同窓会は、いろいろ辛い。
大人になって集まってみると、よくもまぁこんなにジャンルの違う人たちとやってきたものだと思う。
久々に旧友と会うと、他人との境界線、”カテゴリの違い”を感じる。
(そしていつも飲んでいるメンバーが愛おしくなる。)
社会人になったら嫌いな人とは付き合わなくて良い。
会社勤めもしない私は、尊敬できない上司の言うことを聞いたり、
愚痴の多いお局の相手をするなんて人生の無駄遣いと思っているタチなので、余計に同窓会が辛い。
学校ってすごい。人生の墓場的なところがある。
学生時代にヒエラルキーの下方にいた者はズルズルと自己肯定感を高められずにいるし、
モテなかった記憶は、その穴を埋めようと頑張って自分を出世させたりする。
強い者は「ウェ〜イ」と脳内お花畑で何も考えず、自分にまさか不幸が訪れるわけなんてない、と思っている。
結構、その後が決まってしまったりする。
でも仕方がない。
人が40人集まれば、弱肉強食のヒエラルキーが勝手に作られてしまうし、
「じゃあ学校教育はこうしよう!こんな方法はいかがかな?」と代案も提示できない。
もし子供が学校に行きたくないと言い出したら、喜んで違う居場所を提供する親になるだろう。
学校とは自分の弱さを認めて諦めるか、
調子にのるか、どちらかの場所である。
(もちろん、どちらも素晴らしい経験だ。)
同窓会はカーテンを閉めきっている。
学校が締め切られた場所であったように。
明るい顔をして、
何事もないかのように、さも彼女たちに興味があるかのように話を聞く。
会いたい人にはちょくちょく連絡を取って会うのだから、
別にわざわざ会いたい人はいない。
だから取り繕って、すました顔をしている。
学校は特別でありたいという若者独特の願いは叶わないし、
悪いことをしていないのに理不尽に怒鳴られたり、
他人に合わせるのに難儀したり、
うっかり忘れ物をしたり、
校門で転んでパンツ見せちゃったりして、大変。
戻りたくねぇ、と最高の笑顔で言ってみよう。
(それでも私は、いつものように同窓会で幹事をしている。)
<絵本の持つチカラ>
学校や会社、サークル、ゼミ。
なんでも良いけれど組織とは強くて脆い。
組織を否定するつもりはこれっぽっちもないけれど、
要はクローズドな場所は一部の人間にとって墓場化することがある、と言いたい。
そんな時は絵本のことを思ってみよう。
紅茶に入れたミルクのように、なめらかに溶けて
どこまでも広がる幸福感。
想像の雲がムクムクと湧き上がる瞬間。
世界でいちばん揺るぎない平和の樹の上で、
お菓子を食べたり、寝転んだり違う世界に行くことができる。
そうそう、このアパートメントでは岐路の話をしている。
私の岐路の、まさにその点となったフィリピンのミンダナオ子ども図書館では、
奨学生である子どもたちが、
貧しい地域の子どもたちのために絵本の読み聞かせをする。
私も数回、日本の施設にボテンティアに行ったが、
恵まれない子どもが、別の人のために何か仕事をするところは見たことがない。
それが良いか悪いかと言う話ではなく、事情は国によって異なると感じた。
吹き抜ける風の気持ち良い、子ども図書館の二階にはたくさんの絵本が並んでいて、日本語の絵本も多い。
貧しい村に訪問したとき、読み聞かせ当番の子が日本語の絵本を私に見せてきて
「ねえ、これってどういう場面?」と聞く。
絵本なので見れば大抵意味はわかるが、日本語はわからないのだ。
……というよりその絵本は大抵、読み手の創作によって実際の内容と大幅に違う。
彼女らが絵から想像した勝手な物語になっている。
絵と話が噛み合っていないのはいつものことだし、
結末がなかったり、
え?そんなんで良いの?と言う謎のストーリーだったり。
それ、トラじゃなくて犬だよ!とツッコミが止まらない。
全て気にしない。
それがフィリピン流。
子どもたちの即興の想像で、他の子どもは夢を膨らませていく。
<想像できることが豊かさなのかもしれない>
貧困や、戦争、暴力にさらされている子どもたちにとって、
絵本の世界はつかの間の休息の時間。
誰にも邪魔されない世界。
”こうあったらいいのに”をいくつも並べることができる。
真の平和を実現するのは難しいけれど、
誰かに何分かの平和を与えることはできる。
(と口で言うのはとっても簡単だけれど)
それって大きな一歩だ。
想像することとその豊かさを持った子が、平和の連鎖の一粒になってくれたら。
私に何ができるかな、と考えさせられた。
<ディストピアパートメントへようこそ>
夏が終わってしまいましたね。
低気圧に頭が痛むので、参ってしまいました。
それに過去を振り返ることは、(楽しくないことを思い出してしまうので)身体にあまりよくありません。
岐路を振り返るのもなかなか大変です。
こんな部屋にあなたもよく訪ねてきてくれました。
感謝いたします。
あと二回は、きっときっと楽しいお話をいたしましょう。
ええ、その時はアップルパイでも焼いておきましょう。
濃いめの紅茶も淹れて。
混沌として時にはヒリリと冷たい世界に、
私だけの平和な空間を作るのは意外と簡単。
こうして好きな形にパイ生地を伸ばし、
りんごをたっぷりの砂糖で煮詰め、
お気に入りのやかんできゅーきゅーとお湯を沸騰させる。
ベージュのテーブルクロスをひく。
コスモスを一輪、ガラスの小さなビンにさす。
好きな作家さんの、手触りの良いカップをあなたのぶんも取り出す。
この部屋の私なりの秩序こそ、誠の平和なのです。