長期滞在者
琵琶湖の浜で寝転んで、ゆっくり、ゆっくり何度も深呼吸するが好きだ。何も語らず、ただぼんやりと時間が過ぎるのを眺めながら、止まらない波音を聞く。目を閉じて、砂浜と秋の風の冷たさを感じる。 人と関わり合うことも、もちろん大事。だけど、ふたりぼっちで、静かに、ひたすら無口にたたずむのが、ほんとは一番好きだ。わたしたちには、必要以上の言葉はいらないから、互いの体温が空気ごしに伝わるくらいの距離感で、重力を…
虫の譜
(上)シバスズ Polionemobius mikado (下)マダラスズ Dianemobius nigrofasciatus マダラスズは体長6、7ミリの小さなコオロギで、鳴き声さえ知っていれば都市部でもいたるところにいるのが分かる。6月になってかれらが鳴き始めると、今年も虫たちの季節がやって来た!と盛り上がった気分になる。その鳴き声は柔らかく繊細で、それでいて「この小さな体からよくも」と思わ…
当番ノート 第16期
こんなことをここに書くのはどうかなぁ、と自分で自分をなだめていたんだけど、最後だからいいか、と吹っきって書いてみようかと思う。ぼくは「くらし」を感じないものがとても苦手だ、というか嫌いだ(あまり苦手とか嫌いとかネガティブな言葉の話はしたくなかった)。 じゃ「くらし」ってなんだろう、と言えば、そこはとてもむつかしいことなのだけど、だれかの個性を抹殺したり、仕事ばかりの日々で心と時間を消費するだけだっ…
当番ノート 第16期
ヒカリエというショッピングビルが渋谷にあります。「渋谷から世界を照らす」というコンセプトの下、アートからブランド服飾まで多様なコレクションが揃います。その8階に並ぶのが民芸品です。民芸品とは、民衆の工芸品の略、つまり器や布巾など、普段使いの品物のことです。ヒカリエは47都道府県もあまねく照らして、各地に伝わる民芸の良さを訴求しているといえます。 http://www.hikarie8.com/d4…
当番ノート 第16期
いつになっても「師」の存在は大きい。学生時代にお世話になった恩師は、ふとした瞬間に、また会いたいなと思い出す。彼らからもらった言葉はいまも自分のなかに根付いてて、目の前のことに向けてのエネルギーになっていたりする。学校に限らず、学校外でも師といえる人はいたし、もちろん社会人になってからも新しい師に出会ってきた。 バーテンダーと職業についてから、この道における師匠をみつけた。もうずっと会えてはいない…
長期滞在者
作品を創ることは 乾いた土に水を齎す、慈しい雨のようなもので 心が干涸びそうになっても どうか一滴でも雨を、と それは空を仰ぐように ぼくは作品に向かうのです —————————————————&…
長期滞在者
叙情、というのは多少因習的な色乗りのしてしまった言葉で、誤解されがちなんですが、僕は心動くもの、の総称としてざっくりと使っています。ざっくりしすぎですね。 今まで中村浩之さんとの二人展(『叙情寫眞』2009 )と自分の個展(『重力と叙情』2010 )のタイトルにしました。 別に「叙情」でなくてもいいんですが、他にしっくりくる言葉がないので、便宜的に仮りそめに使っているだけです。白状するならば、むし…
当番ノート 第16期
ウォーホルはポップアートの先駆者といわれ、唯一無二のonymousな存在といえるでしょう。 http://www.huffingtonpost.jp/2014/03/12/andy-warhol-15minutes-eternal_n_4949423.html 「アンディ・ウォーホルの全てを知りたければ、絵や映画や僕の表面だけを見ればいい。そこに僕がいるから。隠されていることは何も無いよ。(…
the power sink
こんばんは!今回も特に意味のない絵を載せます。ではよろしくおねがいします! 内蔵がもぞもぞして、頭がカッとして、要するにイライラしていてあんまりいい状態じゃない 雨が降っていて、りっぱなクローバーがあって、自分は何でか空中に逆さで固定されているんさ 貧弱そうな人に心臓をパンチされる。でも僕は箱に入っている おじいさんが草むらに隠…
当番ノート 第16期
人から聞いて「はぁ、なるほどなー」と思った話がある。人間は「土の人」と「風の人」に大きく分けることができるそうだ。土の人は、その土地にずっとくらし続けている人。土地に根ざして、土地を守って、仕事や生活を営んでいる人たち。反対に、風の人は、同じ土地にとどまらず、さまざま土地を動き回る人たち。土地から土地から移動するからこそ、土地にある情報やものを持ち運べる人でもある。 話はさらに続いた。土の人がある…
長期滞在者
とある事情でいま「写ルンです」が仕事場に100個届いておりまして、ぼくも1個使ってみました。あまり話題にもならないのですが、コンビニに行くと、「写ルンです」は、ほぼ間違いなく今でもコンビニに行けば買うことが出来ます。 早速仕事場の周りをちょっと写して回ろうと出かけたところ、15分もしないうちに、1本撮り終わってしまい、今2個目のパッケージを開けたところです。果たして何が写っているのか、ちゃんと撮れ…
当番ノート 第16期
ミリオンダラー・ホテルは、かつてロスに実在した豪華ホテルでしたが、すっかり凋落し、いまや廃墟になっています。このホテルを舞台に繰り広げられる映画が、ヴィム・ヴェンダースの『ミリオンダラー・ホテル』です。住人は、ビートルズの一員だと言い張る人や先住民の長だと思い込んでいる自称画家など、夢や妄想に破れて精神を病んだ人ばかりです。社会の外で底辺の暮らしを送っている訳ですが、皆この状態を良しとはしていませ…