

・・・・・・
カマウチヒデキ+藤田莉江 写真展
「Strangely beautiful vol.2」
Gallery & Darkroom LimeLight
ギャラリー・ライムライト *
558-0053大阪市住吉区帝塚山中4-1-4
06-6625-9162
2025年8月24日(日)-8月30日(土)
12時~19時(最終日は18時まで)
8月17日(水)は休廊
阪堺上町線・帝塚山三丁目駅から徒歩約3分
南海高野線・帝塚山駅から徒歩約5分
(阪堺電車線路沿い、お好み焼きの「にしき」さん角、曲がってすぐです)
・・・・・・
本稿レビュアーでもある藤田莉江さんと、6年ぶりの二人展をします。
藤田莉江さんとの展示が6年ぶり、ということでもあり、そもそも僕の一室使うようなちゃんとした展示が6年ぶり、ということでもあります。いろいろあって時間が経ってしまいました。
藤田莉江さんがこの2025年「1年かけて12人を相手に、月イチで二人展を12回開催する」という、恐るべき二人展マラソンを敢行しており、その栄えある7人目に指名されたのです。
しかしものすごいことを考えるものです。月イチ展示を12回!?
何年か前にビーツギャラリーの「写真修行僧」企画に僕も参加しましたが、あれは月1冊、その月に撮った写真で写真集を作り、1年続けて12冊にする、というものでした。あれもかなり大変でしたが、今回の莉江さんの場合はそれを展示でやるのです。しかも二人展というのは相手のある話なので、展示の相方の出方を考えつつ内容を練ったり、あるいは共謀したりしなければなりません。これもまさに修行僧です。剣豪勝負です。袈裟着て刀構える藤田莉江が今一瞬脳裏をよぎりました。
前回、2019年の展示 (「Strangely beautiful」)** は僕は銀塩モノクロで臨みました。懐かしい。僕の最後の暗室作業がそれでしたからね。あれから銀塩感材の高騰に耐えられず、自宅の暗室は潰してしまいました。
なので今回は前回と同じタイトルに「vol.2」と付しておりますが、まったく違う感じになると思います。
「Strangely beautiful」という奇妙なタイトルについては、6年前のアパートメント記事 *** に書いています。
写真とはStrangely beautifulなものを提示すること、という考えは変わりません。そして前回の藤田莉江さんのStrangely beautifulな写真群が素晴らしく、またあの世界を見せてほしいと思ったのが「同じタイトルでいこーぜ」の理由でした。
藤田莉江さんといえば・・・いや、いちいち敬称つけず、逆に敬意を込めて呼び捨てしますが、藤田莉江の写真は、なんだか、なんとも、凄いのです。でもその凄さの説明がつかない。説明しがたい。もどかしい。
まったく手癖では写真を撮らない人、とでもいうか。
これだけの展示の回数をこなして、「ああ、いつものフジタ」に陥ることがありません。底が見えないのです。ある意味とてもわかりにくい写真家であるといえます。
(逆に僕は某女性写真家に「カマウチさんいつもブレないですね」と褒められ?ましたが、これは裏を返せば「カマウチさんいつも同じですね」と言われてるのと一緒なのでは・・・。精進いたします)
らしさ、に陥ることがない。これは難しいことです。写真の世界というのは、四方八方から「らしさ」が手ぐすね引いてる場所です。こっちの「らしさ」に落ちてこい、と様々な引力が蠢いています。
「らしさ」は言葉です。言葉の世界に写真は引っ張られる。言葉に乗っかると楽だからです。
自分の撮る写真を自分の言葉で説明できないとダメだ、なんていう人がいますが、僕はむしろ言葉から逃げ続けることが写真なのだと思っています。
しかしあちらやこちらの「言葉では説明できないことを撮ってるんです」と言ってる人たちの撮る写真も、たいてい自分も気づかぬうちに言葉に雁字搦めになってます。雁字搦め、かんじがらめってこんな漢字書くんですね。変換に出て初めて知った。そういえば渡辺香津美の昔のアルバムで「頭狂奸児唐眼」ってのがありました。トーキョー・ガンジガラメ。すみません、関係ない話です。
話を戻します。
言葉から逃げるというのは、そんな生易しいことではないのです。生易しく逃げた「つもり」の人たちのために「自分の言葉で説明できないとダメだ」というセリフがあるのですが(自分の言葉、の意味を噛みしめなければなりません)、本当は写真というのはそんな次元で語ってちゃだめなのです。煮凝った意味から逃げ、本当は「自分の言葉」からさえ逃げなければならないのだと思います。
今回の藤田莉江の二人展マラソンを見ていて(4回目のucoさん戦のみスケジュールの都合で見逃してしまいました。痛恨!)、その戦いぶりに感嘆しています。深い沼を深い沼として見せることも写真です。沼の真ん中に藤田莉江は浮かんでいます。
千語万語の言葉を尽くしたあとに、その言葉から逃げおおせたものが至れる世界があると思って僕も写真を撮っています。まだ全然逃げられてなんかないんですけど。
沼のヌシたる人と、良い勝負がしたいと思います。勝負、ではないか。なんだろな。同志でもあるしな。言葉に落とす必要もないか。なんか奇妙に美しいもの、を作りたい二人なのです。
見に来てください。いや、来なさい。

* → ギャラリー・ライムライト
** → 展示の記録「Strangely beautiful」
*** →「25年前のプリント」