プロポーズと内省(2月19日から1週間のこと)

第37期(2018年2月-3月)

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2月19日(月)

エロデューサーの佐伯ポインティと、ツドイの今井さんと一緒に某たのしい企画の下見で湯河原へ。朝早く起きたのだけど、恋人さんが気持ちよさそうに眠っていたので(と、人のせいにして)5度寝くらいしたら、11時になっていて、化粧もそこそこに駅まで走る。こんなことなら、もっと早く起きればよかったといつも思う。でも気持ちよく眠っていたのだから、それはそれでいいことにする。

駅に着いて乗れる電車を見たら、待ち合わせ場所の中央林間駅には10分ほど遅れて着くことに。あわててLINEを開くと、ポイちゃんも間違って渋谷駅まで行ってしまったようで、同じ電車で中央林間まで着くらしい。よかった。車内か駅で会おうね、とLINEして電車に乗る。編集者さんにもらった窪美澄さんの『ふがいない僕は空を見た』を読む。映画館で2時間黙って座っているのは辛いので、移動しながら本を読むのは飽きがこなくていいなと思う。

どこに行くというわけでもない、山手線みたいな循環電車に簡単なテーブルとコンセントとwi-fiをつけてくれたら、1日1,000円くらい払って乗っていたい。飽きたらどこか止まった駅に降りて、散歩をして、また電車に乗って、というものがあったらおもしろそう。

小説に夢中になっているうちに、中央林間駅に着いたら、同じシートの逆の端にポイちゃんが座って寝ていた。本当に同じ車両なんてすごい偶然だなと思いながら、ポイちゃんをゆすり起こして、ゆったり湯河原に向かう。

ポイちゃんとはいろんな話をしたけれど、「保活」の話がおもしろかった。「保活」というのは保育園に入るための活動のことで、ポイちゃんが言うには区ごとにルールが全く違って、しかもそれは膨大で、その全部をいちいち読まなければいけないのだけど、忙しいお母さんたちがその1つ1つに目を通すのは難しいのだ、というようなことを言っていた。

そういえば、まだ生後半年くらいの赤ちゃんがいるお友達も「仕事に子育てにと本をゆっくり読む時間なんてないから、オーディオブックみたいなものがあればいいのに」と言っていた。子育てTIPSみたいなものなら、オーディオブックみたいなものでいいけれど、ルールは誰かが読みくだいて、ポータルサイトの記事で比較してあげるとかそういうことがあるといいのだけど、そういうものもないみたいだった。

少子化だとか婚活応援とか言っても、その行く先が整備されていなかったり、良いことが何もなかったりするなら、安心して子どもを産んだり、結婚したりすることができないと思う。保育園に入る枠を確保するためにだけお金を積み立てるという話も聞くけれど、何かもう少し良い方法がないのかな。

湯河原に着いたのは14時頃で、さすがにお腹が空いてしまって、湯河原を散策する。おもしろいフォントの店を見つけては「ここ行ってみよう」と近づくのだけど、ランチタイムを過ぎて昼休憩に入ってしまっている店が多くて、わたしたちはランチ難民になってしまった。

結局、湯河原の歩ける範囲を端から端まで歩いても、良さそうなお食事処にありつけず、結局駅前のうどん屋さんで、750円のざるうどんを食べた。表参道価格だね、と小声でポイちゃんが言った。味は普通だった。

15時にツドイの今井さんと合流して、タクシーに乗って「RYOKAN TOKYO」へ。出迎えてくれたホテルプロデューサーの龍崎翔子ちゃんは若いのに気立てのいい女将感があって、今でも十分素敵だけれど、年を重ねていくごとにカッコよくなっていくタイプの人なんだろうなと思った。

館内を案内してもらっていると、はあちゅうさんがいらっしゃった。はあちゅうさんは1月に公開したnoteを読んでくださっていたので、いつかお礼を言いたいと思っていたのだけど、まさか湯河原で会えるとは思わなくて驚いて、あわあわしてしまった。こういうときにもう少し、堂々とできるといいのだけど。

そのあと予算面の話になったけれど、やりたいことばかり膨らんで、数字の話になると、頭がパッパラパーになってしまった。ふと横を見ると、今井さんはDropboxに館内の写真を貼り付けて情報をまとめている。やっぱりいろんな人がいるから、人類が滅亡しないんだなと大きいことを思った。

