骨格を意識した矛盾のない人体を描くことをあきらめ、自分にとってよい画面を作り上げるのが「絵を描くこと」になったのが数年前のことです。
ただ、描いていて楽しい絵が描きたいのです。
最初から最後まで遊びながら絵を描きたいのです。
そうやって画面を構成していく上で、描きたいものを一通り描いても画面が完成しないときに使い始めたのが幾何学模様でした。
いろいろな絵や本から好きな模様を見つけてはノートに描き溜めていきました。
閉ざされた空間を反復模様で満たしていくのは意味もなく気持ちのいいものです。
アール・ブリュットと呼ばれるの作品の中でも、反復がよく見られるように思います。
船、電車、女性、牛などをひたすら画面びっしりに描いたもの。
それは描いた人の労力に対する感心もあるでしょうが、それだけではないはずです。
蜂の巣、亀の甲羅、トンボの複眼の六角形、渦状に詰め込まれたひまわりの種、石垣、生命のスープ、ピュタゴラスの考える音楽で満たされた宇宙、空白を埋めることは全宇宙の関心事です。