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3F/長期滞在者&more

単調ロクロマンからの逸脱。

長期滞在者

去年の10月半ばくらいに多くの数のテーブルウェアの注文を受けたのだけど、
やっと先週末に最後のアイテムの成形が終わってホッとしているところです。
西洋ではテーブルウェアのメインはもちろん丸い皿なので今回もたくさん作った。
中型と大型のを合わせると皿だけで80枚の注文があったのだけど、
やきものの皿というのは製作過程で歪んだり割れたりすることが多く、
だいたい注文の倍くらい作らないと、焼成後に数が足りないということにもなりかねないので、
今回は160とはいわなくとも、150枚くらいはロクロ成型した。
なので今しばらくはロクロで皿はひきたくない心持ち。
そしてアイテム数は19種類あったので、総量としてかなりの数になり、
カップとかスープボウルとかも、もうしばらく勘弁してぇぇという心持ち。

そんな機械と粘土と人とが一体化したかのような
「新世紀進撃の単調ロクロマン」な日々が漫々練り練りと続き、
さらに、ベルギーでは1870年に天候観測が始まって以来の
日照時間が少ない冬が新記録を塗り替えながら陰々鬱々と続いている、
そんな最中、日々の生活に光明的な何かを導入すべく、アレヤコレヤと試してみた。
(というか試し続けている。現在進行形。)
その試行錯誤の例を以下に。

1.今までも服用していたビタミンDのサプリに加えて朝鮮人参エキス入りサプリを投入。
 (ビタミンDだけだと効いてるんだかなんだかよく分からないので。)
 →意外と効果あり。エネルギー切れな感じになりにくくなる。
2.朝ヨガの後に必ず30分は静坐して瞑想。
 →これはかなり効果的。なぜか車の運転中に眠くなることがほとんどなくなる。
3.緑が見たくなったら植物園の温室に行き、なるべく葉っぱを触りまくる。
 →これはまぁ、ふつうに楽しい。サワーケインという植物の葉っぱの裏がかなり気持ちいい。
  そして、南国の植物たちと「なんの因果でこんなところに来ちまったんだろう…」
  と、この悪天候を思いっきりディスりたい気持ちを共有できるのが良い。
4.ニセアカシアの豆鞘を使って出汁をとって鍋、またはスープを作り、食す。
 →これはまぁ、ふつうにやめた方がいい。まずい。
5.近所のエルボリストに調合してもらった胃の負担を軽減するハーブティーを常用する。
 →胸焼けが減った気がする。(コーヒーとタバコをやめたのも大きいとは思う。)
6.良いヘッドフォンを買って、高音質でいい音楽を聴く。
 →オーディオテクニカのATH-MSR7というやつを買ったのだけど、
  音楽音痴のぼくには勿体無いくらいの温室、いや、音質で、
  購入以来、中毒になったようにしょっちゅう何かを聞いている。
  まともな音響機器なんて持ってないので、
  普段はiPadでテキトーに鳴らしているだけだったし、
  ウチで使っているヘッドフォンは20年くらい前に買って見た目も音もぐったりと疲れて切ってるやつだし、
  そういうので聞いていた音に比べると、
  例えばビル・エヴァンスのワルツ・フォー・デビー(1962年のライブ版)とか、
  今まで何を聞いていたんだというくらい、ディテールがよく聞こえて、
  まさに聞き惚れる感じで眼福ならぬ耳福。
  耳福を感じている間はひどい天気のこともすっかり忘れていられる。
  そういう意味ではこの買い物が最も効果的だったのかもしれないのだけど、
  問題はiTunesでのポチり数が飛躍的に増えつつあること。どどーん
7.引き籠ってないで、面白げなものを見つけて見に行く。
 →天気が悪いと外出が億劫になるのは人類普遍の習性だろうし、
  これがなかなか実は難しい。
  が、例えば、この間の週末にフランス北東部のメッスにある
  サントル・ポンピドゥー・メッスにダムタイプの展覧会を見に行ったのだけど、
  展覧会と池田亮司のコンサートが素晴らしかった上に、
  そこでいろんな旧友たちに会い、近況報告や昔話で盛り上がり、
  しばし(天候不順を含めた)日常をすっかり離れることができた。
  さらに、同時に開催されている「ジャパノラマ」という戦後から現在までの
  日本の芸術家の作品を集めた展覧会も長谷川祐子さんのキュレーションが素晴らしく、
  かなりインスパイアされた。
  というようなこともあるので、やっぱり面白げなものには顔を出してみるものだな
  と再確認。

こうして列挙して見ると、幾つかやってないこと、
あれやったらいいのに、おれ、ということに気がつく。
フィルム写真を撮ることと、読書と、(映画館で)映画を見ること。
それぞれに全くやってないわけではないにしても、
一時期に比べると、かなり量が減っている。
よし、今月の目標は、少なくともフィルム一本分は写真を撮る時間を作ること。
ここのところ気になっている丸谷才一の本を少なくとも2冊は読むこと。
映画館で少なくとも3本は映画を見ること。
の三つにしてみよう。

ひだま こーし

ひだま こーし

岡山市出身。ブリュッセルに在住カレコレ24年。
ふと気がついたらやきもの屋になってたw

Reviewed by
カマウチヒデキ

文中6番目、「良いヘッドフォンを買って、高音質でいい音楽を聴く。」
というのを、たしかに僕もやってみたい。
僕は音楽といえば新しいものをザクザク開拓して聴きまくるというタイプではなく、はるか昔、20代の頃出会った音楽を延々聴いてる方が多い感じなのですが、どんな音楽もさすがに20〜30年聴いていると、ヘボヘボのヘッドフォンであっても1年に1回くらいは「聴こえてなかった部分にはじめて耳が達する」という経験を更新する。
30年聴いてはじめて耳がほじくり出した音というのは、それを耳が掘り当てるまでにかかった年数を考えると、製作者が多少は「わっかるかなぁ〜?」的なタクラミを込めている場合もあるだろうし(単にうっかり「聴きどころ」の裏に隠れて見えてなかった、という場合もあるだろう)。
面白いのは、一度聴けてなかった音を発見すると、もうそれが聴けてなかった頃のようには聴くことが出来ないということ。どうしても新しいそれが聴こえてしまう。
音に限らず、ものの認識の仕方というのは、そうなのです。聴こえなかった時代に戻れない。
それは良いことなのかどうか、というと、まぁ、悪いことではない、くらいにしか言えないのですが。

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