当番ノート 第14期
「 オオカミと少女 」 少女とオオカミはいつも一緒。 深い森の奥でひっそりと暮らしていた。 少女はだんだん大人になり森の寂しい暮らしより 街に出て知らない世界をみたくなった。 オオカミは森の入り口で少女の帰りを待ち続けていた。
当番ノート 第14期
僕はいつもより早い時間にトーストを焼き、恋人はカフェ“ラテ”を淹れていた。小さいクモの「タジマさん」の姿はここしばらく見ていない。ぐっと寒くなってきているから、どこか薄暗い隙間の奥でじっとしているのだろう。「タジマさん」がそうしてくれていることは「タジマさん」にとっても、僕らにとっても都合がよかった。というのも、恋人はクモに限らずムシの類いが得意ではなかったからだ。もし、「タジマさん」が不用意に…
当番ノート 第14期
こんにちは、平吹正名です。正名という名前は、母親が大学生のときのゼミの先生から頂きました。 と、 春に文句のひとつも言いたくなる寒さの毎日、皆様いかがお過ごしでしょうか? この一週間、武蔵野美術大学映像学科の授業に行っていました。 僕は主に、生徒たちがお芝居をするのをみたり、自分もお芝居のデモンストレーションをしたりしました。 お芝居は、携帯電話を見た見られたという状況の、短いテキストを用いました…
当番ノート 第14期
アメリカで過ごした高校時代、 ケーキと言えば ほぼホールで箱買いでした。 クリームとカスタード山盛りなバナナパイ。 食べ物なのに「自然界にはありえない」ドぎつい着色のバースデーケーキ。 舌に砂糖のザラっとした食感が残る、 チョコレートフロスティングたっぷりのデビルズフードケーキ… などなど記憶の中のケーキは全てインパクト大で 味はともかく、見かけと 皆で切り分けて食べる楽しさがありました。 トルコ…
当番ノート 第14期
1989年4月20日 最高気温16℃ 最低気温7℃ 快晴 今朝、アパートのポストを開けてみると手紙が入っていた。白い封筒には私の名前が書かれていたが、切手も差出人の名前も無かった。 銀の封蝋を丁寧に剥がし、開けてみるとケント紙のような厚めの紙が一枚入っていた。 “恒例・ミクロ天体観望会ご招待のお知らせ” 聞き覚えのない会合だった。その文字のすぐ下を読んだ。 “満月、日没後より開催。各々、夜食…
当番ノート 第14期
先日夢をみた。 「赤い風船を十五個用意して」と頼まれたから用意して渡したのに、風船のことをすっかり忘れられて、風船はどんどん萎んでる。どうしようどうしよう、と思ったけれど、しぼんでもしぼんでも風船は浮いたままで、ずっと見ていたらクランベリーの木みたいになった。 今回は、その夢で見たものににいろいろ混ざった絵と詩。 ——————…
当番ノート 第14期
わたしのおばあちゃん、「玲子さん」と呼ぶ。 何でも、玲子さんの兄弟二人とも、外国に住んでいて、外国では名前で呼び合うらく、 名前でよんでほしいとの要望で、中学生の頃から名前で呼ぶようになった。 そんな玲子さん。 眼鏡をかけていて、小柄でかわいらしいおばあさん。 でも頑固で几帳面でさっぱり明るい性格。 気さくな方で、よく電車で横になった人に話しかける。 昔は学校の国語の先生。 子供が生まれるも、ベビ…
当番ノート 第14期
僕は魚釣りが好きで海や川へよく出かける。 ジリジリと肌を焼き、あちこち虫に刺されながら刻々と変化する潮や風を読み、 朝早くから夜遅くまで水辺に立つ。 そんな釣り人の心理は単純なもので、遠くのポイントには手前よりも大きな、そしてたくさんの魚がいるように錯覚する。 全力で投げて、巻きとり、少しでも遠くのポイントを狙う。 そのほとんどは空振りとなってルアーだけがするすると返ってくるのだけど、 小刻みに震…
当番ノート 第14期
はたち 平吹正名 A はたち。 B そうね。 A はたちかあ。 B そうだね。 A はたちだよ。 B うん。 A 。。。 B ゴールが見えた。 A 見えた。 B 。。。 B あおいね。 A お腹空いたなあ。 B ラーメンかな。 A 簡単だな。 B 簡単じゃないものってあるんだね。 A 何それ? B お姉ちゃんは、みそじになって本当の大人なんだって言ってた。 A え? B 現実…
当番ノート 第14期
まだ少し寒さが残るので 今回は濃厚なガトーショコラを選んでみました。 湿り気を含んで みちみちに詰まった重厚感あるチョコレート生地と 新雪の様にキメ細かく柔らかで、表面に僅かな艶のあるクリームの 黒檀と白の対比。 またそのクリームの、垂れそうで垂れない ギリギリの緊張感を留めた曲線フォルムに一目惚れです。 まるで彫刻のような佇まい。 近寄って色々な角度から見たいと思わせる盆栽的面白さもあって ケー…
当番ノート 第14期
今回は前回に引き続き、私の作品について書きたいと思う。 私の光のシリーズは前回書いたように祖父の記憶からスタートした。 現在私は祖父以外の写真でも同じように光を透す作品をつくっている。 そこに祖父の時とは共通するところや、また違う意味を込められると感じているからだ。 この作品は友人から頂いた写真がもとになっている。昔の結婚写真だ。よくみると男性は軍刀を持ち、軍服を着ているので出征前の姿だと思う。友…