長期滞在者
気づけば、五月ももう終わり。新生活を初めて二ヶ月が過ぎようとしている。なにもわからないところからスタートしたから、とにかく必死でやってきた、一生懸命に。それなのに、最近少し気が沈みがちだ。遅れてきた五月病だろうか。常に、なにもうまくいっていないような気がしているし、これでいいんだろうかって、不安な気持ちがゆらゆら、ぐらぐら。電車に揺られているとき、家の中でぽつんとひとりのとき、夜眠りにつくとき、ま…
当番ノート 第14期
二ヶ月間ってあっという間。 最後の投稿なので、モノプリントを始めた最初に描いていたラインドローイングを描いた。 モノプリントの、薄くて繊細な線とアクシデントで出来てしまう点々が、私が描く線に感情を足してくれているような気がして、地味だけどこの手法が好きです。 これからもブログは毎日アップしていく予定なので、ぜひみてください。 二ヶ月間ありがとうございました。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー…
当番ノート 第14期
出かけ先で猫たちに出会うとついシャッターを押してしまう。 その場に住みつく猫と、風景とがマッチしていて、どこか物語を感じる。 この猫はいったいどこで生まれて、どこからきたんだろうとか、 猫の世界では人間関係のごとく猫関係などあるのだろうか、とか。 猫って一匹狼のイメージはあるけれど、よく何匹かでたむろっているところを見かける。 昔から、猫会議だ、とか聞くけれど、見た感じわりと、京都の賀茂川のカップ…
当番ノート 第14期
何日か振りの休日。しばらく仕事が立て込んでいて、のんびりとした時間を過ごせていなかった。近所で遊んでいる子供達の声が、この薄暗い寝室まで届いているけれど、僕はときおりまどろみながら、ここ1年くらいに起こったことを反芻する。 夢とも覚醒とも言えない半透明な時間が、ゆっくりと意識を浮き沈みさせる。 恋人の実家を訪ねてから数ヶ月後。首都圏から少し離れた山間の街に仕事が決まり、生活の拠点をそちらに移すこと…
当番ノート 第14期
またはじまる 平吹 正名 あてどなく自転車を走らせていた 知らない道 何もはじまってない一日のはじまり 雑木林とも名づけられない恐怖 瞬間的に淫靡な空間も乾いた笑い声 戸惑う間もなく 歩くことに真剣な老人 雪の日に出会った 頼りないきみの姿を重ねる 予感の背中 透明な会話 笑っちゃう雪道 差し出し忘れた手 二つに分かれる道 振り返りそうな足音 シンクロする わたしたちの音の…
当番ノート 第14期
早いもので最終回となってしまいました、このケーキシリーズ。 これまでお付き合いいただき、本当に有難うございました。 少しでも束の間の息抜きになったならば嬉しいです。 今回は最後、ということで奮発して フルーツ盛りだくさんのタルト・オ・フリュイ。 しかも最後だからね、とちゃっかりホールを購。 小さい頃からフルーツが沢山乗ったケーキには憧れがありました。 カットのケーキを数種類頂いたときは 私はどれで…
当番ノート 第14期
このアパートメントの連載を開始してもうすぐ2ヶ月になる。 お話を頂いた時はとても長い期間に感じたが、振り返ってみるととても短く感じる。 一瞬という表現をしてもいいくらいだ。 飛躍した話をしてみよう。 私は33年生きているが、振り返ってみるとやはりこれまでの生も一瞬だったように思う。 いや、いろいろ思い出すと一瞬ではないことは理解できる。 小学校の時の放課後の時間は永遠にあるかのように長かったし、 …
当番ノート 第14期
1989年7月31日 最高気温29℃ 最低気温23℃ 快晴 その日はとても気温が高く、蒸し暑い日であった。空調の効いた部屋で、レモンの輪切りを入れた薄荷水を飲みながら考えることは南極での極寒の日々のことばかりだった。年間を通して気温がプラスになることはおろか、零下30度を上回ることのない天然の冷凍室。無菌室。フランスでの生活にも慣れて来たところだったが、毎日夜眠りにつく頃には頭上に南極への憧れが…
当番ノート 第14期
最近断捨離する人が多いけど、私はコレクタータイプなのでそんな事絶対できない。 物が捨てられないというわけではなくて、すごく好きなものしか持たないようにしているので物を整理するときは捨てられないものばかりという感じ。 でも小さい頃から引っ越しの際は物を最小限に減らさなければならなかったし、やっぱりボロボロになってしまった物とか全く着ない服を持ち続けても仕方ないから結局捨てなきゃいけない時はある。 最…
虫の譜
ハンミョウの造形は突き抜けている。 タマムシ以上ではないかという極彩色に、細くともバネの効いていそうな脛の長い脚、ギョロリと飛び出した人相の悪い目。そして何よりグッとくるのが、三日月形にカーブした大きなキバだ。これは肉食昆虫の口に取り付けるにはあまりにも「ベタ」で、もし「空想で獰猛な虫描いてみろ」と言われてこれを出せば、創造力が無いと思われても仕方ないレベルだ。こんなB級パニック映画的なキバ無いよ…
当番ノート 第14期
少年の友達は一羽のフクロウ。 少年は、フクロウの瞬きを忘れたようなまん丸の目と、微動だにしない姿が好き。 二年前の冬のある日、二人は街の小さな動物園で出会った。 フクロウは、足首をぐるぐるの紐に巻かれて、小屋の隅にたたずんでいた。 そんなフクロウをみた少年はなんだかかわいそうで、黙ってフクロウをさらってきてしまった。 それ以来二人はいつも一緒にいる。 白い雪の街で二人はまるで双子…
当番ノート 第14期
カーテンの隙間から差し込んだ光が、所々色褪せた青緑色の絨毯に反射していた。その光は朝日と呼ぶには少し明るすぎていて、時間は午前の半分を少し過ぎてしまっているようだった。高速道路の集中工事というハプニングに巻き込まれ、予定よりもだいぶ遅く(日付が変わる前頃)にホテルに到着した僕らは、軽く温泉に入って冷えた体を温めた。そのホテルはよくあるビジネスホテルチェーンではあったけれども、大浴場には天然温泉が入…