帰り際、はあちゅうさんのVoicyに出演させてもらうことになった。小野美由紀さんのVoicyに引き続き2回目。ポイちゃんが緊縛の話を熱心にし出したので、これはこれで1つの番組として聴きたいなと思った。エロは“耳”との相性も良さそう。

タクシーに乗って湯河原駅へ行き、電車に乗って小田原へ。今井さんが蒲鉾を買いたいというので、お土産屋さんに着いていき、わたしも今井さんオススメの蒲鉾を買うことにした。わたしはそんなに蒲鉾が好きではないのだけど、恋人さんは蒲鉾が大好きみたいで、この間はわたしのいないときに蒲鉾を1本買って、すぐに1本丸ごと食べてしまった、という話をその数日後に聞いた。喜んでくれるといいな。

わたしもポイちゃんも蒲鉾にあまり興味がない人間なので、今井さんが蒲鉾の袋を何個もつかみ、その魅力について語ってくれるのをおもしろく聞いた。年下のわたしが言うのは失礼かもしれないし、ご自身は気づいていないと思うけれど、好きな人やモノの愛を全身全霊で説明してくれようとする今井さんという人は、ものすごくキュートな人なんだなと思った。

今井さんが東京で用事があるとのことで、ポイちゃんと一緒に小田原でご飯を食べて帰ることに。リーズナブルな焼き鳥屋に向かっていたのだけど、「やっぱり串カツ田中がいいな~」というので、串カツ田中に行く。わたしも串カツ、大好きだよ。

仕事の方向性だとか比較的まじめな話を相談させてもらって、1時間くらいで解散。某たのしい企画、うまくいくといいなぁ。

2月20日(火)

火曜日なので、12時から業務委託先の会議で代々木へ。原稿の急ぎの修正が入って、13時から会議に出席してトンボ帰り。そのあと、夜まで渋谷のカフェで作業。

夜は、編集者の先輩の誕生日会を渋谷のFactoryを貸し切ってやることになっていて、わたしはその幹事を仰せつかっていた。みんな、「幹事をやってくれてありがとう」と労ってくれたけれど、人見知りなので事務的な会話だけで済む幹事のほうがよかったりする。周りの人との交流が少なくても浮かないし、大好きな先輩の誕生日を同じ場で祝えるのだから、わたしにとってはありがたい。

会は大盛況で、30人ちかい人が集まり、参加者の人たちは主役の先輩の前にズラリと並んでプレゼントを渡していて、本当にアイドルの握手会みたいになっていた。先輩もうれしそうだったし、みんなも楽しかったと言ってくれて、やってよかったなぁと思った。

帰って早々、「2次会だー!」と騒いで、恋人さんを誘ってスーパーにお酒とお惣菜を買いに行く。お刺身が食べたかったのだけど、深夜も0時を回っていたこともあり売り切れで、半額になっていたホタルイカを買って食べた。

おいしかったけれど、ボイルされているものだったので、口の中が渇く心地がした。今度食べるなら、生のホタルイカがいい。

2月21日(水)

朝起きて、恋人さんと一緒に渋谷のコメダ珈琲で作業。原稿が溜まってきてイライラする。特急案件の戻しとか差し込みの仕事が多くて、気持ちがすり減る。予定の変更は苦手。

恋人さんはコメダ珈琲が初めてらしくて、「小倉トースト頼んでもいい?」と不思議な許可をとってから、小倉トーストとコーヒーを頼み、こんもり盛られた小豆とトーストのボリュームに感動していた。わたしは、コーンスープをズズズと飲んでから、パソコンとにらめっこする。

ふと時計を見ると、18時になっている。お店に入ったときは12時だったはずだ。スイッチが入ると集中しすぎてしまう癖があって、今日もそれをやってしまった。過集中すると、仕事の進みが早い分、疲れも2~3倍になる。6時間も無心で仕事をしてしまったと気づいた瞬間に、わたしはもう一歩も動けないような気持ちになって「お寿司食べたい」と恋人さんに言い、センター街の回転寿司までもたれかかるようにして歩いた。

