イルボンと小鳩ケンタの空席商会
◇出てくるひと(順不同・敬称略) イルボン(gallery yolcha車掌/詩演家):以下、車掌 小鳩ケンタ(詩人):以下、鳩 森綾花(画家/イラストレーター):以下、森 福永祐美(イベントオーガナイザー):以下、福 むらなかゆかり(絵描き):以下、む 城下浩伺(画家):以下、城 ◇◆◇◆◇ 【2014年2月の相席】 2014年2月8~11日、yolcha恒例のバレンタイン喫茶「路地裏ショコラ党…
長期滞在者
ブラジルへの旅立ちは、わたしにとって未知の世界への旅立ちだった。知らずに育った故郷へ戻って、その国の文化や価値観、言語を一から学び直さないといけなかった。泣き崩れる父と成田で別れたとき、わたしは多分、Keikoとしてのわたしを日本に置いてきてしまったのだと思う。ブラジルに到着したとき、赤ん坊のように、ぽんと新しい世界に投げ出され、まるで裸の無防備で。わたしは、十五で再び、赤ん坊になった。あの26時…
当番ノート 第13期
微熱が続く中、とりとめの無い事を考え、思う。 何をいったいとりとめも無く考え、思う? そこにはやはり何も無い、なーだである。 無の響きだけが頭と体をこだまする、そんな状態でも手は動き続ける。 なんて事は無くやっぱり寝てしまう微熱の今日。
当番ノート 第13期
静岡Freakyshow牧野俊太です。 今月はやけに忙しくて先週、先々週と更新をサボりました。 運営の方、ごめんなさい。 2回サボって気付いたらもう最後の更新でした。あいや~! 最後なのでちょっとだけ真面目に書きます。 僕はいわゆる「ライブハウス」と呼ばれる空間で働いています。 ライブが無い日は適当にBAR営業をやっています。 ヒマながらも、夜な夜な奇人・変人がやって来ます。 奇人・変人は皆やさし…
当番ノート 第13期
俺はロシア人だ。つまり、明日がどうなるか分からない、価値観が災厄なやり方で3回も変わった国の人間だ。今日あなたが元気で散歩してるとしても、明日は路地裏のゴミ同然になっているかも。今日はお金持ち、明日はホームレス。全てのために戦うことを余儀無くされている。バスに乗ることさえ社会戦だ。人の視線を常に気にしないといけない国、理由なき笑顔はアホの証拠とされてしまう国だ。女性がナンパに慣れていて、何か面白い…
虫の譜
JR東海「うまし うるわし 奈良」キャンペーンに當麻寺(たいまでら)が特集されていた。電車の中吊り広告を見て、すぐに写真を撮って興奮気味に父にメールした。そこは20年前、父に何度も連れて行ってもらったところで、小学生の私にとってはその名を聞いただけで駆け出したくなるほど心が沸き立つ魅惑の地だった。寺の近くのとある施設の傍にある、アオミドロがたんまりと繁った何の変哲もない小さなコンクリートの側溝が、…
当番ノート 第13期
「海の水はどこで生まれる?」 広い理科室。班ごとに座った丸椅子と大きな実験用の机越しに、教壇を見やる。今からマジックでも披露するかのように手を合わせ腕まくりをした先生がそう言った。 おのおの生徒は答えを口にする。川の上流、雨、海の底。 低いゆったりした声で先生は答える。 「全部違う。生まれない!」 きょとん。 質問の意図も答えもわからずざわつく生徒を前に、説明がはじまる。 水のもとになる原子の総量…
長期滞在者
2013年4月4日 今年の春はSNSとかでたくさんの人の目を通した桜をたくさん見た。 私はどこにも見に行かなかった。唯一の花見も雨で潰れた。 あ、もちろん、何度も目には入ったけれどね。 なんだかそれでいいと思った。 誕生日がくると、そろそろ検査に行かないとって気づく。 桜が咲くと、ああ、そういえば検査に行かなきゃって思い出す。 GWがくると、これ終わったら検査行こう、って思う。 碧が輝きだすと、…
当番ノート 第13期
描くことは耕すことに似ている。わたしの脳の中の畑。翻って、読むことは、体を使って歩くことに似ているかもしれない。だれかの作った庭園。道のカーブ、植物の配置、木立の陰、遠くに見える四阿へ期待を馳せながら歩く。迷子になることは、新しい地図を作ること。同じところへ行くつもりで、ちがう道へ出てしまうこともある。設計ミスによって、見えているのに、噴水に辿り着けないこともあるだろう。 そぞろ歩くのに、最短…
当番ノート 第13期
photoは「光の」 graph は「かかれた(もの)」 「つまりー、光によって描かれたもの、が写真ー、なんだよね。」 写真やカメラの小難しい説明の中から、これだけは突き抜けて聞こえてきた。 ぼーっと聞きながら、私が考えていたのは 言葉あそびのようなこと。 「ひかりによって」って、太陽なんかの「光」を指すのはもちろんだけれど。 自分の写真にかっちりとその言葉をはめるには、少し足りないような。 教科…
当番ノート 第13期
もう一度くらいは、どこか異国に住みたいと思い続けて早八年。 気持ちは盛り上がったり、下がったりとめぐるめぐる。 外国人になる大変さよりも、気楽さの方ばかり思い出すのは それなりに時間が過ぎたって事なんだろうか。 制作する事により、ここではない何処かへ向かう気分は存分に味わえるけれど 違う空気の中から何処かへ向かうのも楽しいんだよな〜 Dust of Eden
当番ノート 第13期
雨が降るといつだって、単純なわたしは洗い流してもらったと思う。 アスファルトに成された水の道とたまり場が、こんな凹凸があったのよと両手を広げるよう。 でも今日はその声に応えることもなく、のろのろと歩みをすすめた。 目の前の信号が赤。 横断歩道を前にどこを見ても灰色のビル街の隙間立ち止まる、濡れ鼠。 ぼんやりしていると、たん、と、 透明ビニールの傘越しに女性がわたしを追い越していくのを見る。 わたし…