当番ノート 第9期
自分の 好きなことしか興味なくて よく 文字の中の世界に籠ってる たまに 顔を上げて足を踏み込むと 自分が 少し人とは違うと思い込み 壁作っては よく壊される そんな時は お酒を飲んで 強制的に脳内へと現実逃避 イヤホンで 耳を塞いで 好きな音楽の歌詞を 心に染み込ませては いつの間にか 夢の中へと帰ってゆきます そしてまた今日が始まる。 自分の好きなことしか興味がない日々。 たまに…
当番ノート 第9期
おかあさん、 お母さん。 お腹が痛いとき、ゆっくりとおへそのあたりをさすってくれる手。 お母さんを思い浮かべて一番に出てくるのはそんな記憶。 お母さん。 わたしのお母さん。 わたしはよくお腹を壊す子だった。 でも、どんなに痛くても、お母さんがぽんとおへそをひと撫で、それだけでたちまち痛みは飛んでいった。 その手はいつも台所の洗剤のにおいがして。幼いわたしがじゃれつくたびに、お皿を洗い流すあの清潔な…
当番ノート 第9期
僕が小学校にあがる頃、家族と一緒に暮らしていた小さな集落にある出来事がおこった。 それは、新たな高速道路の建設計画で、集落を縦断する大規模なものだった。 しかも、僕たちの家はちょうどそのルート上にあったのだ。 やむなく、僕たち家族は立ち退きを迫られた。 隣近所、といっても近くて数百メートルは離れてるような閑散としたところだったので、 その集落で道路建設のために立ち退たいのは結局我が家を含め数軒…
当番ノート 第9期
玄関のドアを押し開き、嵐が通り過ぎたあとの、ピカピカに磨かれた空気の中へ出た。 私は白いシャツを選び、カメラを入れたポーチを提げているだけで、雲を羽織るように身軽なスタイルだ。 通りを抜けるひんやりとした風が、私とすれ違うとき、ちょっと襟に触れ、袖を引いてからいった。 角にある清水屋さんの前に差し掛かると、今し方揚がったばかりのコロッケが銀色のトレーに並び、「野菜コロッケ 四十五円」という…
当番ノート 第9期
あたかも、ここに或るかのように、ここに居ること。 ほどけそうで成り立つ糸のように。 真っ白な嘘をついて、 僕そのものだった、あの頃のように。 どんなに時を運んでも、どんなに時が揺らんでも、 それらはあたかも、 ここに或るかのように、ここに居てしまうのです。
当番ノート 第9期
. 君が落っこちてしまった 僕も落ちたら君はぺしゃんこになってしまう まってて 木の実が育つまで 僕がたくさんお話をしよう 夜になったらライトをつけよう 君のすきなお花をあげる 君がさみしくないように 毎日お話をしよう . . . . 君がもどってきてもさみしくない星にしておくよ .
当番ノート 第9期
日々の中で、わたしたちは些細なことから、その先を大きく変えることまで、 いくつもの選択を繰り返しながら生きている。 それはどちらかではないときもあるし、 ひとつしかない場合もある。 ひとつしか訪れないときはきっと、そうなる前に、その方向へのなんらかの選択をしているのだろう。 そうしてひとりひとりに訪れた選択の中には、 運命や偶然や必然などと呼ばれるような、縁が降ってくる。 その縁は他者と他者との選…
当番ノート 第9期
おはよう。 こんにちは。 こんばんは。 はじめまして。 お久しぶりです。 お元気ですか? 僕は元気です。 あなたが どんな人で どんな時間に どんな気持ちで この文章を 読んでくれているのか 僕にはわからないから すべての人に向けて まずは ご挨拶。 春の終わりにひょんな出会いから憧れていたこのアパートメントに入居することになり、準備も2週間足らずとドタバ…
当番ノート 第9期
これは、わたしの色。 わたしを、あなたを、色にするなら何色だろ。 色は言葉よりもっと、人の、深くやわらかな腹の底を知ってる。 これがわたし。初めまして。まだ無色透明のあなたへ。 わたしは筆を握ってた。絵の具にさわった一番古いイメージ。 記憶の切れ端、幼稚園で、ちいちゃい手でおえかき道具を散らばした。 うすだいだいのクレヨンがぴりりと青い水彩をはじく。 真っ青な水、泳ぐ人、きみどりの浮きわ。 ちいさ…
当番ノート 第9期
その瞬間に過去になり、今の姿を閉じ込めたまま、未来にのこっていく。 僕は、写真の持つそんな力にとても惹かれる。 写真を通すことで、時間を自由に行き来することができるからだ。 僕が思い出せる最も古い記憶は、30年以上前のことになる。 あの時、どんなふうに光が射していたか、どんな音が聞こえたか、 どんな風が吹いて、どんな匂いがしていたか、今でも鮮明に思い出すことができる。 これは僕が幼稚園だった頃の話…
当番ノート 第9期
一番の深夜というものがあるなら、きっと、この時間のこと。エレベーターは、扉を閉めると音を立てなくなった。照明は落ちていて、私は青ざめた色の廊下を歩いていく。 マンションのドアを後ろ手に閉めると、誰もいない部屋が、暗い青で満たされてそこにある。───この光は、月の横顔でもあるんだろうかね───返事はなく、出窓から月光が流れ込んでいる。水のように。 水のようだ。水のように、青暗い光でいっぱいの水…
当番ノート 第9期
僕らは、単にそれをしている。 僕らは、単にそれをしている。 いろいろなことに気がついて いろいろなことを抱いても 僕らは、単にそれをしているだけなのです。