「 あたしと心中してくれる? 」
…
まっすぐな瞳と眉の上で切りそろえられた前髪が印象的で、あのこの素直さと頑固さがあらわれているようだった。
たぶん少女と呼ぶ年齢ではなかったけれど、女性と呼ぶのもなにか違う。
いつからから、いつまでも、「いまのまま」。
そんなかんじだった。
あきちゃった。終わってしまった。空洞だ。
そんな感じのことをよく言っていた。
今は余生ということらしい。
あかるい、げんき、すなおでいいこ。
嘘ではないけれど、それだけではない。
あのこを見ていて、ひとは多面的なのだということをを覚えた。
正しいことが、正解ではないと気づいたときににている。
世界の暗黙のルールだと思っていたものも、そうではなかった。みんなの基準なんてばらばらだった。
両親はかみさまではないし、他の人たちもかみさまではなかった。
かみさまがいちばんえらいのでもなかった。
どれもが、本当にも嘘にもなった。
世界はぐるぐると回っていて、そこにひとりで立っていることに気がついた。
自分の中心はいつまでも自分なのだ。
けれどそれすら、自分の「本当」でしかない。
地球をひとりで転がすあのこも、けれど、自分以外の軸の存在をまだあきらめてはいないようにみえた。
願っているのは死などではなく、死をもたらすほどの価値や衝撃なのかもしれないね、
いつだったかのあのこの言葉に今更そう思うのだった。