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2F/当番ノート

うりゃりゃ

当番ノート 第4期

「ドキュん!ゴキュん!!胸の奥〜♫」

「おいおい、兄ちゃん。船の臨時便がなかなか来ないからってDAPANPをそんなにバナナを握り潰しながら
熱唱されたら、船を待ってる他のお客さんに迷惑だよ。それに何より、ドキュん!ゴキュん!じゃなくて、
ドキュん!ドキュん!じゃろうに。」

「ドキュん!をゴキュん!に歌い変えているのにはれっきとした理由があるんです。
ゴ(5)キュ(9)ん。私は59歳までに、島で恋と人生を立て直さないといけないんです!!」

「で、兄ちゃん、何も恋と人生の立て直しをしたいのはあんただけに始まった話じゃあない。
実は私も立て直したいんよ。今晩うちに嫁に来るか。」

「ええっ!あなたはいきなり主要な登場人物として話し始めてますけど、そもそも
誰なのですか?これは舞台の台本じゃないんですよ。鍵括弧の前に誰の台詞か書かれてないですし、
そもそも主人公として今回は登場している私ですら、まだろくに自己紹介が済んでいないんです。」

「ケニー。」

「ええっ??」

「ケニー。今から向かう島の住人は私のコトをそう呼んどる。お前さん、何も食っとらんじゃろう。
まあ、『お前さん、何も食っとらんじゃろう。』って台詞が言いたかっただけで、実際はお前さんが
フレッシュネスバーガーの『カフェとしても利用してね♪』って表の看板を見ながら『そりゃ居酒屋としては利用出来ないよ!』
と突っ込みながらもベーコンオムレツバーガーを食べとるんを私ことケニーはずっと見とったんじゃが。」

「ケニーさん!あなた一体何を隠してるんですか!!まあ私も今『あなた一体何を隠してるんですか!!』って台詞が
言いたかっただけなんですが。」

「島に来い!健次郎に本物の味のベーコンオムレツバーガーを食べさせてやるよ。」

「健次郎??主人公の私の名前は健次郎って言うんですか??どうも皆さん初めまして。私の名前は健次郎です!!」

「私は島でうりゃりゃキッチンというレストランを営んでおるのじゃよ。お!臨時便がようやく来たようじゃ。
健次郎や。お前さんは島に行くのは初めてか?」

「ガラパゴス島とイースター島、バミューダ諸島にモルディブ諸島。後いくつかありますがそんなものです。」

「じゃあ実際は初めて島に行くってことじゃな。今から乗る船は日本初の漫画喫茶付きの船じゃが、間違っても
漫画の『うらら』を読むんじゃないぞ。話がややこしくなるからな。」

私こと健次郎は、初めて漫画喫茶付きのフェリーとやらに乗船した。
『黒子のバスケ』を波に揺られながらも一心不乱に読んでいた。

この時は思いもしなかったのである。
島で恋と人生を立て直しに行くはずの私が、わずか2ヶ月後の9月4週目の火曜日には、家の建て直しまで任された上に
お家騒動に巻き込まれることになる事など。

(続く)

藤井 佳之

藤井 佳之

四国の高松という街で、完全予約制の古本屋を営んでいます。名前は、「なタ書」です。
「なんで予約制なんですか?」とよく聞かれます。「お客さんがあんまり来ない」からです。

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