センター街の回転寿司屋さんは、厳密には回転寿司屋さんではなくて、パネルで注文すると電車に乗った寿司が運ばれてくる仕組みのお店だった。わたしは無言で、まぐろとサーモンと焼きサーモンとあおさ汁とえんがわとサーモンとオニマヨサーモンとカニクリームコロッケとあじを頼んだ。あじは他のネタよりも大きくて、見るからにお得感があったので、「それいいな~」と言って、恋人さんもすぐにあじを頼んでいた。

わたしは得意になってあじを食べたのだけど、ゴムみたいな弾力のある変な食感だった。少し残念な気分になったけれど、ここで変な顔をするのは悔しいなと思って「おいしい、おいしい」と言いながら食べた。

家に帰ってからお母さんに電話をする。何日間か前に、家族のグループLINEで戸籍謄本のお願いをしたのに返事がなかったので、もう1回お願いしておこうと思った。そうすると、お母さんは忙しいから行けないのだけど、お父さんにお願いしてみたら少しご機嫌がななめになってしまったから、ののかから直接言いなさい、というようなことを言っていた。たぶん、お父さんは男親だから寂しいんだと思う、とも言っていた。お母さんはどちらかというと心配性だし、お父さんに聞いていないからわからないけれど、もし本当にそうなら、わたしは何も変わらないし、どこにも行かないのになと思った。

電話をしてから、原稿の続きをして、納品したのが22時。そこから少しだけ仮眠をとって、0時に真崎が帰ってきたのとちょうど入れ違いで、恋人さんとガストに向かう。駅前のガストにはコンセントがあって、深夜は人も少ないし、朝の5時まで開いているから書き物をするにはいい。

わたしはドリンクバーを頼んで、メロンソーダを一気飲みして、すぐにおかわりしにいった。深夜なのにジャンクなものを飲んでしまっているなと悪いことをしている気持ちになっていたら、恋人さんはコーラを飲んで、平らなお皿に山盛りのポテトフライを食べていた。負けた! アメリカンだ! と思った。

原稿が書き終わったのは3時半くらいで、ふらふらになって駅前からタクシーに乗る。わたしは眠くて、少しイライラとしているのにもお構いなしで、恋人さんは「タクシーの中で写真を撮りたかったんだー!」と言ってシャッターを切りまくるので、笑ってしまった。

家に帰ると、真崎は電気をつけたままにしておいてくれて眠っていたので、踏まないようにそうっと歩いた。

明日というか今日は8時には家を出て、真崎と長野に行くことになっている。シャワーも浴びたいし、まだやっていない原稿もたくさんあるなと思っているうちに、真っ暗が落ちてきた。

2月22日(木)

朝8時の目覚ましが鳴って、もう少し寝たいなと思って、真崎に「真崎が今起きてくれないと、わたしが二度寝できないから起きて!」とわけのわからないことを言って、真崎を起こして二度寝した。15分後、セットしておいたまた別のアラームが鳴って起きてみると、真崎も眠っていた。真崎が寝ているんだからいいやなどと思って、8時半になったとき、「真崎! いい加減起きないと間に合わないよ!」と言って怒った。

わたしは眠かったんだからいい、という道理のつもりでそう言ったのだけれど、よく考えてみたら真崎だって眠かったはずなので、ジャイアンみたいなことを言ってしまったなと思って寝ぼけながら反省をした。

なぜかわたしに怒られて起きた真崎は怒りもせずに、スマホで高速バスに乗る時間をチェックして「あはは、バスの時間、思ってたより1時間遅かった!」というので、わたしも「あはは! なぁんだ!」と言って、もう1回眠った。そんなことを何度か繰り返しているうちに9時半になって、シャワーも浴びられず、ご飯も食べず、化粧もせずに、わたしたちはバスに乗りこんだ。今日は、長野に住んでいるナカノちゃんという女の子と真崎と3人で長野の旅館に泊まるのだ。

コンビニで買ったおやつを交換する儀式をして、しばらくすると真崎は眠ってしまった。わたしも寝ようかなと思ったけれど、「現地に着いたら仕事禁止!」と真崎がいつも以上に酸っぱい口をして言っていたので、仕事を終わらせることにした。移動中の作業は捗る。ろくに景色を見てはいないけれど、視界の端っこの色が変わるのが楽しかった。

