入居者名・記事名・タグで
検索できます。

茂吉のねこ

にゃんともはや!のねこばなし

するとぼうっとした闇のなかから、だんだんおばけのかたちがうかんできました。いや、いるわいるわ、野原いっぱいに、手ばかりひょろんとながいばけもの、目ん玉がひとつのばけもの、からだじゅうが青光りしているのっぺらぼう、にわとりのようなばけもの、ぺたぺたとかたちのないおかしなばけものが、たあらん、たあらん、おどっているのです。
するとそのとき、ひとりのばけものがさけびました。
「茂吉のねこぁどうした。」
「まだ酒コもってこねか。」
するとどうっと風がふいて一ぴきのねこがとびこんできました。

松谷みよ子さ作『茂吉のねこ』より

mokiti

日本の民話です。

(あらすじ)
大酒飲みの茂吉は嫁の来手もないため、三毛猫を話し相手にしています。茂吉が酒屋に行くと身に覚えのない勘定がいくつもあるではありませんか。ちょうどその時、童子が現れ、茂吉のつけで酒を買っていくのを見かけます。茂吉が、童子を追いかけると、着いたところはばけものづくしの野原。赤い光や青い光がぺかぺかと光っています。この童子、実は茂吉の三毛猫で、化け物達に夜な夜な酒を運んでいるのでした。化け物達は茂吉に見つかったことを知ると、茂吉を殺すように猫にいいつけますが、猫は「おら、茂吉のこと、すきだもの」といってそれを拒みます。最後は茂吉の猟銃によって化け物たちは消え失せ、茂吉は三毛猫に、おまえはまだ化け猫になるには早いと諭すのでした。

文は松谷みよ子。民話を研究していた松谷ならではのリズミカルな文体が心地よく、すっと昔話の世界に入ることができます。静かに立ち上がる風景に、茂吉がばけものづくしの野原に入ってしまったあたりから背筋がすっと寒くなります。風が吹き火の玉が揺れ化け物踊るばけものづくしの野原を、茂吉と一緒にそっとのぞいてみてください。また、たくさんのばけものが出てきますが、得体のしれないものを作り出すのは、かなもけんの得意とするところ。引用した分と絵の中のばけものをぜひを照らし合わせてみてください。私は、ぺたぺたとかたちのないおかしなばけものなんて、想像できませんでした。

=^..^=出典:『茂吉のねこ』(松谷みよ子作/偕成社)より「茂吉のねこ」

ふき

ふき

わき道より道さんぽ道 笛を吹いたら風の道

kanamoken

kanamoken

特に経歴めいたものが何もなくて恥ずかしいのですが
ずっと絵を描いたりキャラクターを作ったり工作をしたりしてます。
たこまつぺろんにょ(@Peronnyo) というたこのキャラクターがtwitterに
いるので遊んであげてください。

Reviewed by
ふき

今回のお話は日本で、『茂吉のねこ』。

私は、以前、この場所であるアパートメントが「いとでんわ」だった時、自分の飼っている猫のエピソードと猫の物語を8回にわたって紹介していたことがあります。中でも『茂吉のねこ』は立ち上がってくる描写と不思議な世界、猫のいとおしさが伝わってくる物語です。蔵王の麓の我が家で、22年と長生きした化け猫玉さんの話とともに紹介しました。もう一度掲載します。かなもけんの絵とともに楽しんでいただければ幸いです。

____________________
いとでんわ第2期より、「化け猫玉のこと」2011.12-1

その昔、蔵王の麓の縁の下で野良猫が子を産みました。その中から我が家に迎え入れられたうちの一匹が白地に赤茶斑のある猫でした。小柄ですらっと見返り美人、これぞ日本猫というたたずまいに鍵尻尾も愛らしく、玉さん、玉さん、と可愛がられていました。年をとるにつれ、体は痩せ細っていきましたが反比例するかのように食欲は旺盛になり、いっそう小さくなった顔は口が裂けた般若の面さながらで、私は晩年の玉を「化け猫さん」と親しみをこめて呼んでいました。
 ある日のこと、母から玉が死んだとの連絡がありました。人で数えて二十二歳の大往生でした。その頃、蔵王の麓の家を引き払った母は仙台に一人、マンション暮らしをしていました。庭がない今、玉の亡骸をどうしたのかと訪ねると、弟が蔵王の麓まで車を走らせ、埋葬してきたというのです。玉は蔵王の麓の縁の下で産まれた子だし長いこと山里で暮らしてきたのだからそこへ帰してやりたい、というのが母と弟が出した答えでした。しかし蔵王の麓に着いたものの所有する土地もなし、結局、弟は玉を河原に埋めました。弟よ、なぜ河原なのですか。水辺では雨が降ったら玉は流されてしまうでしょう。
 朝鮮に次のような昔話があります。母親の言うことに逆らってばかりの蛙がいました。母親は今際の際、息子にこう言います。「私が死んだら川のそばに埋めておくれ」と。母親は山に埋めてほしかったのです。ところが、母の死後悔やんだ蛙は、母親を言葉どおり川の側に埋めました。そこで梅雨時になると、蛙は墓が流されないかと心配してケロケロ鳴くのです。
 私は長雨の時期になるとこの話を語りますが、そのたびに「玉さん、玉さん、蔵王の麓に居りますか、そこは静かな場所ですか。」と小さな額を思います。

トップへ戻る トップへ戻る トップへ戻る