当番ノート 第11期
月はかわって11月、霜月。日本諸国にも出雲から神様たちがお戻りになっていることでしょう。 先月10月は神無月でした。八百万の神様たちが会議をするために出雲の国へお出でになってしまうため、そう呼ばれるようになったのは良く知られているところです。 今年2013年は、伊勢神宮でも大祭がありました。 20年に1度、正殿を始め御垣内などの社殿を造り替え、さらに殿内の御装束や神宝を新調して御神体を新宮へと遷す…
当番ノート 第11期
初めて一眼レフのカメラにふれたのは高校1年生の頃 引っ越しをしてからずっとしまい込まれていた段ボールの中にあったそれは 付属の革のケースが砂のように劣化していて手に取るのも躊躇うほどだった。 むかし祖父が使っていたものらしいのだがそこまで極端に古いものでもなくカメラそのものはしっかりと動いた。 その精密機械が発する空気みたいなものが持ち歩くのは少し怖い感じがしたけれど なんだかフィルムを巻き上げる…
当番ノート 第11期
『価値』について ホトリニテの宿泊料金は、1泊素泊り3000円です。題に3000万円とありますが、間違いではありません。世の中で公式にもっとも高額とされている宿泊料金はおよそ1泊350万~420万円ぐらいが相場です。その一夜を特別なものにする。そこにどんな大金持ちでも1泊素泊まり3000万円もだして宿泊する人など、ほぼいないでしょう。3000万円あったら、そのもの(宿泊施設)を作りますからね。 こ…
当番ノート 第11期
いつもお墓参りに向かう山道の途中にある、 小さな川と並走するように見えない向こう側へと伸びていく小径に惹かれていた。 そして、ある日のこと、その小径の入り口に深緑色の看板が立てられていることに気がついた。 あの小径の向こう側、何かできたらしい。 「ねえ、今日は帰りにあの小径の先に行ってみようよ。」 小さな車が一台通れるか通れないくらいの幅の狭い道をおそるおそる抜けてゆくと、 そこに古びた洋館があら…
当番ノート 第11期
高い空を泳ぐ鰯雲と冷たい匂いの混じり始めた風、色づき始めた木々の枝葉から差し込む光はモザイク模様を地面に描いている。何が男の心に訴えたのか、さして理由があるわけではなかった。しいて挙げるとするなら、そう、午後の柔和な日差しがそうさせたとしか言いようがない。男は、この10年間ほとんど思い出すことのなかった友人をふと思い出し、訪れようとしていた。さてどんな顔をして行ったら良いものか、男は思った。親しか…
当番ノート 第11期
ローソクを引っこ抜くと、 穴がのこる 穴ばかりが目立ってしまってつまらない ケーキ食べるときいつも思うんだよ。 ローソク立ててさ、火をつけて電気を消して お金持ちみたいな色に照らされて ゆらゆらしてるケーキが一番おいしそう いま私の目の前にあるケーキは穴だらけでさ 食べる前から気が滅入ってしまうよ もしこのケーキの上を歩けと言われても ずいぶ…
当番ノート 第11期
これはプシュケーでした。 分野を映し出す。そう激しく覚える。行方どこでどんな変換された懐疑。非常事態の模倣に取り組む人々がいた。五十路からのパルに耳鳴りも、そして、これからの無関係、今あらゆる感情の渦、一人でも多くの人にこの事実、情報を送る。 何とも言えない光景の裏、事情、効果。何とかこのセクタを”鏡”のような心で、私達に帰する暗唱。悲しく、あまりにも辛い。無力を誰もが調査、重視を立とうとした。そ…
当番ノート 第11期
「雨過天青雲破処」 当時、僕にはこの単語が漢字の羅列として目に入ってきました。それでも、日本人の僕には表意文字である漢字を読みとろうとする欲があるので「雨の過ぎ去った空の雲の切れ間」にある ー「何か」ー に思いを馳せる感じなどと、ちょっとばかり格好の良い意味としての訳を捻り出したのを覚えています。実際はというと「雨の過ぎ去った雲の間から見える空の色」という意味で、「うかてんせいくもやぶれるところ」…
当番ノート 第11期
寄せては返す波のように 音は何度も繰り返す 水際に反射する光のような人々と共に ———————————– 美大に入ったのは学歴やら学びたいことの為ではなく、 環境やそこにいる人々と関わる為だった。 まだその頃は漠然とモノをつくることをしたいとしか思っていな…
当番ノート 第11期
とらえどころのないものや、どうしてもはっきりと言葉にできないものに、すごく惹かれます。たとえば「世間様」。たしかにあるんだけれど、だれもその実態をつかめないという不確かさ。音楽をやっていた時も、他者とのあいだに自分が作る表現があるのだと思っていたし、今も宿をしていて来てくださるお客さんとのあいだにこそ、「芸」があるのだと思っています。 間の大切さ、間の不確かさ。 ホトリニテで繰り広げられる、さまざ…
当番ノート 第11期
2012年 4月27日 当たって砕ける きのう、夜になっても胸のぼこぼこがおさまらなくて、時間外だったけれど病院へ行った。 行くまえに、どうしても彼に返事をしておきたかったけれど、 長文は打てそうになかったので、伝えたいことだけ書いて送った。 今朝、いつもと変わらぬ返事が来た。見事なスルーぶり。 短くさっぱり書いたつもりだったけれど、それでもびっくりさせてしまったみたいです。 当たって砕けるよりも…
当番ノート 第11期
面接官が入ってくるとざわついた空気がピンと張りつめた 500を超える受験者たちの目が一斉に面接官の姿を追う 面接官は受験者たちの前に立つと深々と一礼し 開口一番に言い放った 「男性はお帰りください」 会場がどよめいた 「前もって言っておけ」 「書類審査で分かることだろ」 そんなつぶやきがあちこちから聞こえた 無理もない 応募資格には「粘り強く仕事のできる方」としか明記されていなかったのだから だが…