長期滞在者
若い人たちの間でフィルムカメラが流行り始めているというニュースは聞いたことがあるが、この間やらせてもらった写真学生のコンペの審査会場にならんだ作品に、フィルムで制作したと思われるものが、思った以上に目立っていました。 改めて若い人たちが時代の雰囲気から即座に反応するスピードを強く感じました。 デジタル特有のシャープな画像と、明瞭な色彩ではなく、彼らからすると、フィルム特有のどこか不完全な仕上がりが…
当番ノート 第37期
「大人」と聞くと、皆さまは何を思い浮かべるだろうか。 大学生のころの私は、自然と「大人の条件」や「大人とは」みたいなものを次々と連想してしまっていた。 仕事、自律、温厚、自由、制限、諦念、幸福・・・ 考えれば考えるほど混迷していく思考の繰り返しだから、逃げたい一心であったが、 そうは言っても迫りくる自分の大人世代に向けて時間は容赦なく進むわけで。 今振り返れば、私は「モデル」を持っていなかったのだ…
Mais ou Menos
まちゃんへ 最近の体調はどうですか。 自分は、年始の宣言(?)通り、英語とjsの勉強をがんばってます。 休日に近所のお気に入りのカフェに来て、この手紙を書いています。 心が落ち着くひとときです。 ちょっとしんどいけど、新しいことを始めたり、積極的に何かに関わることに喜びを感じています。自分が得意なことを再発見したり、どうしたら、生活をよりよくしていけるか(仕事も含む)を常に考えています。 R…
当番ノート 第37期
からだって、建物みたいだなあと思う。 骨組みとはよく言ったもので、例えば立ち上がった時、足の裏が一番底辺にあって、二本の足は股関節から骨盤を拠点に一本の背骨となり、そのてっぺんに頭が乗っかかる。 私の足の大きさは23.5センチ。 二つの足の裏で自重を支えてバランスをとっているんだから、こりゃすごい。 からだは私が知らないうちに、多くの仕事をしてくれている。 感覚と身体運動について考える。 数年前に…
the power sink
表題:友人の家の2階から大量に水が出ていたけど、理解出来ないので通り過ぎた 今月も絵を載せます。ではよろしくお願いします! トゲの付いた植物(たんぱく質だ)の中にちょうちょ(たんぱく質だ)と夕方の様な空(たぶんたんぱく質ではない)と冷凍の刺身(たんぱく質だ)と道路(たぶんたんぱく質ではない)がある様に見える。 無題 胸からお腹から股にかけて重…
当番ノート 第37期
久しぶりの東京の雪の日 その日は夕方から少し用事があって、夜家に帰ってくると、それから特にすることもなくて、だけれどなんだか気持ちが落ち着かなくって、眠れなかった。 そり滑りがしたいな、ちょうど良さそうな坂、近くにあるな、あーっ、この間段ボール捨てちゃったやー、と半分本気で後悔なんかしたりしていた。でも、ほんとはそり滑りする勇気、持っていなくて、それが悔しい。 でも、雪がある。早くしないと、雪が溶…
風景のある図鑑
フーコーの振り子 : Pendule de Foucault フーコーの振り子は、地球の自転を可視化する振り子です。 私たちは常に回転している地球の上で暮らしています。しかし日常生活でそれを感じることはできません。 地球が自転していることを初めて証明したのが、フランスの物理学者レオン・フーコーの振り子実験でした。 1851年に、フーコーはパリのパンテオンで公開実験を行いました。 フーコーは長さ67…
当番ノート 第37期
1月22日(月) 朝イチで猫の病院に行く。病院に向かう途中で、ペルシャ婦人とすれ違った。ペルシャ婦人も猫を連れていて、通院の帰りらしい。高めのか細い声で「何かあったら言うのよ」と言ってくれるペルシャ猫に似た品の良い夫人はジブリ感がある。 ペルシャ婦人が紹介してくれた病院で診察を待つ。クールな女医さんが出てきて、くしゃみちゃんを撫でると、くしゃみちゃんはゴロゴロ言い始めた。「あーっ、これ!このゴロゴ…
それをエンジェルと呼んだ、彼女たち。
「本当の」とつく言葉の意味について、立ち止まってしまうことがある。 本当の優しさ、本当の幸せ、本当の悲しみ。いつもそれに辿り着いてみたいと思うのに、いつまでも自分が手にしているもの、目にしているもの、耳にしているものが「本当の」ものなのか判断がつかないでいる。例えば、「すごく好きになった人がいたことある?」と聞かれれば「ある」と答えられても、「本当の恋をしたことがある?」と聞かれれば自信がなくなっ…
当番ノート 第37期
人との出会いには ‘色’ や ‘形’ がある、と思う。 その人がくれる色を、自分というキャンパスにどう落とすか。 または、もらった形をどう解釈するか、どう役立てるか。 それは、その人との関わり方や密度やインパクトによって変わってくるのだけれど。 本稿では、出会いが生んだ出会い、とも言うべきか、ある二人との出会いについて、書いていこうと思う。 R…
長期滞在者
アリスとひろしくんに会ったあとは、しばらくフィッシュマンズばかり聴くことになる。 二人がよく歌うから、つい口ずさんでしまうのだ。 かなしいとぉーきにぃー うーかーぶーのわぁーあー 珍しく酔っ払ったアリスの歌声を思い出して、また「いかれたBaby」を再生する。 アリスと知り合ってから、行くよ、と何度も言っていた台湾に、ようやく行くことができた。 台湾で暮らすアリスと、珈琲屋のひろしくん、ドーナツ屋の…
当番ノート 第37期
近くにあって遠い、仄かに気になる存在。 それが私にとっての「言葉」である。 大学生の頃から、ダンス作品をつくるようになった。 それは、まだ形になっていない、けむりのような思考や想像を言語・身体化し、ダンサー、舞台美術家、音楽家、舞台のスタッフなど、関わってくれる人に対して伝えるという作業だ。 具体的に動きを「こうやってください」と見せ模倣してもらったり、手や身体を用いて身体感覚を伝えたり、時には「…