当番ノート 第22期
はじめまして、日下 明と申します。 フリーランスのイラストレーター・グラフィックデザイナーをしています。 また、絵と音と言葉のユニット「repair」に所属し、そこでは絵とトロンボーンを担当しています。 朝弘さまよりお便りいただき、こちらに2ヶ月間、土曜日に入居させていただく事になりました。 さてさて、何を書かせていただこうか… 色々悩んだのですが、せっかくなので、僕の絵を描く道具でもある「デジタ…
当番ノート 第21期
▼三浦海岸/三崎口(後編) 人魚が騒ぐので、つりこまれるようにして、三浦海岸ゆきのバスに乗った。なるべく後ろの方を探し、ふたり掛けの席を選んで座った。車が走り出すと、人魚はしずかになった。 空はみるみる、すみれ色が深くなる。遠くに風力発電の風車が二本、浮かんでいる。車内のあかりが、私の顔を窓に映しだす。海から離れて山道をのぼり、バスは畑のひろがる丘に差しかかった。夕暮れの底に沈む畑は、夏のすいか畑…
当番ノート 第21期
わたしたちの根はどこにあるのか。わたしたちが持つ「物語」は何によって生まれ、わたしたちの「現在」は何の上に存在するのか。こんな途方もない問いかけに徹底的に向かうことが私にとっては重要なことである。 80・90年代の言論の如く、わたしたちの文化に根底などと呼べるものは存在しないと突き返してしまうのが最も容易な応答ではある。またその応答しか私たちにはできない。けれども一方で、わたしたちは現在に連続する…
当番ノート 第21期
さてー。 おつかれさまです! 公開が遅くなってすいません。 いま、すみだの食育の全国大会の打ち上げが終わって、 事務所というか、シェアオフィスに戻って来たところ。 なんと言うか上気している状態でこれを書いています。 墨田区の食育は、大小200近くの団体や個人がそれぞれに持ち寄れる企画を持ち寄って、 みんなで協同しながら、それぞれがそれぞれに最大限の過程がつむげるようにする活動で、 なんと県や政令指…
当番ノート 第21期
ガシャ、ガタガタン、バサバサバサッ いたた・・・ あっいつの間に!いやはやお恥ずかしいところを見られてしまいました・・・ えへへ (なにをしてるの?) あっ、私ね今月末でお引っ越しするんです。 そのための大掃除! (えっ!) うふふ、あっという間だったなあ、このアパートメントにお邪魔出来て本当に良かった。 素敵な住人さんに沢山出逢えたのよ。 もちろんお話を聞いて下さっているあなたたちに出逢えたこと…
当番ノート 第21期
倉庫とパッケージ、8。 トリガー、の話。 僕らは普段、沢山の事を記憶している 束の間、街ですれ違った誰かの香水の香りから 幼い頃、想像を膨らませた架空のヒーローの必殺技まで 記憶は多岐に渡っている 時折、その事実の真実味について懐疑的な気持ちになるけれど それでも、 僕らの頭のどこかにその景色や音や香りが鮮明に存在する以上、事実はどうあれ、 それは真実なのだ 僕は職業柄、台詞というものを記憶する …
当番ノート 第21期
▼三浦海岸/三崎口(前編) 朝になるまでに、人魚の体はみっしり固くなってしまった。荒い呼吸はおさまったが、ほとんど動かなくなった。うろこにつやがなくなり、体も顔もにぶい色にくすんだ。私がにぎっていた小さな手も、乾いて冷たくなった。人魚が静かになって、半日ほど経った。私はすっかり元気をなくしていた。この子も、Nの人魚と同じ運命になるのか、と観念しかかった。 ふと人魚の乾いた背中に、ひびが入っているの…
当番ノート 第21期
「神話や儀礼は、しばしば主張されたように、現実に背を向けた「架構機能」の作り出したものではなくて、それらの主要な価値は、かつてある種のタイプの発見にぴったり適合していた(そしておそらく現在もなお適合している)観察と思索の諸様式のなごりを現在まで保存していることである。ある種のタイプの発見とは、感性的な表現による感覚界の思弁的な組織化と活用とをもとにしてなしえた自然についての発見である。 」(※1)…
当番ノート 第21期
昔読んだ漫画で、主人公が空中に投げ出されて落ちていくシーンがあった。 主人公はもちろん絶叫する。 するとすぐ脇にいた別のキャラクターが「絶叫とは、余裕だな」って言う。 すぐにその意味に気がついて、冷静になった主人公は自分の体勢を立て直す。 一度くらいしか読んでいないと思うけど、何度も何度も頭に浮かぶシーンだ。 もしかしたら、詳細は全然違うかもしれないけど、 いつもそれを大事に思い出してる。 将来に…
当番ノート 第21期
カラン、カラン、 いらっしゃいませー わーーーーーー! ・・・どれにしようかなあ・・・ フレッシュなイチジクに瑞々しい白桃、黄色と橙色が交互に並んだオレンジとグレープフルーツ こっちは胡桃とアーモンドのキャラメリゼ・・・ あっ!こっちにはたっぷりのカスタードクリームとソテーしたバナナが! あっこっちには お客様、お客様 は、はい! ケーキは逃げ出したりしませんので、どうぞごゆっくりお選びくださいね…
当番ノート 第21期
倉庫とパッケージ、7。 音楽、の話。 忘れないように努めていることは、 やがては忘れてしまう事であり、 思い出さないようにしていることは、 何かの拍子に必ず思い出してしまう事である。 この二つの事柄は、 或いは別々の倉庫に同じ名前で保管されているか、同じ倉庫に別々のパッケージで保管されている。 つまり、 記憶というものは僕たちの意思や考えだけでは完全には管理できないもので、その類似性が記憶の引き出…
当番ノート 第21期
今週はルーマニアあれこれ。主に出会った人々の話。 まずはタクシーの運ちゃん編。 ・総論 6割が陽気に延々と話し続け、3割が真面目に黙って運転し、1割が超絶陽気に女の子を斡旋しようとしてくる。 ・タクシーの運ちゃん① 乗ったらいきなり「お前日本人か?」と言われ、そうだと言うと「これ直せる?」と携帯を見せられる。エンジニアじゃねえって。 ・タクシーの運ちゃん② 物凄い高速で運転しつつも、敬虔な…