3時間ほどで目的地に着いた。バスを降りると、ナカノちゃんが黒地にネオンカラーで「交互浴」と大きく書かれたかわいいTシャツを着ていた。ナカノちゃんはオシャレだし、服とかに関わらずセンスがいい人だと思う。ナカノちゃんは一応ライターをやっているけれど、ライターというよりももっと別の、なんかいい名前があると思う。もちろんライターという職業がダメというわけではなく、ナカノちゃんには似合わない感じがする。なんかいいの、ないかなぁ。

ナカノちゃんの運転で旅館まで向かう。途中どうしてもトイレに行きたくなって、寄ってもらった道の駅で用を足して出てきたら、真崎は「馬鹿バーガー」というものを買っていた。真崎は「これ! おいしそうじゃない? 馬鹿(バカ)バーガーだって! 大馬鹿も小馬鹿もあるよ!」と興奮気味に言っていたけれど、よく見ると小さく「うましか」というルビが振ってあった。わたしは真崎に小さい声で「真崎、うましかだよ」と教えてあげたのに、真崎は聞こえないのか相変わらず、とても大きな声で「馬鹿(バカ)バーガーください!」と言っていた。

旅館に到着して中に入ると、なんだか由緒正しい旅館、という感じで、あとでわかったことだけど、そこは本当に有名な旅館らしかった。わたしと真崎がハシャいで館内の写真を撮りまくっている間に、ナカノちゃんは受付などを済ませてくれた。

お部屋でくつろいでから散策。変な建物を見つけては写真を撮りながら歩く。どこの温泉街もだいたいそうだと思うけれど、温泉街というのは何だか妙に色っぽい魔力のようなものがある気がする。別府もそうだったなと思った。

夜になってからは「温泉バル」というものに行った。企画に参加しているお店で回数券を渡すと、ご飯が食べられたりお酒が飲めたりするというもので、それを使って飲んだり食べたりをして、旅館に戻って温泉に浸かる。温泉では1時間以上も仕事とか結婚とか出産の話をした。何を話したかはあまり覚えていないけど、わたしは「不妊検査はしておいたほうがいいよ!」と手をグーにして2人に強く勧めた。

部屋に戻ってから、酔っ払って「ライターって呼ばれるのが嫌なんだ」という話をした。嫌なんだというよりは、多くの人が考えているライターとわたしの考えているライターがだいぶ違くて、そのことが不便だし、居心地が悪いなと思っている。そう言うと、2人は一緒に新しい名前を考えようと言ってくれて30分以上も練ってくれたけれど、特にいいものが出てこなくて、とりあえず、今度何か聞かれたら「文筆業と企画業」という説明をすることにした。いい名前ないかなぁ。

名前の話をしたあとの記憶はほとんどなく、「そろそろ寝るね」と言って、勝手に会を終わらせて、1人布団に潜ったことだけは覚えている。旅館の布団は糊がきいていて、気持ちがいい。固いシーツに鼻を何度かこすりつけて眠った。

2月23日(金)

朝起きて、まだご飯が残っているような感じのお腹のまま、朝ごはんを食べにいく。寝ぼけながらご飯を食べて、2人は温泉に行った。わたしは原稿を少しだけ進める。

チェックアウトを済ませて、ナカノちゃんの運転でオシャレな古本屋さんに行った。わたしも真崎も大興奮で、真崎は真剣な顔をして『死について』という本を読んでいて、ナカノちゃんはインテリアの本を、わたしはエッセイ本を何冊か買った。

そこでの時間は居心地が良くて、気づいたらもう帰る時間になっていた。真崎とはその古本屋でお別れをして、ナカノちゃんが高速バスの停留所まで車で送ってくれた。大人になってから友達と旅行することとか、一緒に泊まることなんかほとんどないから、もっともっとこういうことをやっていきたい。

