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2F/当番ノート

記憶の岸辺への旅

当番ノート 第9期

誰かとの時間を共有するということは、
共有している相手の時間を、
一時の命を、わけてもらっているということだと思う。

先日夢に、しばらく会っていない、おそらくこれからも会うことのない人が現れた。
もう何年も会っていないのに時間は今を流れていて、
たまたま再会して、互いの近況を語り、別れるという、
なんの面白みもない、いつもの夢で起こる不思議なことがなにも起こらない、
ごくごく自然に起こりそうな日常に根付いた夢だった。

だから目を覚ましても、なんだか本当に起きたことのような錯覚に陥って、
「久しぶりに会ったけど、相変わらずだったなぁ」と思った。

夢の中に登場した現在のその人は、きっとわたしの作り出したものでしかないけれど、
普段あまり思い出したりしない人なのに、きちんとわたしの中に、その人は生きていた。

専門学校の頃の友達と会話をしていて、卒業間近のある1日の話になった。
わたしが覚えていたことを友達が忘れていたり、
わたしが忘れていたことを友達が覚えていたりして、
記憶をどんどん摺り合わせていくと、その日の教室の風景が鮮明に蘇ってきた。

わたしが忘れていた時間の命は、こうして友達の中に生きていて、
友達が忘れてしまっている時間の命も、わたしの中にはちゃんと生きている。

こんな風にわたしが今までわけてもらった時間の命は、
きっとわたしの中に、わたしが生きている限りは生き続けている。

時間という名の舟をこいで、記憶という名の岸辺に降り立つ。

たまに、そっと、そういう心の中の旅にでて、
わたしの中で息をしている時間の命たちと触れ合ってみる。

わたしの中にあなたの岸辺があるように、
あなたの中にわたしの岸辺がある。

そう思うとなんだか嬉しくなるし、
格好が悪くてもいいから、
居心地のいい岸辺でありたいと思う。

ukii

ukii

1984年生まれ、大分県出身、東京都在住。
人間1人、猫1匹と暮らしています。
幼い頃から今に至るまで、手を動かして物を作ることが好きです。

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