当番ノート 第36期
ふと、携帯に残っている服飾の学生時代からの写真をざっと見返してみた。 たいがいそれらはどれも微笑ましい。 スマートフォンで写真を撮るというのは基本的には良い思い出を残すためにするし、思い出したくないことと関連するものは後から消してしまえるからというのもあるだろう。 楽しかったこと、感謝していること、心動かされたことをたくさん思い出せる。 ものを作る純粋な喜びを知ることができた。 学生…
長期滞在者
「判断基準が外にある不安をどうにかしたいよね。もっと素直に生きて。」 そう言った彼のことを、知り合ってからの長い間、わたしは“判断基準”にしていた。 彼の好きなものを、わたしも好きになりたかった。 今なら分かるけれど、それは、彼に好かれたいとか、同じものを共有したいという動機とは、多分違った。 知り合った頃に彼が教えてくれた生き方や、表現は、自分にとっても必要なものではないかと感じたからだ。 その…
当番ノート 第36期
生姜の入ったお茶の美味しい季節。すでに新年に入ってから今日で18日が経過。日に日に寒さが深まりながら、でも日も長くなってきて春が近付いてきてもいるのを鼻にツーンとくる冷気とともに感じています。 自然の中で、朝早く起きて瞑想や座禅をして、カフェイン・アルコール・五葷を避けたピュアな菜食料理をいただいて、のんびりゆっくり過ごした中で、徐々に自分の意識が透明になっていったように感じてとても幸せだった。 …
長期滞在者
展示スペースの中に入る手前に、もうひとつの小さな展示空間として「リコメンドウォール」というスペースを設けています。小伝馬町の移転後に新たに設けたスペースで、小さな棚と4.8mの壁を使って、毎月一人の作家さんを特集するというコンセプトです。 このスペースの良い点は、コンパクトなスペースゆえに、低予算でありながら、良質な作品を長期間にわたり展示することで、確実に作品のこと、作家さんのことをお伝えするこ…
当番ノート 第36期
昨年末、連日にわたるラジオの通販番組の「カニいかがですか?」攻撃に私は曝されていた。 曰く、「お送りするのは、氷の重さは除く正味のカニの重さです」とか、 曰く、「年々水揚げ量が減り、ご用意するのが大変なんです」とか、 曰く、「水揚げ量が減っているので、近年ますます高値になっているんです」とか、 曰く、「そんな貴重なカニを3キロに加えて、もう1キログラムおつけします」とか、 曰く、「これだけのお値段…
当番ノート 第36期
1995年の1月にフリーランスになって1年半ほどが経っていました。 仕事は順調でしたが、少しずつ追い詰められているような気持ちになっていました。 しかも、何に追い詰められているのかもわからずに。 ずっと同じことをやり続けることが苦手で、いつも新しい何かを作り続けていたい。 舞台という非日常な時間のなかでずっと暮らしていきたい。 そんな気持ちもあって舞台照明家になりましたが、人生の全てを夢の時間で暮…
長期滞在者
「音楽がわからなくなってしまうよ。」 極限まで落ちた。 身体が動かない。起き上がれない。朝も昼も夜も眠りの中にいるような状態。 「本当に自分を見失ってしまったら、音楽がわからなくなってしまうよ。」 それはいつも、最後の最後で、私を救う言葉だ。 飛び出した。ここにいたら自分が全てダメになってしまう。 そうだ、前から気になっていたバンドのライブを観に行こう。 その会場は、自分が通っていた大学の近くだっ…
Mais ou Menos
————– まちゃんへ 明けました。今年はどんな年にしたい? ぴは、英語と制作をがんばる年にしたい。 あとは、去年に引き続き、ヴィーガンの食生活をできるときはしたい。 したいことばかり書きましたが、やりたくないことはやらない、いらないものは買わない、など、減らせる部分は減らして、シンプルな生活を心がけていきたい。 年末年始は、昨年に引き続…
当番ノート 第36期
photo by rika minoda 2014/7 in ashinuma mashiko-cho tochigi pref. 北から東京へ向かう新幹線の車内、 通路を挟んで隣の席に、おそらく30代前半の両親と、小さな女の子の3人が座っていた。 お父さんは、とても良い姿勢で、ずっと静かに新聞を読み続けている。 女の子は、なにか動物のぬいぐるみを手にしていて、…
画家と7人の肖像
自分が好きで仕方ないものを、必ずしも人類全員が好きなわけではない。 自分が素晴らしいと信じているものが、必ずしも評価されるわけではない。 そんな当たり前のことに、未だハッとさせられる。 Photo by Kazuki Hiro 嫌いなものが同じ者同士の方が仲良くやっていけるなんて説もあるが、許せないものを共有する一時の結束より、好きな世界観を共有する付き合いが多くなった。今のところ体現しているのは…
それをエンジェルと呼んだ、彼女たち。
たった一度だけ会った人と、フェイスブックでつながれる時代。 だけどほんの2時間ともにした人のことを琥珀みたいに止まった時間のまま覚えている。覚えているだけでたぶん、もう連絡を取ることはないような気がしている。あまりに素敵な時間を過ごしたので、再び偶然が重ならないならこのままにしておきたい。そんな風に思うのも、「古風だね」と言われるようにそのうちなってしまうのだろうか。 その人と出会ったのはスウェー…
当番ノート 第36期
恋人と知り合ったとき、自分はこういう人と出会うために生まれて生きてきたのかもしれない、と思った。 浮世離れした人だ、という印象を最初に持ったのを憶えている。 直接会って言葉を交わした人の中で、浮世離れしているなどと思った相手はあまりいない。 たくさんいたって困る。 知り合ったあと、私たちはときどき何人かの友人たちと共に食卓を囲んだり、映画を観たりした。 コンビニでお酒を買って飲みながら、あても無く…