に去年から入ってきた若い女子が、聞けば相当ディープにプロ野球の、しかもここは関西なのに北海道本拠のファイターズの大ファンなのだという。タイガースかバファローズなら観戦も楽なのに、因果なことである。 もちろん定期的に北海道にも行くし、普段は京セラドームのバファローズ戦に通い、超望遠レンズをレンタルし、記者席横の特別ブースの料金を支払い、ファミリー向けの小さな一眼レフ(EOS kiss X7)をレ…
長期滞在者
大阪の吹雪大樹さんが主宰しているギャラリーアビィでは、感想カードが備え付けられていて、作家が不在の時や直接話すのが苦手、という人はそこに展覧会を見て思ったことを自由に書いて、会場を後にするというシステムがあります。 先日吹雪さんのツイッターだったと思うけれど、その時に開催していた展覧会の感想カードが、私の予想を遥かに超える膨大な量の紙の塊のようになっている図像を目にして、思わず声を上げてしまいまし…
長期滞在者
蓋のある箱が好きです。 手に乗せられる大きさなら尚良い。 手の上に乗っているのに、その中身がわからない。 まだ読んでいな本を手にしているのに似て、静かな興奮を誘うものです。 自分にとっての理想的な箱、極端な例は「海底二万海里」のノーチラス号でした。ネモ船長が己の知力と財力を結集して、世界中の美しい絵画、剥製、鉱石、この世の全てをあつめた、海底を進む驚異の部屋。 ココアの箱に、可憐な少女が描かれてい…