バスに乗ってしばらくすると、原稿の修正依頼の連絡が入る。いくつかの原稿修正を終わらせて納品したところで新宿に着いた。というより、バスの中からもう東京だったな。

業務委託先に顔を出して、家に帰る。恋人さんにLINEをしたらご飯をつくっていてくれているとのことだった。

プロポーズしたときは「ここはわたしの家だから、家賃は払わなくていいから、わたしがどうしても1人になりたいときは2~3日出て行ってね」という約束だったのだけど、恋人さんは空気になるのが上手なので、そうなったことは1度もない。わたしと一緒に暮らせる人がいるなんて思わなかった。別に“進んでいる”結婚をしたつもりはないけれど、これではまるで普通の結婚だなと思った。

ご飯を食べてから、原稿をした。土日はほとんど仕事ができない。やれるところまではやっておこう。

2月24日(土)

夜遅くまで起きて原稿をやっていたら、朝はダラダラ寝てしまって、気が付いたら11時くらいになっていて、そこからご飯の準備をのろのろしていたら昼を超えてしまった。

今日は恋人さんと一緒に、北海道にあるわたしの実家に行く日だ。お正月も帰っていないので、わたしにしては久しぶりの4カ月くらいぶりの帰省になる。

恋人さんはシャワーを浴びているとき、4回もドアを開けて、「今日さー」と実家に行ってからの話をしていた。緊張しているのかもしれない、当たり前か。

みいちゃん用にエサとお水をこんもり盛って置いておく。みいちゃんはおばあちゃんなので、目も鼻も悪くて、エサの場所がときどきわからない。ちゃんと食べるかなと少し不安に思いながら、パッキングをして家を出た。

モノレールに乗って羽田空港に向かっている間、小さいときに飛行機が好きだったんだ、という話を恋人さんがし始めた。でもね親父が好きなだけで、僕が好きなわけじゃないからね、と言いながら、モノレールの窓から見える小さい飛行機の影を目で追ったり、あれはなんとかという飛行機なんだよと説明したりしてくれた。

飛行機に乗ってからも、飛行機の羽がどうだとか何だとか、珍しくおしゃべりになっていて、1番窓際に座っているわたしの前まで乗り出して、シャッターを切りまくった。富士山が見える、と後ろのお客さんが騒ぎ出したら、恋人さんはすぐにシャッターを切って、「くそ! 遠い!」と言いながら、レンズを変えて、またパシャパシャと写真を撮っていた。わたしは恋人さんのお父さんという人に会ってみたいなと思った。

飛行機が着くと、お父さんとお母さんが迎えにきていた。いろんな話をしながら、「平和園」という地元民に大人気のジンギスカン屋さんに行く。喋るのはだいたいお母さんで、お父さんはお母さんと話し、恋人さんもお母さんとしゃべっていて、お母さんが通訳さんみたいになっていた。

ジンギスカン屋さんに着いても恋人さんはガチガチに緊張している感じだったので、早くお酒を飲ませてあげたいなと思った。お酒を飲めば、こういうことのだいたいは解決する、気がする。

そうこうしているうちに妹のかえちゃん家族と弟の優太郎が来た。もう1人妹がいるのだけど、今はバリにいるとかで帰ってこられなかったみたいだ。かえちゃんは19歳のときに結婚をして、妊娠をして、20歳で出産をして、立派にお母さんもやっている。わたしよりも3つも下の妹だけど、とても尊敬をしている。

優太郎は高校1年生で、優太郎の名づけ親は、実はわたしだ。本当は「太郎」になる予定だったのだけど、佐々木太郎じゃあんまりだ、という話になって、当時小学校5年生のわたしが「じゃあ“優しい”をつけて、優太郎っていうのはどう?」と言ったら、決まってしまった。一緒に暮らしていたのも小学校1年生までなので、優太郎のことはあまりよく知らないのだけど、優しい子だなとは思うので、いい思い付きだったのかもしれない。

みんなで乾杯をして宴会が始まる。よそよそしい雰囲気の中、かえちゃんの子どもさんがよくわからないことを言って場が和んだ。

お父さんは1杯目のビールをすぐに飲み終えてしまうので、最初から2杯頼んである。ずっと前からそうなのだけど、年をとってもその習慣が変わることはない。

そういえば、小さいころは週末になると、家族みんなで「つぼ八」に行っていた。北海道の中堅都市の隣のベッドタウンにある実家のまわりには、当時はまだつぼ八くらいしかなくて、お父さんは「何でも好きなものを頼んでいいよ」と言い、わたしたちが喜んであれこれ頼んで全部食べ終わると「みんな、こんなに食べられるようになったんだねぇ、お父さん幸せだ」といつもいつも言っていた。

