長期滞在者
妻が久しぶりに劇場の舞台に立つことになり、初日の公演を観に行ってきました。場所は新宿二丁目・タイニイアリス。10年ぶりに訪れるこの古い劇場は間も無く30余年に及ぶ歴史に幕を降ろすそうです。 お芝居の世界には、「初日乾杯」というのがあって、初日の舞台が終わった後、出演者と観客一同に飲食が振る舞われます。 無事初日の芝居を終えた後の演者さんたちの晴れがましい表情、それを受け止めるお客様が一体となった独…
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【個展のお知らせ】 3/17(火) – 3/29(日) (在廊予定日3/21(土)) 京都レティシア書房で個展をします。 物理、数学、鉱物、錬金術等をテーマにした絵画展です。 書籍、自作アクセサリー、トートバック、ステッカー等の販売、鉱物標本の展示も行います。 —————— 個展の準備中のため、今月は宣伝にて失礼…
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「さびしいくらいしずかだと、コドクがすきなぼくでも、だれかとお茶を飲みたくなる」 『ともだちは海のにおい』より 私はお茶が好きである。緑茶に紅茶、中国茶。毎日日替わりよりどりみどり、カップは空になることなく、いつも並々お茶の池。仕事を終えて家に帰るとミルクパンで湯を沸かし、その日の気分で茶をいれたら準備完了。煙猫を愛でながら、読書をしたり考え事をしたりと夜は静かに更けていく。ところがまれに、ごくま…
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ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 知識も言葉もそこへの道筋を示せても、 その道を歩いていくためには邪魔になることばかりだと思うのだが。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ただあるようにあることの重大さを意識し、そうしながらなおかつそれを忘れていく。 そして歩き続け、その先の角を曲がって出会うものに出会い、 驚き、または失望し、または傷つき、または恐れ、または…
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先日、琵琶湖が見渡せる道路沿いをひとりで歩くことがあった。ここしばらくは、せっかく仕事が休みでも疲労困憊で家でひたすら寝たり、なにもせずぼんやりするばかり。無印で新しい枕を買う目的で、久々に人の多いところに外出した。 晴れているのに、山沿いではよくしまける。晴れているかと思ったら、数秒後には雨がちらつくような日なのに、不思議と寒さは感じなかった。春の気配。濡れないようストールを頭に巻いて、とぼとぼ…
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先月大阪の国立国際美術館で観た映像作家フィオナ・タンの動画展示で、メインではない小さなブースでの作品だったのですが、静止した女性の周りをカメラがゆっくり一周して撮っていく、いわば「背面まで写るポートレート」というようなものがあり、目が釘付けになりました。 美しい諧調のモノクロ映像で、どこかでその映像を切り出ししたらそこからいくらでも「ポートレート」が抽出できてしまいそうなクオリティ。 それを観て、…
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例年のことながら春先は、学生や学校を卒業したてのフレッシュな作家さんたちが意欲的な展示を見せる時期です。 現役の学生がぼくたちのような会場を自分で確保して新しいステップを踏み出す、とても素晴らしいです。ぼくが大学生の頃では考えられないことです。だいたい20年以上前、東京にも大阪にも若い人たちが自由に作品発表が出来る場は殆どありませんでした。 ギャラリーは今よりもっと閉ざされた存在であったし、そもそ…
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【鉱物】 こう‐ぶつ〔クワウ‐〕 地殻中に存在する無生物で、均質な固体物質。 一定の物理的・化学的性質をもち、大部分は結晶質の無機物。 今月は、鉱物についての話をしようと思います。 「風景のある図鑑」(書籍が完成しました!)では主に客観的事実を書いていましたが、 ここで書くのはごく個人的な印象論です。 私は鉱物が好きで、博物館の売店やミネラルショーで気になったものを少しづつ買い集めていま…
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「ガブリが みかんになったよー ガブリは、くいしんぼうで わるいこで ばかですよー おとうさんに しかられるー おかあさんに しかられるー こまったよー いいこになりますよー みかんいろなんていやだあ。まっしろくなりたいよー」 (『ガブリちゃん』より) 蔵王の麓から東京に越してきた冬、どこかの家の庭先にだいだい色の実がなっていて、それがみかんの仲間だと分かった時の驚きは今でも鮮明に覚えている。あら…
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ここのところのブリュッセルは摂氏零度を境に最低気温と最高気温の差が5度ほどという状況が続いている。 今までのものより1.5倍暖かいという最新ヒートテックで武装してはいても、寒気が染み入ってくる。寒い。 冬至から一ヶ月も経とうというのに、日の出が8時半ごろで日の入りは17時過ぎだ。 しかも日本から戻ってからというもの、ほとんどが雨もしくは雪か曇りで陽の光をみたのはほんの数時間じゃないかと思う。 つね…
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ほんの少し前まで、毎日電車に揺られながら仕事にむかうっていうことが、自分にはできないと思っていた。ずっと、ずっと、自分には普通の人が当たり前にやっていることができないんだって、なにかが欠落しているんだって思っていた。だけど、気づけば今では、無理だと思っていたことが自分の当たり前になっている。今の自分には、ほんの少し前までのわたしの中にあった劣等感がない。その劣等感がどこにいってしまったのかはわから…
長期滞在者
日日 さめてゆめみる 夢は幻覚であり 白日夢は妄想 蜃気楼は光の屈折現象 物語は空洞で 共有されない記憶域はすべからく錯覚で あるのだろうか 依怙贔屓された視覚におんぶにだっこ ないものねだりの聴覚に平行覚はお手上げ 怠慢な体性感覚に直情的な内臓感覚 統合と乖離をくりかえし 過ぎる よぎる 湧き上がる わきあがる 穿つ うがつ 翳る かげる 煌めく きらめく 導きだされる幾つかの世界を行き来して…