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2F/当番ノート

エモーショナルに、生きる。

当番ノート 第25期

ニューヨークで暮らし始めて7か月。日々どこかで、思いっきり笑っている人、びっくりするぐらい泣いている人、何があったの?と聞きたくなるぐらい怒っている人、なんだかよくわからないけど楽しそうな人、とにかくエモーショナルな人々をよく見かける。

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かっこいい靴を履いている人を見かければ“それどこで売ってるの?最高にクールだね!”と話しかけ、困ってそうな人がいれば声をかけ、当たり前に手を差し伸べる。と同時に、自分が困っていれば誰かに助けを求め、電車が遅れて大変でさ。。。と隣にいる知らない誰かに話しかける。身振り手振りに表情も加わり、とても表現豊かだ。ためらいなど感じる前に、行動や言葉がすべて外に飛び出している。まさにその瞬間を生きているような、自分の思いに忠実な人たち。

そんな人たちを見かける度に思い出す友人がいる。

出会いは高校1年の夏。第一印象は最悪。絶対友達になれないタイプ。しかし運命のイタズラか、はたまた運命か、翌年彼女と同じクラスになった。噂がたつほど目立つ存在な上に、見た目は派手。どうやったって仲良くなれないと思っていたけれど、ひょんなことから私たちの距離はぎゅーんと縮まり仲良くなってしまった。噂通り、言動も見た目も派手だったけれど、想像以上に彼女は素直な人だった。思いに忠実な人だった。

なかなかのトラブルメーカーだった彼女は度々先生に怒られていた。“教室から出ていけ!”と先生に言われると、素直に教室から出ていった。学校がつまらないと、学校に来なかった。全然学校に来ないくせに、クラスの皆のことは大好きだった。クラス替えの際、寂しいと絵に描いたように泣いていた(クラス替えがあったものの、ほぼみんな同じクラスになったというオチあり)。愛すべき不良、といったところだろうか。

実際、彼女はみんなに愛されていた。
楽しいことがあれば誰よりも楽しみ、悲しいことがあれば誰よりも悲しんでいた。そんな彼女は、友人の私に対しても何事もストレートにぶつけてきた。思いを言葉に、行動にして正面からぶつかってきた。私はそれまで、彼女ほど真っすぐな人に出会ったことがなかった。どちらかというと思いを表に出すタイプではなかった私にとって、彼女との出会いは衝撃的だった。不器用すぎるほど素直に生きる彼女は時に大変そうに見えたけれど、それ以上になんだかとても眩しく見えた。そんな生き方もあるのだと。なんだかうらやましかった。今でも彼女は何か報告するたびに、人一倍の感情を私にくれる。

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“察ししてくれよー”という思うことがある。そんな時には、そもそも察してもらえるほどその人にちゃんと何かを伝えたのか?と考えるようにしている。自分が思っているほど、思いは人に伝わっていない。伝えても伝わらないぐらいなんだから、せめて伝えることだけでもしよう。みんなエスパー!ではない。

生まれつき声が低めなため、感情が言葉に乗りにくい私ですが、だからこそ、結果はどうあれ、出来るだけ思いはきちんと伝えていきたいと思う今日この頃。街で見かけるエモーショナルな人々を、たまには見習って。

宮本 英実

宮本 英実

ソ-シャルコラボレーター / MUSUBU代表
福島県いわき市生まれ、ブルックリンを経由し、いわきと渋谷の2拠点生活中。音楽業界でのアーティストマネジメント&宣伝の経験を活かしたエンタメ精神を軸に、企画やイベントで社会×人・地域・コトの共創を後押しするソーシャルコラボレーター。福祉、教育、スポーツまでジャンルをまたぎ活動中。

2011年東日本大震災後、地域活性化団体「MUSUBU」を設立。いわき発信で人々が"沸く"様々なプロジェクトを行う。

https://www.foriio.com/hidemi-miyamoto

Reviewed by
小沼 理

日本人は主張するより「察する」ことが得意だと言われているけれど、時々そんな特性を忘れて、泣いたり怒ったりしてみる。気持ちを操縦しないと手放しで自転車に乗っているようでスリリングだけれど、その瞬間はやけに記憶に残るものだ。そして自分が思うより、自分の気持ちは目の前の人や世界に届く。

気持ちを汲むことが誰かと繋いだ手の、どこまでが自分かわからなくなるようなものだとしたら、思いを伝えるのは握手やハイタッチに似ているか。どんな対話の仕方であれ、誠実でありたいと思う。

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