向こう岸に着いたとおもうと、狐がぷらりと出てきて、
「もし、犬どのな、猫どのな、そなたたちのもっている丸け物はなんだや。まりコだらば、ちょっとの間、手玉とってあそばねえか」とさそいをかけた。
そこで、三匹は、うろこ玉を手玉にとって、あっちやり、こっちやり、遊びほうけていた。
その時、狐はひょいと受けそこねて、大事なうろこ玉を川へ落としてしまった。――日本の昔話『犬と猫とうろこ玉』より
今回も日本の昔話です。
(あらすじ)
昔、貧乏だがやさしいじいさまがおりました。ある日、子どもらが小さい犬をいじめているところに行き会ったじいさまは、銭を出して犬を買い取り、家に抱いて帰りました。じいさまの家には三毛猫がおりましたが、犬はこの猫とも仲良くなりました。
ある時、じいさまが、たきもの置き場をこわしていると、中から白い蛇がでてきました。じいさまは、この白蛇も大切に育てることにしたのですが、蛇はどんどん大きくなり、いつのまにかたんすの引き出しいっぱいになりました。そこで、じいさまは、蛇に一人立ちしてほしいと言い聞かせ、蛇は庭の五葉の松の根方の穴に入っていきました。じいさまが穴をのぞくと、中には世にも珍しいうろこ玉という宝物があり、じいさまはそれをたんすの奥に大切にしまっておきました。そのうち、うろこ玉から日にちまいにち金が湧くようになり、じいさまはたいそうな金持ちになりました。
さて、呉服屋商売を始めたじいさまですが、店の番頭がうろこ玉を盗み出し、どこかへ消えてしまいます。その途端、昨日までの繁盛ぶりがうそのよう、じいさまは、元の貧乏たれに逆戻り。こうなると、かわいがっている犬と猫にやる飯もなく、二匹に家を離れるように言い渡します。
家を出た二匹は、こうなったのは番頭のせいだと、番頭を追いかけますと、町の真ん中に立派な店を構えていました。そこで、まず猫が店の台所から大きな魚を盗み、それを犬が取り返すという芝居をしました。店の人は「この犬コは役に立つ犬コだ」と飼うことにし、猫は「この家のねずみを一匹残らず取る」と約束して番頭の家に入り込みます。ところが、ねずみどもにとっては一大事。猫のところへ使いを出して、「どんなことでも聞くから助けてほしい」と頼みこみ、猫は「小だんすの中に入っているうろこ玉を持って来れば助けてやる」と言います。うろこ玉を手に入れた犬と猫は、早々にこの家を抜け出してじいさまの家をめざしました。しばらくして、大きな川を何とか渡った二匹の前に現れたのが一匹の狐。ちょっとの間、遊ばないかという狐の誘いに乗り、三匹はうろこ玉を投げ合っていましたが、狐が玉を受け損ね、大事なうろこ玉を川へ落としてしまいました。あわてて探したけれどうろこ玉は見つからず、犬と猫はしかたなくそのままじいさまの家を目指します。ある町を通りかかった時、魚屋で大きな魚をみつけた二匹は、じいさまに魚でもおみやげにしてあげようとその魚を盗みます。やっとたどり着き、再会を喜んだじいさまが魚に包丁を入れると、なんと腹の中から、うろこ玉がでてきました。それからというもの、じいさまのうちは再び栄えたということです。
もとの文章は東北弁がやさしくおおらかで、日なたの縁側に腰かけて、ばあさまから聞いているような雰囲気です。ぜひ原文を読んでみてください。
=^..^=出典:『おはなしのろうそく15』(東京子ども図書館)より「犬と猫とうろこ玉」
にゃんともはや!のねこばなし展 11月21日(土)~1月11日(月祭日) 珈琲専門猫廼舎にて
詳細は、
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