マサバ Scomber japonicus

第3期(2012年6月-7月)

マサバ Scomber japonicus

サバはいろんな魅力の詰まった、楽しい魚。

水族館の大きな水槽で眺めて楽しいのは何と言ってもサバ科の魚。サバ、マグロ、カツオ。(あとはサワラも同じ仲間だけれど、飼育が難しいのか記憶にないだけなのか、水族館で見たことがないような気がする。)

彼らの何がいいかというと、いかにも外洋の真っ青な荒波の下をずんずん泳いでゆけそうな、筋肉でまるまると張りつめた紡錘形の体とその動き。尾部をぶりぶりと力強く左右に振って(彼らの体には「くねる」というような動作がない。硬いけれど、ぎこちなさや無駄のまるでない、流線型をイメージさせる動き)、ロケットのように速く鋭く泳ぐ。特にマグロの類は尾びれが大きく三日月型に発達して、触ったことないから知らないけれど少なくとも見た感じは魚のひれらしくない、オールとかイルカの尾みたいな硬くまとまった質感をしている。背びれ・尻びれと尾びれの間に小さく点々とならぶひれも、外洋での泳力を追求した進化の結果なんだろうなと思う。

そんな中でもサバは、防波堤からのサビキ釣りで簡単に釣れる身近さと、それでいて強烈な引きを味わわせてくれる大物感、美しい背中の虫食い紋、それに最初からディフォルメされてるみたいに簡潔な線で描かれた可愛い顔と、魅力は何拍子も揃っている。
マグロやカツオに比べるとうんと小さいけれど、紡錘形の体をなめらかに覆う脂肪とはりつめた筋肉はやっぱりかっこいいし、その触感にはため息をつきたくなる。

釣ってきたサバを、まな板の上にちょうど仰向けに据える。包丁を左右のエラ蓋の出会う少し後方、人間で言えば鎖骨と鎖骨の間のくぼみの辺りに突き立てると、なめらかにすっと切先が吸い込まれる。そのまま刃を引けば、肋骨が切れるプチプチというかすかな抵抗とともに、あとは丸くて艶やかな腹がプクリ、という感触とともに長々と切り開かれて、脂肪のつなぎでひとかたまりになったわたが姿を現す。この心地好さは、腹腔が短かったり骨がガツガツと当たる他の魚ではまず味わえない。
小学生の頃は、釣ってきたサバをそうやって三枚におろして、少し酢をくぐらせて昆布にはさみ、でこぼこした昆布〆を作っていた。見た目は素人じみているけど、とってもおいしかった。

釣りで印象に残っているのは、兵庫県、武庫川の沖の一文字防波堤で見たサバの群れ。西日に照らされて水面だけが金色に輝いた深緑色の海いちめんに、サバが背を見せながら大挙して押し寄せてきた。海面はばしゃばしゃと、豪雨に叩かれているみたいだった。その中にサビキ釣りの仕掛けを投げ入れると、30センチ以上あるようなまるまると太いサバが次々と釣れた。記憶の中で少し大袈裟に書き換えられているかもしれないけど、今でもその光景はその時の興奮した気持ちとともに思い出す。

現時点では世界のサバは4種類で、日本にいるのはマサバとゴマサバ。タイセイヨウサバはよくおいしい文化干しになっている。虫食い紋は日本のサバに比べて直線的。あともう一種類のサバは、それが種の特徴なのかわからないけれど紋が細かく腹側にまでまぶされている。この4種を描くのも、それぞれの種の個体間の変異を描くのも楽しい。

描くのも、釣るのも、食べるのも、飼われているのを見るのも、サバはやっぱり楽しい。

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2カ月間、9回にわたって魚のあれこれを描いて、もっと魚が好きになったし、もっと描きたいと思った。
今回で「アパートメント」の連載は終わりますが、引き続き魚の絵と文章はブログで毎週続けていきたいと思いますので、是非覗いてみてください。

 uonofu 魚の譜 ブログ

ありがとうございました。