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2F/当番ノート

「キャーーー!!!化け物!」

当番ノート 第57期

えっ、これが私ですか??

友達に化粧をしてもらった時の感想だ。

毎日きちんと身嗜みを整えていたはずなのに、小さな目は1.5倍になり、コンプレックスであるたらこ唇はなんだか艶やかに仕上がっていた。

見慣れた顔が文字どおり化けている。

自分の顔に自信がなく、思春期より自分はブスだなんだと自虐する癖がついてしまっているがゆえ、顔を目立たせたくない気持ちが化粧も控えめにしてしまっていたようだ。  

でも友達には私がどれだけ自分の顔に自信がないのかが伝わっていない。

多少周りに比べて劣っている、普段から自虐に走る傾向があると感じていたとしても、私を粧う彼女たちの前にあるのはただのまっさらな顔。

「ウワーこの色めっちゃ似合う!」

「やばい可愛くなる気しかしない」

「いいよー、スズキいい感じだよー」

私ってアイドルだっけ? とこちらが戸惑うほどの褒め言葉が終始飛び交い、顔には順調に色が乗っていく。

(なにが起こっているんだ……)すべてが終わり鏡を見る。そこでやっと冒頭の「えっ、これが私ですか??」に繋がるのだ。前段が長くてごめんよ。

まばたきの度に溢れそうなラメ。たらこだったはずの唇は、顔の主役と言わんばかりに色づいて、むしろチャームポイントになっていた。誰に似せることもなくそこにあるのは自分の上位互換。

目の下のクマに、不揃いの眉、短すぎるまつ毛、etc……。枚挙に暇がないはずの欠点をすべてぶっ飛ばして素敵なおねえさまがそこにいる。

「ウオーー! 明日からこれで通勤するわ!」

おい、卑屈な態度はどこにいった。

いろいろな角度から自撮り。目元のグラデーションのアップ。やべ、帰りにカラーアイライナー買ってこ。あ、リップどれ使った? 

手が届くものはすべてお買い上げ。帰り道も

「はい、こちら可愛い顔でございます。どうぞご確認くださいませ」

「気がつきました? アイライナーバーガンディなんですよ」

「唇艶やかですよね〜。知ってます!」

タイトルの「キャーーー!!!」はきっと歓声、黄色い声。化け物はいささか心外ではあるものの実際化けたんだから仕方がない。どうも、キュートな化け物です。

何度も手鏡を見てうざい白雪姫になり帰路につく。(連載2回目の「姫マインド」を取り戻したのか?)

小さい頃より「どうせ誰も見てないんだから」と言われて育ち、その言葉を「誰も見てないんだからおしゃれをしたって無駄」だと捉えていた。

いやこれ「誰も見てないんだから毎日可愛いを貫いてもいいってことじゃね?? 好きにしてよくね?」 なんと姫マインドに次ぎギャルマインド爆誕。

いやー、明日からの化粧が楽しみですな。

どうせブスだし……と卑屈で捻くれたベースの人格

わたくし手入れをすれば可愛いいんですの、口紅を持ってきてくださる? と宣うちょっとうざい姫

やったもん勝ちじゃね? もうちょいアイライン長く引こうぜ!! ゴーイング・マイウェイなギャル

顔面で行われる三つ巴の戦い。

……昨日は時間がなかったので、しばし休戦ということにして無難に済ませましたとさ。

スズキコトハ

スズキコトハ

なにかと粗忽な会社員。趣味は広告や看板を読むこと。小学生の頃ぶりに交換日記をしてみたいが相手がいない。

Reviewed by
藻(mo)

お化粧で映えられるのは羨ましい。
少女漫画でよく、メイクをしたら地味子が可憐に大変身、という展開があって、「そうか化粧をすればまともになれるのだ」と信じ切っていた時代が、私にはありました。実際は化粧をしても大した変化はなく、むしろ顔に色が乗ると素材の悪さが引き立つこともあるのだな……と、遅咲き18歳になってから知った。
だから、お化粧で「上位互換」になれるなんてなんて素晴らしいんだ!と、今週は、卑屈を通り越して純粋に羨ましい記事だった。姫マインドここにあり。

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