かえちゃんが恋人さんのほうに来てくれた。「あの、Twitterでいつも拝見しております。それからわたしたち、同い年ですよね」といったようなやりとりを2人でし始める。かえちゃんは愛がとても強いので、好きな人のつぶやきをもれなくチェックしている。それでいて思慮深い人なので、いきなりフォローして気持ち悪くないかどうか、かなり迷ってからフォローさせてもらった、というようなことを言っていて、かわいかった。

シャイなお父さんが恋人さんに喋りかけるようになったなと思ったら、焼酎のボトルがもうあと少しになっていた。お母さんはお母さんでワインのボトルが空になっている。昔は心配したときもあったけれど、この年になっても飲む量が変わらないというのは、かえって安心できることなのかもしれない。恋人さんもレモンサワーも何杯か飲んでいて、なんとなく表情がゆるくなっていた。お酒がこの世にあってよかったなぁと思った。

家に帰って、缶チューハイや料理を広げて、宴会の続きをやる。お父さんとお母さんは思ったよりも早く眠ってしまった。改めて、実家に恋人さんがいるのが変な感じだし、すごく自然な感じもするなぁと思いながら、わたしたちも眠った。

2月25日(日)

朝起きて、近所のじゃがいも畑でスノーモービルに乗りにいった。スノーモービルは我が家のもので、冬の間だけ畑を借りている。お父さんがメカ好きで、すごく多いときだとスノーモービルが6台、ほかにも車が4台、バイクは3台、マイクロバスが1台、自転車がたくさんあったけれど、最近はだいぶ減らしたと言っていた(それでも多いけれど)。

最後にスノーモービルに乗ったのがいつなのか、思い出せないくらい久しぶりで、乗らせてもらったらすごく怖かった。恋人さんも怖かったと言っていて、わたしたちは結局2回ずつ乗って、お父さんと優太郎を置いて、さっさと家に帰ってしまった。

午後からは、氷上露天風呂に入りに行こうと言って、みんなでマイクロバスに乗って出かけた。氷上露天風呂というのは、日本で1番標高の高い湖「然別湖」の湖上が凍った上に窯を置いて、お湯を引いたものだ。ほかにも氷でできたアイスバーでホットココアが頼めたり、氷の教会や映画館があったりする。一瞬とは言っても、マイナス20度の中で服を脱いだり着たりしなくちゃいけないのが嫌で、足湯にだけ浸かることにした。お湯が熱いのか、体が冷えているのか、お湯が熱くて、ひゃーと言いながら足踏みをする。

途中でちょくちょくコンビニや道の駅に寄って、買い食いをした。わたしが高学年になって、剣道少年団が忙しくなるまでは、週末になると、車で2時間ほどの釧路のイオンに家族で買い物に行き、そのときもこうやって買い食いをしていた。お母さんが節約しようと思っておにぎりをつくっていくのに、お父さんがコンビニでおいしいものを買ってくれてしまうので、お母さんがよく悲しそうにしていた。今の何が不満だというわけではないけれど、あのころが家族で過ごしていて1番楽しい時期だったなと思う。もう戻れないんだなと思う。

夕方になって家に戻り、わたしと恋人さんだけが家に残って、みんなは温泉に行った。帰ってきたら、お父さんが段ボールいっぱいのお寿司を買ってきてくれて、みんなで食べる。お父さんは今日も早々に寝てしまって、優太郎も自分の部屋に行ってしまったので、居間にはわたしと恋人さんとかえちゃんとかえちゃんの子どもさんとお母さんだけになった。特に印象深い話はないけれど、何となくいい時間だった。

明日の朝にはもう帰るのかと思うと、何だか急に寂しくなってきた。それから、お正月に実家に帰らなかったことも悪かったなとちょっとだけ思った。

名残惜しくて、3時半過ぎまで仕事をした。恋人さんも、わたしに付き合って起きていてくれた。

もう1回、名残惜しいなと思いながら寝た。