当番ノート 第52期
いこいの森、と呼ぶにはあまりに鬱蒼とした森(じっさいは林くらい)が小学校にあった。 松の木がどしんどしんと植わっていて、小さなため池に育ちすぎた亀と鯉がたくさんいた。手入れがあまりされていないぶん、自然の生き物が自由に暮らしていた。森は静かで、つめたく湿っていて、地面は濡れた枯葉でふかふかしていた。森の奥には二宮金次郎の銅像が建っていた。 6年生は「いこいの森」にタイムカプセルを埋める、という…
鍵を開けて 詩人が「しょぼい喫茶店」に立った日々のこと
まずは以下のテキストを見てもらいたい。 冷蔵庫の下の方に。デミグラスソースしかない。足元に。イナゴしかない。一文字違いですね、イチゴ。イチゴの方がいいな。大丈夫ですか、頼まなきゃよかったとか。ちょうどいいです。でもなんか、戦場から戻った感じですね。地雷一回踏んだんです。酒飲まない。車で来たんで。芝生をはぎ取るんです、そのあときれいに土を掘ってすぽっと埋めて、またきれいに戻す。その仕事は大企業でやっ…
当番ノート 第52期
友人が結婚したり出産したりする歳になった。月日は早く流れるものだなあと思う。自分自身が結婚などの人生のライフイベントを想定していないと、好きな作品の新刊の発売日ばかり見て時を重ねて、自分自身が結婚できる歳なのも忘れていく。友人が結婚するとか結婚したとか結婚したいとか聞くと、ああ、そういや結婚が可能な歳なんだっけなと気づかされる。時の流れって残酷だ。 マリッジブルーって言うと、結婚前に感じる不安感な…