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2F/当番ノート

20191129

第47期

大きく息を吸った。澄み切った空気。
大きく息を吐いた。白く曇った水蒸気。

僕は、このアパートメントを出る。

ガラガラとスーツケースを引くかのように、僕はここで書いた文章を引っ張って
また新たな旅に繰り出して行く。

世界は沼だったとして、生きづらさは人間が抱えた砂袋のようなものだ。
袋の中に入った砂が重くて、抱えた人間は沈んでいく。
浮かべば簡単に呼吸が出来るのに、抱えた砂袋のせいで浮かび上がれない。
それは、本当に苦しいことなのだ。

僕は、大きな砂袋を抱えていた。
アパートメントに引っ越してきたとき、僕の砂袋は重くて湿っていて、どうしようもなかった。
何かを伝えたくて、何かを受け取りたくて、僕は必死だった。

砂袋が、浮き袋になれば良い。

そう思って書き始めたこの連載は、誰かの心に届いただろうか。
ふと、そんなことを考える。
生きづらさを抱えた人間が、僕の文章を読んだとき、少しでも砂袋を透明に出来ただろうか。

もしかしたら、自分の心に1番届いていたのかもしれない。

重く引きずっていた砂袋が少し透明になったとき、袋の向こう側が見えた気がした。
それは決して明るいだけのものではなかったけど、今の世界よりも未来が見えた気がした。

だからこそ、今日も生きている。

沼は辛くて、苦しくて、しんどいままの世界かもしれないけれど、それでも浮かべることを願って
抱えた砂袋が、すぐに透明に、浮き袋になるわけではないけれど、それでもいつか浮かべることを願って
アパートメントに並べていった数々の言葉たちを、大切に詰め込んでいく。

僕は、前を向いた。
ガランと空いた部屋の窓からは、新しい空気が入ってきた。

2ヶ月間、ありがとうございました。

haru

haru

GID(FtM)/ADHD(ASD傾向)/DID(多重人格)の診断済み20代。
障害者手帳3級。通信制大学の心理学部生。

ふらっとほわっとやんわり生きている。
国内で気軽に会える多重人格の人として、たまに活動中。

Reviewed by
三好 愛

僕は、このアパートメントを出る。

haruさんは書くことで、私たちは読むことで、少し生きることが楽になりました。haruさんの連載、最終回です。

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