当番ノート 第17期
みなさん今晩は。妄想J-POPのお時間です。 諸事情により、投稿が遅くなったことをお詫び致します。 2か月やらせていただいたこの妄想J-POPも今回が最後です。 この企画を快く受け入れていただいた管理人の森山君、本当にありがとうございました。 静岡の音楽情報サイトbeatfull(←クリック)にも取り上げていただいて、こんなに反響があるとは全く予想していませんでした。むしろ誰も読んでないとすら思っ…
長期滞在者
十数年前、最初に脳腫瘍が見つかったのは自覚症状が出たわけでもなく本当に偶然だった。 このことは本題ではないからさっくりとお話しすると、あるお天気のよい日、都内某公園のベンチで横になり日向ぼっこ兼昼寝をしていた私は熟睡しすぎて本気の寝返りを打ちベンチから落ちてしまい、しこたま左頭部を石畳に強打してしまったため顔がお岩さんのように腫れあがり病院に向かうことになった。 「あー、こめかみにヒビ入ってるねー…
当番ノート 第17期
世界の片隅の扉の向こうに、その町があり、その宵闇がある。 ”宵闇収集屋” 住所:ツバメ町 V地区 霞の小路 ツバメ町の中でも特徴的な店、有名な店を住民に聞いて回ったところ、”宵闇収集屋”なる男性の名を挙げる人が多かった。 町の南西の端に位置するここは店ではない。看板もない個人宅であるため、内部には入れないが、今回本人から特別に話を聞くことができた。ちなみに、宵闇が必要なときはL地区にある…
当番ノート 第17期
音楽は時代の夜の音なのだとよく言うけれど、それはあくまで僕がそういう生き方をしてきたからそう思うだけかもしれない。僕は京都で4年間、音楽をしていたし、曲を作っていたのは、大抵、夜だった。 人は、夜になると感覚が研ぎ澄まされるのかもしれない。でも、それはおそらく長い人類の歴史の中で、夜が、本当に暗闇で、その中で敵の存在に脅かされながら生きていた悲しい記憶が、身体に染みついているからだろうと思う。夜の…
長期滞在者
メリーゴーランド京都でやった、夏の個展が無事に終わって、次を描き始めたいのに空回りが続いていた。ただ疲れていて、励まされても誉められても、自分の中の部屋がどんどん狭くなる感じを何に喩えればいいのでしょう。大袈裟だが、これっぽっちも余裕のない自分があるだけだった。 わたしは、ちょうど逃げ出したリンゴのように母から逃げ出して、別の穴にストンと落ちる。アリスのウサギ穴に見立てたいところだが、母は、わたし…
当番ノート 第17期
マルはいつも、呼ぶ前にそばに来てくれます。 目が合うか気配を察するかして、すぐに来ます。 そして、遊んでほしい時はボールをくわえており、おやつがほしい時は手をなめます。 私はとりあえず頭をなでてあげます。 呼ぶ前に来るので、マルに「マル」と呼ぶことがあまりありません。 家族との会話や友人にマルについて話す場合に「マル」と口にすることがほとんどです。 その時本物のマルはたいていその場にいません。 本…
当番ノート 第17期
これまでの連載をお読みいただきありがとうございました。 はじめてアパートメントの連載のお話しをいただいたときは「書店員はひとり言を話す人が多い」だとか、奇人変人が書いたマニアックな本の紹介だとか、そういったくだらないことを書きたいなと思っていたんですが、ツマが妊婦になってから考えたことを連載のテーマにしました。 なぜこのテーマで書くことにしたかというと、同じ状況にある人の話をあまり聞いたことがなく…
Mais ou Menos
ーーーーーーーーーーーーーーー 2014.11.9 (日) まちゃんへ まちゃんと往復書簡を始めるに当たって、自分はまちゃんの文字を初めて見て、その文字のことをとても好きになったんやったな、ということを思い出した。自分は、こういうとおかしいと思われるかもしれないが、他人の文字を見るのが好きである。字を見ると、その人のことが見えるというか、文字には“その人”が表れるからである。だから、まちゃんの書く…
当番ノート 第17期
世界の片隅の扉の向こうに、その町があり、その三叉路がある。 ”ある化け猫” 住所:ツバメ町 L地区 卵の小路 ツバメ町は、曲がり角だらけだ。複雑に折れ曲がった小路の数々は、幾重にも連なる角を成している。一つ手前の角を曲がるか、もう一つ先の角を曲がってみるか、左に折れるか右に折れるか、それで辿り着ける場所は全く違ってくるので、旅行者はくれぐれも留意されたし。 しかしながら”外”からの干渉や出…
当番ノート 第17期
僕と彼女は休日になると、大抵どこかにご飯を食べに行くのだけれど、その日はふらっと高速に乗り、京都まで行った。その帰り、やっぱり何かご飯を食べて帰ろうということになった。なんとなく二条か三条通りあたりにしようと決めて、駐車場を探すためにくるくる車で周っている時に、店の明かりだろう、なんとなく雰囲気の良さそうな店を見つける。そして、その店からそれほど遠くないところに車を停める。 夜の河原町通りは、三条…
長期滞在者
強く雨の降る朝、女子学生たちが乗った自転車が十台ほど次々と、全員学校指定らしい同じグレーに赤のラインのレインコートを着て、透明の傘を差して、ゆっくりと僕を追い抜いていった。 じっとり沈んだ湿度の中を、続々と通過していくグレーの集団の後ろ姿が幽玄で映像的にとても美しく、思わず大雨の中足を止めて見送った。 見惚れることしばし、彼女らが雨の向こうに遠ざかってから、あ、カメラ、と馬鹿な顔して僕は突っ立って…
当番ノート 第17期
マルの散歩はいつも日が暮れてからです。 暗くなると犬の散歩をしている人がぐっと減るからです。 マルは全くしつけがなっていないので、よその犬に近づいたとき吠えるとか噛むとか 何をするのか不安なので、犬とすれ違う時は極力近づかないように綱をぎゅっと引っ張ります。 それがなかなか疲れるなぁと思っていて、人のいない夜の散歩がほとんどになりました。 ときどきなんとなく夕方散歩に行くと、同じように散歩している…