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2F/当番ノート

『小さな虫』

当番ノート 第5期

この
家の風呂場の壁に
ぴったりと張りついている
この
小さな虫は
今から私が
お湯をかけて殺そうとしていることに
気づいているかしら

この
小さな虫は
気づいていない
ただ
本能で感じとり
逃げるだろう

この
小さな虫の
生き延びようとする
その心は
化粧をし
良い服を着
過剰気味の食事をして情報過多の毎日に翻弄され
人の視線を気にする私には
失ってしまった
能力だ


お湯をかけて流されようとしている
この
小さな虫は
私だ

でも
逃げきれるだけの
羽が無い

 
暁月上ル著『未完の月』より

暁月 上ル

暁月 上ル

9月1日生まれの夜ふかしの凡人。こっそり詩人。2007年に初の詩集『未完の月』を出版。詩を書いています。個展をしたり、朗読をしたり、歌詞を書いたり、俳句を詠んだりもします。絵も描いたりします。夢の扉がいくつも開いては閉じ、閉じては開くので、欲張りな私はどの扉にも手を伸ばし、ときどき指をはさみます。

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