当番ノート 第14期
僕は魚釣りが好きで海や川へよく出かける。 ジリジリと肌を焼き、あちこち虫に刺されながら刻々と変化する潮や風を読み、 朝早くから夜遅くまで水辺に立つ。 そんな釣り人の心理は単純なもので、遠くのポイントには手前よりも大きな、そしてたくさんの魚がいるように錯覚する。 全力で投げて、巻きとり、少しでも遠くのポイントを狙う。 そのほとんどは空振りとなってルアーだけがするすると返ってくるのだけど、 小刻みに震…
当番ノート 第14期
はたち 平吹正名 A はたち。 B そうね。 A はたちかあ。 B そうだね。 A はたちだよ。 B うん。 A 。。。 B ゴールが見えた。 A 見えた。 B 。。。 B あおいね。 A お腹空いたなあ。 B ラーメンかな。 A 簡単だな。 B 簡単じゃないものってあるんだね。 A 何それ? B お姉ちゃんは、みそじになって本当の大人なんだって言ってた。 A え? B 現実…
当番ノート 第14期
まだ少し寒さが残るので 今回は濃厚なガトーショコラを選んでみました。 湿り気を含んで みちみちに詰まった重厚感あるチョコレート生地と 新雪の様にキメ細かく柔らかで、表面に僅かな艶のあるクリームの 黒檀と白の対比。 またそのクリームの、垂れそうで垂れない ギリギリの緊張感を留めた曲線フォルムに一目惚れです。 まるで彫刻のような佇まい。 近寄って色々な角度から見たいと思わせる盆栽的面白さもあって ケー…
当番ノート 第14期
今回は前回に引き続き、私の作品について書きたいと思う。 私の光のシリーズは前回書いたように祖父の記憶からスタートした。 現在私は祖父以外の写真でも同じように光を透す作品をつくっている。 そこに祖父の時とは共通するところや、また違う意味を込められると感じているからだ。 この作品は友人から頂いた写真がもとになっている。昔の結婚写真だ。よくみると男性は軍刀を持ち、軍服を着ているので出征前の姿だと思う。友…
当番ノート 第14期
“偽一番星注意報” 1989年4月1日 最高気温16℃ 最低気温5℃ 快晴 午后2時、動物園内にある食堂にて遅めの昼食をとる。今日は新鮮なサラダとボロネーゼ。本来ならメインデッシュはボロネーゼの方だが、私にとっては新鮮な野菜をふんだんに使ったサラダが食べられることの方が嬉しかった。南極で最も寒さが厳しい地域にある私の観測所では、生鮮野菜を食べることができなかった。年間の気温がプラスになることもな…
当番ノート 第14期
私は海外育ちなので、日本語の文章を書くのが苦手だ。苦手というか、自分ではわからないけれど文章を書くと必ず誰かに「英語を直訳した様な感じだね」と指摘されるので、書くのが恥ずかしい。先週の投稿も早速妹にそう言われた。 文章以外にも、周りから言われて初めて気づいた事がたくさんある。よく言われるのが、 1.相づちの「うん、うん」が集中してくると「aha, aha」になる 2.話しているときに寿司を握ってい…
当番ノート 第14期
「 黒豹と少女 」 ほんの少し意地悪な少女は 黒豹を騙して、奴隷にしてしまった。 見えない鎖が二人を繋いでいる。
当番ノート 第14期
その日もたぶん同じ朝ご飯を食べていた。 まだ、ビールをおいしく飲めていたころだったのでトーストと冷たいカフェオレ。 ジャムはイチジクだったような気がする。 僕は販売の仕事をしている。一応「長」がついていて、部下だって少ないけれど2人いる。 毎日それなりに忙しく、販売という仕事特有の苦悩も少なくなかった。 繰り返される日々に加えて、仕事を無理矢理こなした時に感じる違和感。 例えていうなら動かせるか、…
当番ノート 第14期
わたしの左手と握手しましょう 平吹正名 伝染りたくないものほど伝染ってしまうものだ。 ずしりと重いわたし、 羊羮のようにまとまるわたし、 のたっと天井まで持ち上がりあの日の木目を探す。 「がんばれ」左手のわたしのシャーペンの軌跡。 攻めてばかりの毎日だから今日は右手を撫でてあげる。 昨日のあなたは発疹と喧嘩しただけ。 わたしもワンサイズ余裕のあるシャツを着るようになったから大…
当番ノート 第14期
ケーキを描いた絵画の中で 初めて「これは面白い!」と感じた作品は 高校の美術教科書に載っていたWayne Thiebaudの”Cakes”でした。 http://voices.washingtonpost.com/blog-post/2010/09/wayne_theibaud_google_cakes_an.html (The Washington Postより) 196…
当番ノート 第14期
写真が好きだ。 私が世界と繋がる橋を架けてくれたからだ。 私は写真に私は穴をあけ、光を透すことで作品を制作している。 光の空白は、空白だが無ではない。 空白は観る人それぞれの心に繋がっていってほしい。 思い、過去、託したかったこと、葬りたいこと、願望、悲哀、歓び。。 その空白の中にいくつもの物語を込めてほしい。 私がこのように考えだしたのはきっかけがある。 私が小学校の時に亡くなった祖父の存在。 …
当番ノート 第14期
#01 巻層雲を食む これは奇妙なアパートメントの住人にして、偏屈な哲学者でもある、私の唯一の友人の話である。 彼はフランスに住んでいる。私は南極に住んでいる。 私は南極大陸の沿岸部にある観測基地、昭和基地よりも1300kmも南に位置する、とある観測所の研究員である。私はそこで、ずっと単独で観測と研究を続けている。ご近所さんはアメリカの観測基地、プラトー基地だが私が南極へ移り住んだ時にはもう…