当番ノート 第43期
音楽家を志そうと決心した時に、私は人生の森に自ら迷い込んだ。 勤めていた高校教諭の職を辞し、退職金を当てにして、欧州音楽留学、そしてリスト音楽院大学院修了まで辿り着くことができた。しかしその頃までには、10年働いて貯めた留学資金を使い果たそうとしていた。 お金が無いので、もちろんこれから住む家も無い。4年間の留学生活で連れ添ったピアノも置く場所が無く、泣く泣く知人に譲った。残ったのは大量のオーケス…
当番ノート 第43期
4 魅力のなさ、さみしさ、壊れかけていること アパートに住んでいると隣人には関心を向けないが、一方たとえば存在しないように振る舞うことで存在しないことにできるという存在の毀損は私たちを無へと追いやる。日本語の問題として言うならば芸術と無は森羅万象に含まれない何かであるが、森羅万象に含まれないことは芸術と無を毀損する。グローバリズムと産業の終わり、または全ての資本主義が単なる運動、あるいは全ての運動…
当番ノート 第43期
10。生まれてからこれまでにした引っ越しの回数。ほとんど二年に一回のペースだ。 ある場所から別の場所へ住居を変えるというのは、なかなかに労力の要ることだと思う。荷物をつめたり、電気ガス水道を契約し直したりといった引っ越し作業はもちろん、お世話になったみなさんに別れを惜しむ挨拶をし、新しい土地に移ってからは、見慣れた景色へのノスタルジーを愛撫しつつ、そこにあるコミュニティーになるべく早く順応する。こ…
当番ノート 第43期
初めましてこんにちは。 そにっくなーす a.k.a. ひのはらみめいと申します。 どちらで呼んでくださってもかまいません。 まりこさんの紹介にて連載はじめさせていただくことになりました。どうぞよろしくお願いいたします。 慣れるまでちょっとどう書いたらいいか的なキョドりかたをすると思いますが通勤時の意識飛ばしや暇つぶしくらいには有用なことが書いてあるのでぜひついてきてください。 『フィルス』という映…
当番ノート 第43期
ドナウ川の流れる街、ハンガリー・ブダペストで、私は音楽の勉強を続けている。 ハンガリーとの出会いはかれこれ24年前。高校時代に所属していた吹奏楽部で、ハンガリーへ演奏旅行に訪れたことが契機だった。デブレツェン、ケチケメート、そしてブダペスト。ハンガリー人のおおらかな人柄に惹かれると同時に、いつかここで音楽を勉強したいと夢を描く自分がいた。 高校卒業時、幼馴染みで高校も一緒に楽器を演奏していた仲間の…
当番ノート 第43期
0 ステートメント 従来の芸術には、大別して二つの系譜があったように思われます。 一つはある特定の社会や集団を素材に、存在する矛盾や運動ないしは抵抗や性質を、具体的かつ徹底的に批評していこうとする、いわば国民国家を前提とした芸術。 もう一つは本人の極端な経験や固有の知識、あるいは新たに発明された技術を踏まえ、我々人類が誰しも直面するほとんど暴力的なまでの人生の不毛さを共有するための、いわば質や精神…
当番ノート 第42期
イスラエル(15℃)→ニューヨーク(-10℃)→オーストラリア(30℃) NYはとにかく寒い。来週にはオーストラリアへ向かうことになっているので、二週間で冬と夏とを体験することになる。イスラエルは気持ちのいい気候で、自然と地元の人との話もはかどった。しかしここNYではそうはいかない。誰かが声をかけてくる雰囲気をかもしだそうものなら、お願い、立ち止まるの無理!声かけないで!だって寒いんだもん!と、…
当番ノート 第42期
・・・ こんばんは。当番ノート42期のヨシモトモモエです。 毎週火曜は私のお部屋で、のんびりしていきませんか。 27歳・実家暮らし。 会社勤めを楽しくしながら、家業を手伝い、踊りなどもしています。「踊れる・食卓」では日々のくだらなくて、けどすこしくだるなぁ、と感じたことをゆるっと書いていきます。 ・・・ 第九回:ソルティおにぎり 母が風邪を引いた。 いつもそうなのだけれど、誰かが風邪をすると、母は…
当番ノート 第42期
先週の土曜日、朝の8時頃にヘルシンキの中央バスターミナルに着いた。眠かった。ターミナルにあるキオスクの前から、朝ごはんを食べている友達のマリ*を見つけた。もう一人の友達、ロッタは、バスの出発時間より5分前に急いでやって来た。私たち三人は高校の同級生で、クオピオと言う東フィンランドの都市へ向かおうとした。二年前にもう一人のクラスメートハンナが、その都市へ引っ越したのだ。 私にとってクオピオへ行くのは…
当番ノート 第42期
からだがミシミシと悲鳴をあげている。。。 私の膝は前十字靭帯と半月板を損傷している。新体操選手時代に背骨も二つ左にずれてしまった。なので、ちょっと一生懸命踊り出すと膝と腰を支える筋肉群が唸り声をあげはじめる。。。そう、いまだってほら。。。 ダンサーはアーティストだが、それと同じくらいアスリートだと思う。もちろん、身体を鍛えていなくても、高齢でも、踊れる踊りはある。ダンサーは何歳まで続けられるの?と…
当番ノート 第42期
・・・ こんばんは。当番ノート42期のヨシモトモモエです。 毎週火曜は私のお部屋で、のんびりしていきませんか。 27歳・実家暮らし。 会社勤めを楽しくしながら、家業を手伝い、踊りなどもしています。「踊れる・食卓」では日々のくだらなくて、けどすこしくだるなぁ、と感じたことをゆるっと書いていきます。 ・・・ 第八回:漬物というルーティーン こうやって毎週アパートメントに、私が自由気ままに書いた文章を載…
当番ノート 第42期
この連載を始めた時、新しい部屋と8月に戻って来た母国を何とかして心地よい場所にしなければならないと書いたが、気づいたら早いものでもう一月の中旬になり、何もしてない。カーテンもカーペットも購入していない。ちょっと変わったのは、ぱっさりと切った髪の毛だけだが、それだけで気分が変わる訳ではない。 冬のフィンランドの日常について、誰か他の人が書いたら、私より百倍面白い話になると思う。アウトドアが好きな人で…