谷底本箱煙猫―たからものくらべ

長期滞在者

たかしのたからもののこりぜんぶ2

けんちゃんいもらっただいやぶろっくすこし じぶんでつくったおこさまらんちのはた せんせいにもらったしゅりけん くりすますけーきについていたひいらぎ まだつかっていないふくろいりのようじ ごむのにんぎょう なべのつまみ はずれたばけん こたつのすいっち おかあさんがとってくれた4さいのあしがた

(『たからものくらべ』より)

私はなんでも後生大事にとっておくので、家族から呆れられていた。3世代が住む田舎の家。もの置き場はいくらでもある。私は「思い出」だからと、もう使うことのないものや壊れたものを気兼ねすることなくためこんでいた。5歳の時に誕生日会でもらったキキララのひきだし。箪笥の奥から見つかり母に捨てられる寸前だった兵児帯。ピアノ教室へ行く時のレッスンバッグ。高校生の時授業中にやり取りした手紙(ノートの切れ端)。もちろん教科書は全部取っておく主義だったので、妹が私の教科書をテスト範囲ごとに切り取り、暗記用のペンで緑色に塗りあげた時は激怒した。彼女の教科書は学校に置きっぱなしである。妹は私と違い、物に執着しないのだ。期限のきれた定期券。着なくなった服についていたボタン。道端で拾った木の実。猫のひげ。
ところが、父の死後、まさかの引っ越しである。新居は都会の賃貸マンション、住人は母と弟。私の荷物を入れる場所は’ほとんどない。引っ越し準備。私の名前のついた段ボールが1つ、2つ、3つ……。5つ目で妹から物言いがついた。しかし、私がトラックにこっそり載せたは段ボールの箱ではなかった。家の柱からはがした150センチほどの板である。ある部屋の柱の一つに1センチ厚の板が打ち付けてあり、私達の身長の記録が書かれていた。その柱がある古い建物は取り壊すことになっていた。私は下見に来ていた大工さんに頼んでその板をはがしてもらい、引っ越し当日、家族に気づかれないように荷台に送り込んだ。へへへ、載せてしまえばこちらのもの、ぶうぶう文句を言われながらも押入れの奥にしまいこんだのだった。

さて、ところ変わり学校図書館である。子供らは屈託ない笑顔で様々なものをくれるのだ。「これ、あげる。」といって手渡されるもの。似顔絵。折り鶴。つつじの花。図工の余った時間で作った小さな粘土細工。宝石のかけら(校庭で集めた石英)。へびの抜け殻。何かのたまご(どうみてもどこかの庭の敷石)。事あるごとにいただく手紙の束も加わり、私の所有する「もの」は右肩上がりに増えていく。

 

『たからものくらべ』では、お姉ちゃんと弟が、自分達の宝物を交互に見せ合います。はたから見たらがらくたとしか思えないもののオンパレード。お母さんの旧姓のはんこ。使用済みテレホンカード。トイレットペーパーのつつ。さざえのつぼやきのふた。本を紹介すると、子供達からは「えー」「そんなのいらないよ」などと声が上がるのですが、最後に「みんなの宝物を教えて」と聞くと、本に負けず劣らずの珍品が飛び出します。魚の骨。梅干しの種。ガムの包み紙。お菓子の空き箱。フライドチキンの骨、というのもありました。そうそう、図書館で本を修理していると、補修用テープの切り落としたものをもらっていく子がいます。私から見れば、1センチほどしかない短いテープは何の役にも立たないのですが、彼にとっては、「本をあっという間にきれいに直す魔法のテープ」であり、宝物なのでしょう。

☆今月の一冊:『たからものくらべ』(杉山亮 作・中西恵子 絵/福音館書店)
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