春の散歩(文 中島弘貴→絵 矢野ミチル)

第8期(2013年4月-5月)

お久しぶりです。変わらずお元気でいらっしゃいますか?
こちらは元気です。新しい職場への行き来の折、毎日のように宇宙空間を散歩していますが、その度に驚くほど多くの発見があります。この数カ月間で特によく感じるのは、辺りの星雲の霞(かすみ)がより深くなり、星ぼしの色やかたちに大きな変化が現れ始めたということです。

あなた方がお住まいの地球とは異なり、この辺りでは季節の巡りがとてもゆるやかです。七つの季節が一周するのに、約250年を要します。今、長く続いた炎と閃光の季節がようやく終わろうとしています。虹色の炎や光や煙が煌めき、爆発する激しく美しい季節でわたしは好きですが、それが50年以上続くとなると流石に難儀します。

さて、そんな穏やかさに向かう季節柄、多くの命の再生がそこかしこに顕われています。冒頭で記した変化が、その最も分かり易い例でしょう。空気は芳しい香りに満ち満ちて、星のあるものは丸い、あるいは角のように尖った蕾を付け、またあるものはガスや光の枝を分岐させながら伸ばしていく。既に花を咲かせているものもありますが、その数はこれからさらに増えていくでしょう。花びらが放射形に開くもの、やわらかい花びらが多層になるもの、肉厚の花びらが合わさって鐘型になるもの、小さな花がぽつぽつと鈴なりになるものやびっしりと房状になるもの、集まって球形をなすもの…実に多様多彩なので、これからがますますたのしみです。わたしには、そんな生命の氾濫とも言える豊穣な季節が、先だっての強烈な季節をなくしては有り得ないと思われます。あのものすごい炎と閃光の途轍もないエネルギーが胚胎させ、生み出したものであると思われて仕方がないし、実際にそうなのでしょう。
そちらの春はどんな様子ですか?仕事の関係でしばらくは伺えそうにないので、お手紙でお知らせ頂けるとうれしいです。それではまた。

中島弘貴 → 絵 矢野ミチル