肖像について

第2期(2012年4月-5月)

誰かを撮るときに思うのは、
そこにいるだけで美しいよ
ということだ。

でも、なかなか、
そこにいるだけの姿というのは撮れない。
僕が誰かを撮ろうとすると、
その動きが世界をすこし変えてしまう。
相手の表情が、わずかに変わる。
驚き、照れ、緊張、戸惑い、苦笑、微笑。
そのままでいて欲しいなと思うけれど、
変わるなら変わってもいい、とも思う。
それが自然だから。
無理に自然な姿を撮ろうと思うのは、
不自然だから。

僕が誰かにカメラを向けると、
カメラを向けられた相手は、
その時にしかしない表情をする。
それはとても貴重な瞬間だ。
他の誰でもなく、
僕がカメラを向けたからあらわれる表情。
僕はそれを撮る。
いつ撮ればいいかとか、
どうとればいいかとか、
迷う必要はなくて、
カメラを向けた瞬間に撮ればいい。

笑ってくれたならその瞬間を、
驚いたなら見開いた目を、
緊張したならその緊張を、
またかと思ったときの苦笑を。

「いい顔だなあ」とか
「ありがとう」とか、
僕はなにかを言う。
無言で微笑んだりする。

そして、こころのなかで思う。
「でもほんとは、
 そこにいるだけで美しいよ」と。