長期滞在者
あなたに言葉を送る時、私はどんな顔をしているのだろう? 深い夜の時間が好きだ。 誰もが寝静まって、朝になるまでは仕事の連絡はまず入らない。 携帯に届く連絡は、極めてプライベートな人間のみとなるこの時間を、私は一日の中で最も好んでいる。 お気に入りのバスソルトをたっぷり入れた湯につかり、 物語の世界に没頭できるような本のページをめくって汗をかき、 オレンジの精油が優しく香るシャンプーで髪を洗い、 季…
Mais ou Menos
————— まちゃんへ 入院お疲れ様でした。 まちゃんの検査入院は、2回目だったから、もう何となく流れはわかってたけど、やっぱり心配でした。検査結果はまだもう少し先やけど、脳のことやからどうなるか心配です。心配しすぎてもあんまり意味ないかもしれんけど、心配です。 私はというと、少しずつですが、自分を楽にするような考え方、動き方を実践しているところです。仕事も探しているけど、なかなかすぐには見つから…
当番ノート 第41期
Tîrgu Mureș 私の住む街、黒海近くのconstantaよりバスで12時間かけて トランシルヴァニア地方にあるTîrgu Mureșという街に公演に行ってきた。 constantaとは全く違った雰囲気の街。 まるで違う国に来たよう。 海の近くで開放的でジプシーも多く、人々のしゃべる声も大きく、混沌としているconstanta。 Tîrgu Mureșは山に囲まれた静かで綺麗な街だった。 オ…
それをエンジェルと呼んだ、彼女たち。
見知らぬ女の子を家に泊めた、そんなことを最近思い出している。 彼女とはmixiを通じて出会った。どうしてコンタクトを取るようになったのかはすっかり思い出すことができない。大学2年生の頃だったように思う。彼女はひとつほど年下の京都の美大生だった。 思い出せる最初のやりとりはこうだ。 彼女が東京に遊びにくるという時に、mixiで知り合った見知らぬおじさんの家に泊めてもらうという話を聞いて「ちょっと待っ…
当番ノート 第41期
東京に30年、そして京都は嵐山に2年住んだのち、大阪に移ることを決めた。 大阪には、学生の頃から10年ほど通い続けていて愛着があった。ゆかりの深かった大阪市南部にも憧れがあったが、北部のターミナル駅である梅田に徒歩で出られることを条件に物件を探した。東京は23区を二分して語る場合、下町感のある東部と、副都心とよばれる新宿・渋谷・池袋などの街を含む西部とに分けて語るのが一般的だが、大阪は南部と北部と…
Do farmers in the dark
こんばんは!今回は前々回に載せた漫画のような紙芝居のような話の続きを載せています。しかし前回以上に今回全く話は進んでいません。すいません。宜しくお願いします! オレンジ色の部屋に住んでる <前回までのあらすじ>〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 オレンジ色の部屋、暑い 仕事に行かないと 向こうの煙が出ている工場に行くんだ 二匹の犬はいつも僕を噛みます くそ!痛いな! あと…
長期滞在者
家族や友人にあらゆる種類の距離感が存在するように、シェアハウスも住人の距離感は多様だと思う。 私が住む家はパーティーといった類のことをしないので、住人であらたまって集まるのは何かを意思決定する必要のある住人会議のときだけ。それ以外は好きなときやタイミングが合ったときに話すくらいだ。 私にとってはその距離感が居心地良いと思っていたけれど、最近ちょっと鍋をしてみてもよいかな、と思う。そういえば昔、庭で…
お直しカフェ
築地がなくなってしまった。天まで積み上がった発泡スチロールも、これぞブリコラージュと言わんばかりのロフトも、ビールケースの椅子もガムテープで補強しまくりの荷台も、もうじきに全部全部なくなってしまう。 私は何かがなくなってしまうことがたぶん人よりもだいぶ苦手だ。それは、今年の春、近所のお蕎麦屋さんが火事で全焼してしまったときに、友人から指摘されて改めて気づいたことでもあった。火事現場の前が辛くて通れ…
当番ノート 第41期
お客さんと一緒に踊る 昨日は美女と野獣の舞台だった。 今シーズン初めての上演で、今月に後2箇所違う街で公演がある。 私達の街の劇場Teatrul National de opera si balet Oleg Danovskiでは 毎回温かい拍手で迎えられる。 昨日もスタンディングオーベーション。 客席に明かりがついた時、主役はお客さんだと思った。 毎回同じ場所に座ってるおばあちゃんが昨日も来てい…
当番ノート 第41期
東京を出て京都に住むと決めたとき、なかでも嵐山という場所を選んだのは、ほとんど衝動的な選択だったように思う。 転職予定だった勤め先へのアクセスがどうかとか、想定していた家賃の範囲で希望するような生活ができそうかとか、チェックポイントはいくつかあった。それでも、その頃のわたしはとにかく、長年生活した場所から逃げてゆっくり休むことを望んでいた。 最近ようやく正直に話せるようになってきたけれど、引っ越す…