当番ノート 第55期
>>通過儀礼5日目 先週末、寝込んでいた。発熱したとかではなくて、右目が腫れた、ものもらいだった。 ものもらいぐらいで寝込むなよ……とは我ながら思うが、結構症状がひどくて、汚い話、黄色い汁が目からずっと垂れていて、まぶたの際で固まり、目が開かない状態が続いていた。 むりやりはがすと、かさぶたをひっぺがした時のように決壊してふたたび汁が垂れ、ぐじゅぐじゅとしたものが睫毛にまとわりつくので…
当番ノート 第55期
言うならば金のない有閑マダムのような生活をしている。だだっぴろいのっぺりとした平野が広がっているような私の日常は一言で言えば暇で、月2回ほどライターの案件の仕事をこなしていると言えど、それ以外は家事・動画鑑賞・散歩や読書などに費やされ、無為に時間を過ごしている気がしてならない。NetflixやYoutubeの巡回中に、膨大な選択肢から自分の観たいものを見つけられない時など、私って今社会的に死んでる…
当番ノート 第55期
どうして昔から変わらず愛し続けているものと、飽きてしまうものがあるのだろう。人は変化していくものだと思えば、その矛盾も当たり前のことだとも言える気がしないでもないけれど。 大事な思い出こそすっかり頭から抜けてしまうのは、なんとも悲しい。だからせめて「今」を切り取りたいのだと、言葉を綴ったり、絵を描いたり、写真を撮ったり、残すことにこだわるのかもしれない。それが無駄だっていい。自分が残したいと思った…
当番ノート 第55期
「みて。サボテン買ってん」 ある日の夜中、急にわたしの部屋の扉が開けるなり、そう言って上機嫌な彼女はビニール袋に入ったサボテンを見せてきた。手のひらに乗っかるサイズの深緑の球がタンポポの綿毛のような棘を纏い、そこに優しいピンク色の花をポンポンと髪飾りのようにつけていて、それは少し羨ましく思うほどにかわいかった。そしてそんなサボテンを無邪気に自慢してくる彼女が愛おしくてたまらなかった。 彼女はよ…
当番ノート 第55期
こんにちは mopoka です。 (いもぱるしからmopokaに変更) 従姉妹のお母さんが「宝のもちぐされだから」と、フェリシモの500色の色鉛筆をくださった。 私は、500色には到底及ばないけど、いろんな色の包装紙に包まれたリンツのチョコレートをお礼に贈らせてもらった。 たくさんの色は、眺めてるだけでも嬉しい。 けど、工場から出たままの長い姿。これからも長いままなのは、申し訳ない。彼らは、生み出…
当番ノート 第55期
>>通過儀礼4日目 初めてネイルサロンに行った。休日、仕事の関係者と会う用事があり、終わってから久しぶりに山手線に乗ったら昼下がりのがらがらの環状線が快くて、特に予定もなかったので半周以上乗りっぱなしでぼーっとしていたら、原宿に来ていた。 ああ、駅舎が建て替わったのだなあと慣れない順路で改札を出て、とりあえずラーメンを食べたところで、ふとネイルサロンというところに行ってみようと思った。 春の陽気。…
当番ノート 第55期
センシュアルという言葉の意味を知ったのは美容ライターをしていた時だった。私が公私共に美容で多忙を極めていたのは数年前なので、今のファッション誌にこの形容詞が登場するのかはわからない。官能的かつ知的で大人っぽい、みたいなニュアンスのあるこの言葉はコスメを紹介する身としては結構便利で、「センシュアルな透け感まぶたを演出するこちらのアイシャドウは〜」などと、おしゃれ用語を多用する文章を書いていた。 一方…
当番ノート 第55期
「変わった言葉の使い方をするね」と言われることがある。そう言われても、ピンとこない。じゃあどうやって使うのが正しいのか。正しい方がいいのか。 辞書を引いてみることも増えた。言葉でやりとりすることが大切なのはわかる、それでも、同じ言葉をみんな知ってか知らずか少しだけ違う意味で使っている。自分の表現したい「意味」はどこにあるんだろう、って少しぼおっとする。
当番ノート 第55期
この日、この絵で描いた場所に行った日、私とここに描かれている私の友人は、一緒に住む約束をした。 私たちは演劇のスタッフとして出会い、それから私の書いた脚本の舞台に出演してもらったり、定期的に彼女のライブを見に行ったり、たまにお家に遊びに行ったりする仲になった。彼女はどうしてそんなに人に優しくできるの?と不思議になる程、とにかく優しい人だ。あまり自分から何かを喋らず、人の話をどこまでも受け止め聞…
当番ノート 第55期
このアパートメントに、以前入居していらした方。神原由佳さん。 お会いしたこともありませんし、このアパートメントで、記事を読んで、いっぽう的に知った… だけの私なのですが、記事が心地よくて、たまらんくて。 そのレビューの早間果実さんの言葉も、心に絡まりまりまってきて。 じぶん一人の胸に納めておけなく。多くの方に読んでいただきたい衝動にかられ、勝手に絵を描きます。 まず、プロフィール写真を眺めつつ、記…
当番ノート 第55期
>>通過儀礼3日目 退屈すぎて、何も覚えていない。 シベリア鉄道、略してシベ鉄完走の卒業旅行は、イルクーツクでの途中下車を経て、後半戦に突入した。ここからは終点のモスクワまで下車なし、4泊のノンストップである。 前半4日は、なんだかんだと物珍しく、2段ベッドの昇り降り、貴重品をさりげなく枕元にうずめて眠る夜、車両連結部にだけ配置された電源にコンセントを差して盗られないように見張りながらスマホを充電…
当番ノート 第55期
食費を考えずにぽんぽんカゴに食材を入れ、その代金さえも親にせびるという堂々としたニートっぷりだった。私が用意するものはただ「料理でもするかー」という軽い気持ちだけで、冷蔵庫には栄養を考えた食材がある程度揃っていた。揃っていたのにもかかわらず、「今日私が作りたいもの」を作っていたのは実家時代の話だ。 でも、あの頃よりも経済観念自体を大きく発達させた今の私が切迫感なく生活を楽しめているのは、節約スキル…