長期滞在者
「さようなら」が言えない。 言葉には現実を引き寄せる力があるから。 「さようなら」を言ってしまえば、それでおしまいな気がして。 「さようなら」を言ってしまえば、二度と会えなくなる気がして。 私は「さようなら」を言うのが、とても怖い。 「最後の言葉」をずっと考えていた。 B3リーグ、東京海上日動ビッグブルーのホームゲームでのMCをもう10年以上務めてきた。 今シーズンで東京海上日動ビッグブルーがB3…
長期滞在者
先日、ある展覧会場の受付で、展示を観終わったと思われるお客様が、職員の方に向かって、目当ての作品が展示していなくて面白くなかった、というような感想を残して会場を後にするところを見かけました。 その後に会場に入った僕は、時間さえ許せばもう少し長くゆっくりとこの会場に居たかったと思わせる素晴らしい展覧会でした。足を運んだ展示で去りがたいと感じさせるものは、一年の中でそんなにはありません。 その展覧会は…
長期滞在者
小さな頃は音楽というものが大嫌いだった。この嫌悪感のみなもとは、小学校の音楽の時間に習ったリコーダーとピアニカにさかのぼる。楽譜の読み方もよくわからないし、指を動かして望むメロディを作りだしていくこともできない。それなのに授業はどんどん先に進んでいき、わたしはますます落ちこぼれていく。吹き口についた歯型の傷のザラザラした感触や、どうしても取れない生臭い唾液が人工的なプラスチックにまざった匂い。うす…
当番ノート 第43期
あなたは私のことを面白いとか好きとか言ってくれますが、あなたの中の私は私全体のうちのほんの一部なんです、いうなれば私A。私の中には私A以外に実は私Bもいて、あなたは私Bのことあんまり好きじゃないかもなあ、それ以外に私Cというのもいるんですけど、私Cに関してはそうだな、むしろあなたが血管が切れそうになりながら憤慨するような所業も結構平気でできちゃうと思います。あなたがそれを目撃して憤慨したとしてもた…
Mais ou Menos
———- Pちゃん 今日もお疲れ様です。もう3月も半ばやね。春は苦手なシーズンです。病気になる前は、少しずつ温度が高くなるこの季節が大好きだったけど、今はすごく辛い時期です。 春は鬱の傾向が強くなるの。毎日のように、寄せては返す波のような身分の乱れと戦っては、まけて波にのまれてしまっています。Pは辛抱強く私を見守ってくれていると思います。 2月後半から3月頭にか…
当番ノート 第43期
記事を書いてから寝たと思ったら夢だった、そにっくなーす a.k.a.ひのはらみめいです。 みなさんいかがお過ごしでしょうか。 花粉の時期に役に立つグッズの一つであるマスクとかありますけども、マスクについての医療パロディ記事を以前書いたのでそれを載せておきます。暇つぶしにどうぞ。 http://kuzu-tsuu.hatenablog.com/entry/2015/11/22/210000 さて、き…
当番ノート 第43期
今回は、吹奏楽についてふれてみたいと思う。 私が吹奏楽と出会ったのは、中学1年生の頃。 幼少期から父と行くプロ野球観戦が大好きで、父に肩車をしてもらって後楽園球場に巨人戦を見に行った。父は根っからの野球好きで、休日は草野球や少年野球の代表などをやっていた。家には野球の試合の際に使われるスコアブックがいくつも置いてあり、玄関にはゴルフバッグとともに野球バッグもでかでかと並び、当時子どもであった私には…
当番ノート 第43期
15 簡単で典型的で消費主義 さて、そろそろ私たちはアパートに帰ろう。私たちは近代という革命が、私たちのアパートから一体なにを喪失させたのか考えてきた。愛と友情、家族と戦争、芸術と無、それらが森羅万象から取り除かれた時、私たちの前には便利な世界が広がっている。そうなった時、私たちはいかにして愛情を示すだろう。かわいさ、や、ときめき、が世界を豊かにする時、そこで失われるものは何だろう。それは、ある固…
Do farmers in the dark
表題:あがががが、僕は柔らかくて固い膜みたいなのを突き破ってすごく寂しいところに出た。でも突き出る前の場所も寂しかったよ。 (イケてる山や草や池、構造物は、描けない。イケてなくてもせめて上手ならいいのに。みんなは凄くかっこよくてイケてる独創的な山や草や池などを書いている。自分はテクと、心根が無いんだ。来年くらいには状況は改善されていると思う) こんばんは!今月こそは本当に漫画の続きを…
長期滞在者
一人暮らしをしていた頃、インフルエンザにかかったことがあった。コンビニで大量の食糧を買い込んだので、薬を貰ったあとは特に困ることもなかった。ただ、一人でなんとかしてしまえるということは、それはそれで孤独なのかもしれないとも思った。 もちろん、誰かと暮らしているからといって、全く孤独ではないということではないのだけれど。 温かい雨が降るようになり、少しずつ物事の流れが変わっていくのを感じる。絹江ちゃ…
それをエンジェルと呼んだ、彼女たち。
私が小学生のときに道端で出会っているから、姉さんとの友だち歴はもう20年近くなる。親子ほど年の離れた私たちが「友だち」というと周りの人たちは少し意外そうな顔をする。ほかにちょうどいい言葉が見当たらないのだ。会話をしているときの調子は友だちに見えるだろうし、一緒に出かける姿は親子にしか見えないかもしれない。今ではどちらもしっくりきてしまう。 私たちの最初の共通点は、ほぼ同時期に、同じペットショップで…
当番ノート 第43期
ジョン・ロールズという政治哲学者は、ソクラテスを引用しながら人間の動機の在り方について説明した。 人間は、一般に自分の能力を行使することを楽しむ。このとき、その能力がより高次で複雑になればなるほど、その楽しみが大きくなる。 でも、どんな人間でも、その潜在的な能力や成功は、一人の人生の中で表現できるものをはるかに超えている。大きな楽しみをもたらすような高次で複雑な活動のうち、一人の人間がすべてをやり…