谷底本箱煙猫―魔女がいっぱい

長期滞在者

子どもたちが、たっぷりクリームのかかったイチゴをお皿に山盛り食べることができたら大喜びするように、ほんものの魔女は、子どもをぺちゃんこにつぶすのが最高の喜びなのだ。
一週間に一人は消すぞ、と決めていて、それができないと不機嫌になる。
週に一人で、年に五十二人。
つぶして、ひねって、さっと消せ。
それが、魔女のモットーだ。

(『魔女がいっぱい』より)

夏休み前最後の図書室での時間。今日の本は何だろうと、待ち構えている4年生。今日は、「ほんものの魔女」についての話をする。まず、魔女はどんな姿をしているか聞いてみた。黒い服を着ている、とんがり帽子をかぶっている、かぎっ鼻である、など。だいたい予想通りである。心の中でにんやりしながら、しかしそれをおくびにも出さずに、私はこう言う。
「実は、ほんものの魔女は、みんなと同じような姿をしていて、なかなか見分けることができません。そして、やっかいなことに、子どもが大嫌いではらわたが煮えくりかえるほど憎んでいて、縄張りの中の子どもは消してしまおうと思っているそうです。」
空気が一瞬凍りついたかと思うと、ざわめきが広がった。
「ふきさん、それ本当の話?」
「えっ、じゃあ、ふきさんが魔女かもしれないじゃん。」
4年生でも怖いのである。紹介している本は物語ということも知っているのに。私は、ひらりと現実世界の壁を越え向こう側の世界に遊んでいる子どもらをまぶしく感じながら、話を続ける。
「この本には、ほんものの魔女の見分け方も書いてあります。主人公のおばあちゃんが教えてくれます。これからみんなにも話すので、しっかり聞いてね。
まず、第一に、ほんものの魔女は、いつ会っても、必ず手袋をはめているということ。なぜなら、魔女には指の爪がなく、代わりに細長い曲がった鍵爪があり、それを隠さなくてはいけないから。
2つ目。ほんものの魔女は、禿げ頭を隠すためにいつもかつらをかぶっている……。」
全部で6つの見分け方を説明した。皆真剣である。
「手袋してるなら、夏はわかりやすいな。」
「かつらなら、ひっぱればいいね。」
「でも、ひっぱってる間に消されちゃうよ!」
「……。」

さて、物語の続きです。主人公の「ぼく」は、おばあちゃんと夏休みの旅行に行くのですが、宿泊先のホテルに、ほんものの魔女の特徴を持っている人がいるではありませんか。それも何百人も!「ぼく」は、魔女の集会に出くわしてしまったのです。魔女に見つかってしまった「ぼく」はネズミに変えられてしまいました。

もうすぐ夏休みも終わりです。あの子達は、ほんものの魔女を見わけられたでしょうか。ネズミに変えられてしまった子はいないといいなと願いつつ、新学期を楽しみにしているところです。
最後に、皆さんも気になるでしょうから、ほんものの魔女の見分け方をすべてあげておきますね。
【ほんものの魔女の見分け方】
1.いつ会っても手袋をはめている。
2.禿げ頭なのでかつらをかぶっている。
3.鼻の穴が大きく、ふちがピンク色で曲がっている。
4.目の中の黒い点の色がくるくる変わり、火や氷が踊っている。
5.足の指がない。
6.つばが青い。

どうぞ、魔女に捕まらないようにお気を付けくださいませ。

☆今月の一冊:『魔女がいっぱい』(ロアルド・ダール 作 クエンティン・ブレイク 絵 清水達也・鶴見敏 訳/評論社)