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2F/当番ノート

飼っていたネコの名前はチャラ

当番ノート 第2期

大学3回時21歳の時に留年をしてしまった。
当時は課題や制作に対してモチベーションがなくり
1年ダブった時間を思う存分遊んでしまえ!
奨学生でもなくなり学生を辞めてしまうんだという事で
周りを見ず狂ったように遊びまわり多くの学生と同じように麻雀を覚えた。

これが良くなかった。
何が良くなかったというと中途半端に強かった。

初めはオンラインゲームで一通りルールや手順を覚えて
それでは満足できずに今度は友だちがやっている卓に混ぜて貰う
そうこうしているうちに自分のおんぼろアパートにも人を呼んで
1週間が3日で終わってしまうというなんとも自堕落で楽しい時期を過ごした。

いろいろな人が打ちに来るうちに、競技大会に出た事があるという人が来た。
(仮にAさんとしておきます)

ちょうど仲間内の麻雀にもやや飽きてきたタイミングで
これはなかなかに興味深いという事でAさんが出たという大会の話しを聞いて
彼の麻雀を後ろから見させてもらう。
静かにゆっくりと打ちまわし決して無茶はしない、そんな感じの打ち方。

(失礼ながら)これで大会の上位になれるなら、自分にもチャンスはあるんじゃない?
無知ゆえの無謀さも手伝って、AさんもでたT書房主宰の大会にエントリーした。

結果、大阪大会予選2位。
1位のみがプロや著名人と打てる本戦に出れたので
多少がっかりはしたものの
自分の実力がある程度わかっただけでも十分な成果だった。

その後、大会がある度に申し込み
冬の京都で予選を突破しプロも集まる本戦への出場機会を得た。

前日入りの大御所プロや有名作家先生たちはお酒も抜けてない方も多かったが
地方予選を勝ち抜いてきた各種団体の下位リーグのプロや
自分のような腕に自信有りの素人で会場は異様な雰囲気になっていた。

ここで一気に200名近い人数になるので、まず本戦に進む為の予選。
予選が終わって、最終32名による最終戦に進む段階で
いろいろとお誘いを受ける。

対局を進めるにあたって分かってきた事があって
下位リーグのプロに所属しているはこういった大会で
アピールする必要があり、また地方のリーグの相談役的な
上位リーグプロも自分のリーグに所属する若手プロを
指導したりとかなり大変なようだった。

そんな中で理屈も知識も拠り所も無い素人が
勝ち上がると面白くない人はわんさか居たが
当時は全く気にもしていなかった。
皮肉な事にそれがうけてしまったようで
上位リーグのプロの人には熱心にプロへの挑戦を勧められ
下位リーグのプロたちのドロドロとした視線にさらされていた。

ソフトパックのキャメルを慌てて2本補充して
(対局中の喫煙はOKだが吸う時間がない)
いよいよ、本戦。
初戦を突破した上位32位での対局。
それまでのお祭りムードはなくなり場が凍る対局の連続。

自分は古川凱章さんにサッとやられて
一度もアがれず静かに大会は終了。

優勝者は同じ年の京都大生だった。
花束をもらう彼をぼんやりと眺めながら
寸志という名前の賞金と手渡された連絡先を持って大阪への帰路についた。

1年間遊びでしかなかった麻雀で、もしかしたら生活できるかもしれない。
麻雀について何も知らない22歳が漠然とした夢は突然終わってしまう。

おんぼろアパートで隠して飼っていたネコの存在がばれて追い出され
お付き合いしていた彼女の家に転がり込んだはいいものの
学業もままならず、麻雀ばかりで働かず、
他の女性にほいほいと付いていってしまう自分に
愛想をつかし、そこも追い出されてしまう。

ちょうど、大会にでるきっかけになったAさんの訃報もあり
熱病が冷めるように麻雀に対しての興味が無くなってしまった。
頂いた連絡先にはどこにも連絡せず、
プロとか、そういう事を考えなくなるのに時間はかからなかった。
同時に1年間の僕の八つ当たりも終わった。

福井 大和

福井 大和

/* 井戸に石を投げ込んで井戸の深さと水の音を知りたい */
大阪でWEBやら雑貨やら節操無く作ってます。

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