管理人室の往復書簡
かおちゃんや。 こんにちは。 アパートメントの寅さんこと、はるえです。 いやほんとに書けなかったね。 最後に書いたのはいつぐらい前かなといま確認したら。去年の5月。9ヶ月。半年くらいかとばかり思っていた。 かおちゃん、年があけて今日は、1月16日だ。 そう、わたしたちが東京のカフェで会った日だ。アパートメントをつくろうとなった日だ。 記念日関係、自分の恋人の誕生日や別れた日とかおいっこの誕生日、高…
管理人室の往復書簡
かおりさんへ まあ、相変わらず道は見つからず、迷子のままの私です。 なにを見ても言っても感じても、そこにある事実の前に最後、自分はからっぽになる。 でもね、このままでいいや、からっぽのままでいいや、どうしたって満ちることはないし、ならば空虚のなかに身を投じてその後のことはその時に考えようと思っているよ。 自分がからっぽだと自覚できるのは、しんどいがしかし、いいことかもしれない。 過去に重ねてきたも…
管理人室の往復書簡
かおりさん 今日のいわきは霧雨で、霧吹きで顔を冷やされているようで、いい気分です。 21日に、夜ノ森(よのもり)という地区に行ってきたよ。 そこは福島の双葉郡、富岡町にある地区。 とおり沿いに桜のトンネルができる名所で、春になると本当に多くの人々がそこを訪れていた。 原発事故のあった福島第一原発からの距離は7~8キロくらいで、今は警戒区域になっている。 桜というか、「場所」って、ひとりひとり、さま…
管理人室の往復書簡
かおりさん 東京はもう桜が散る頃かな。 いわきは、今日現在つぼみの時期。ふくらんでいるし、桜って「限界!」ってとこまでがまんして、ぽんと咲くから、きっともう満開の時期は近い。 むかし聞いた話で、へえ知らなかった!て思ったのがね、桜はすべての樹がおなじDNAなんだよって話。 1本の樹からはじまって、その樹から枝を分けて全国に広がっていったんだって話。 DNAがおなじだから、おなじ場所にいる桜はおなじ…
管理人室の往復書簡
かおりさん もうすっかり3月も終わりのほうになってしまっていた。 光の早さで時は経ってしまうね。 なんかね。 今年の3月11日が来るにあたり、なんというか、少しあの時の感情とか起こっていたことを必要以上に思い出してしまい、歯を食い縛っていた自分がいて、肩がこっちゃったよ。 同じことは二度と起こらないけれど、同じような事象があるのではないか、もしそれが起きた時に自分は、積み重ねたものをフル装備して冷…
管理人室の往復書簡
かおりさん 先日はどうもありがとう。 ギャラリーのタナカさんや、清史さん、そして森山隊長とも逢えたし、嬉しかったし、そしてさ、緊張した。 なんでこうも、ただ逢いたかったひとに逢いに行っているのに、嬉しいのに、話せばいいのに、固まるのだろうか。 おとなになればなるほど、緊張の度合いが>(だいなり)になっている気がしている。 シンプルに「わーい」って思っているのになあ! 展示されていた写真のこと、うま…
管理人室の往復書簡
かおりさん こちらもすっかり遅くなってしまってごめんね。 なんか、紙吹雪みたいな毎日です。ちりじりに広がっては落ちていく。 集めきれないものもあって、走って拾いに行くみたいな。で拾えないの!なにこれ!とか思ってる。 すべてが手に入るわけは、ないのにね。 フィルムで写真を撮ってみたいな。今度ね、ホルガを友だちに貸してもらうことになっていて、それがすごく楽しみだったりする。 カメラのことはよくわからな…
管理人室の往復書簡
かおりさん こないだは「気持ち大盛り上がり」な日記を書いて若干こそばゆい、このごろです。 赤ワインはもとより、しらふでも夜に書くものってどうしてああも気持ちが露呈するような文章になるのだろうね。 もともと気持ちに従って書くことをするのだけれど、それでも久しぶりに「盛り上がったね私!」と言いたくなるような日記だった。 それも、私。ってことでこそばゆいまま、残しておいてあとで笑おうと思う。 ルーヴルの…
管理人室の往復書簡
かおりさん 今日は、車で20分くらいの港で「つるし雛」という催し物をやっていてね、それを見に行った。 各家庭の軒先に、小さな人形や鳥とか、玉とか、いろんな手で縫った小物を糸でつるして飾るの。でそれを愛でるという。 きゅうりとか茄子みたいのもあった。ちりめんの布で縫われた小さな人形たちがちんまりとつるされていて、色がいっぱいで目にまぶしかった。 昨日書いてくれた日記。 あれを読んでね、向き合うという…
管理人室の往復書簡
かおりさんへ 今日のいわきは晴れていた。寒かったけれど、気持ちのいい空です。 懐かしい、ってそのなかにいろんな想いがぎゅっと詰まっているよね。 楽しかったり、切なかったり、悲しかったり、暖かくなったり。 あんまり思い出したくない事とかもふくめて、 「いろいろな場所に、少しの思い出があって、そこにすぐに行くことができなくても、たしかに自分はそこにいた。そのほんの少しのことを思い出して、懐かしいと思う…
管理人室の往復書簡
かおりさんへ 東京駅のすぐ近くのカフェではじめて会ってハグをして、アパートの話をしてから、今日。 月日が流れるのは早いね。 アパートメントが始まるにあたり、カフェで話した原点のようなものを忘れずにいたいと思っている。 ひとが、そこにいること。 息づかいを感じられること。 いろんなひとが、ここを訪ねてくれたら嬉しいね。 東京で好きな風景があって。 新宿の友だちのアパートのベランダからは、すぐとなりの…