長期滞在者
桜が咲いて、マグノリアの花も、もう散り始めた。精密検査にための通院ラッシュがひと段落して、普通に働く生活戻らないといけない。季節の変わり目だからなのか、気分が優れない日々が続いているものの、天気は日々好転しているので、うざうざした気持ちのままでいるのは正直勿体無い。だけど、濡れた顔のアンパンマンのように、力が出ないのも本当で、毎日今日も一日頑張らないといけないのかと、朝お布団の中でしばらく泣きそう…
当番ノート 第37期
最終稿となった。 前回からの引き続きで’別れ’について触れたのち、当番ノートへの寄稿を総括したいなと思う。 出会いがあれば、いつか必ず別れがきてしまう。 気付く気付かないとは別に、だ。 人は、生死の概念から抜け出して永遠を手に入れない限り、別れからは逃れることができないだろう。 出会いは素晴らしいものだ。 別れは哀しいものだ。 出会いと別れが結び付いたものであると考えるなら…
当番ノート 第37期
作品を作ること これが自分の人生の仕事だと、いつの頃からかそう思うようになった。 作品には名前をつける。 時には文章や、短い詩のようなものを添える時もある。 言葉は、私と演者、作品と観客を繋いでくれる、扉のようなものだと思う。 自分にとって、作品を作るということはどういうことなんだろうと、これまで製作してきた作品のタイトルと、当時書き綴った文章を読み返した。 + 「under my skin」20…
長期滞在者
かつて自分を祝福し、遠くまで走らせてくれた言葉が、気付くと足かせになっている。進んで手にした役割だったはずが、いつの間にか呪いのように自分を苦しめている、そんなことがある。 言葉や肩書きはぼやけた自分にフレームを与えてくれるものだけど、そのフレームの居心地がよすぎると、「自分」は本当は流動的なものだということを忘れてしまう。そのことに息苦しさを覚える時にはすでに、フレームは簡単に壊せないほど固まっ…
当番ノート 第37期
私は今、家の近所の小さな公園の、大きな桜の木の下のブランコに座って、カツサンドコッペパンを食べながら、この文章を書いている。風が吹くと、落ちた花びらたちが踊るみたいにころころと走るのが、綺麗。 食べているカツサンドは、さっき、住んでいるアパートのすぐ裏の通りにあるちっちゃなパン屋さんで買った。本当にすぐ近所なのだけれど、初めてパン屋さんがあることに気がついた。いつも何時からやっているんですか?と何…
当番ノート 第37期
3月5日(月) 業務委託先のオフィスに行って作業をする。今日中に提出しておきたい原稿と企画書の仕上げ、それから担当している動画の進行管理で、指先が爆速で動いて頭の中がグラグラと煮えた。 苦手なことややるべきことはサッサと終わらせて、残った時間で好きなことをする、というのは、うちのお母さんの教育方針で、わたしにもそれが染みついている。月曜日と火曜日に睡眠時間を削って仕事を終わらせててでも、水曜日から…
当番ノート 第37期
(※本稿は公の場であるいうことを考慮した記述を含みます) さて、この当番ノートも残すところ2稿となった。 読み返してみて、ここ’アパートメント’の’一つの部屋’としてどうだろう、と考えてみると、 特徴的な机とか本棚とかはあるのだけど、床とか壁とか、そもそも広さとかが伝わってこないなと感じた。 いや、もしかしたら感じてくれる人もいるのかもしれないけれど…
当番ノート 第37期
大切な場所がある。 大阪駅から歩いて15分ほどの場所にある、iTohen(いとへん)という場所。 2006年から4年ほどアルバイトをさせてもらっていた。 大学を卒業して、もう一度他大学に入学することになり、求人誌を見ながら「いろんな人に出会える場所で働きたいな」と思い、ふと、頭に浮かんだ場所がiTohenだった。 大学在学中、他学部の学部棟に行き、気に入ったフライヤーを集め、ギャラリーやイベントを…
長期滞在者
大阪・谷町8丁目交差点の坂の下にある伽奈泥庵(カナディアン)は、創業50年を超える、大阪の、いや多分日本の、エスニック喫茶の草分けである。 今でこそインド風の煮出したミルクティ「チャイ」は日本でも全国区の飲み物になっているが、最初にこれを日本に紹介したのは伽奈泥庵とカンテ・グランデ(大阪・中津)だった。 僕はカンテ・グランデの方で働いていたのだけれど、伽奈泥庵にもよく通った。 自分の成人式の日に、…
長期滞在者
2018年3月8日。 朝から雨が降るその日は、しっかりと防寒をしないと外を歩くには辛さを感じるほどの気温の低さだった。 国際女性デーのこの日、19時からウィメンズ・マーチ東京2018が開催されることが発表されていた。 私は初めてこのマーチに参加することを決めていた。 雨かと思いながらも、行かないという選択は私には無かった。 2017年1月21日。 ドナルド・トランプ大統領の就任と女性蔑視発言などに…
当番ノート 第37期
入院中祖父は宝箱の話をした。 それは、よくあるプラスチックの、書類や小物を入れるような引き出しだった。 そこには、若い頃に2年だけ入隊したという、警察予備隊時代の写真と、その頃を思い出して書いた日記と、その頃に友人からもらった手紙と、父が上京してから祖父に送った手紙と、昔祖母に買った指輪と、いつの間に撮ったのか、遺影用の写真が入っていた。 祖父が亡くなって、私たちはその宝箱を開けた。85年の人生で…
画家と7人の肖像
最後の肖像画はここに載せない。彼女とそう約束している。 Photo by Kazuki Hiro 4月、展示会場に来た人達だけが、最後の肖像画が誰のものなのか知ることになる。一つヒントを書くと、きっとみんな彼女の歌を知っている。この肖像画の制作中に参列した友人の結婚式でも、彼女の曲は演奏された。「今この声の人を描いているんだな」などと、一人密かに感慨を噛み締めるなどしていた。 最後のモデルの方の制…